日本プロ野球は「球団数を増やすしかない」これだけの理由!

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常に満員状態のマツダスタジアム。観客動員率はは95%とすでに飽和状態にある

観客動員が表面上「絶好調」の今こそ、エクスパンション(球団拡張)を。チャンスを逃せば衰退が待っている!

今季のペナントレースが終了した。セパ両リーグ858試合で集めた観客は、2653万6962人、1試合平均3万928人。前年より4.1%の増加。平均観客数は初めて3万人を超えた。
今季のMLBは、一部球団の観客動員が低迷し、2429試合で6849万4752人、1試合平均2万8199人。昨年7000万人を割り込んで話題になったが、今季はさらに落ち込んだ。
1試合平均で言えば、NPBはMLBを上回る、世界一の動員を誇るプロ野球リーグとなっている。

観客動員が実数発表になった2005年は、NPBの観客動員は1992万4613人(846試合)、1試合平均2万3552人だった。ここから14年で観客動員数は33.2%、1試合平均では31.3%も増加した。

この結果だけを見れば、プロ野球は万々歳に思えるかも知れないが、仔細に見ていくと、問題がないわけではない。

一つは、一部のチームで観客動員がこれ以上見込めない「飽和状態」が近づいていること。
今季の広島は昨年より1.0%増の平均3万1319人を記録した。本拠地マツダスタジアムの客席数は3万3000人。動員率は95%になっている。
巨人は2.3%増の平均4万2643人だが、本拠地東京ドームに限れば4万4883人。東京ドームは立ち見も含めて約4万6000人だからこちらは97.5%だ。
今季の観客動員の伸びは、DeNAが本拠地横浜スタジアムの観客席を増設したことが大きい。これまで横浜スタジアムは、12球団でも最小クラスの3万人弱だったが、東京オリンピック対応もあって増設工事を行い、3万2千人まで増えた。今季のDeNAの平均観客数は、12.6%増の3万1716人と急増。これが全体の数字を押し上げた。しかしすでに動員率は98.6%にも達している。
DeNAグループの傘下にある横浜スタジアムはこのオフも観客席の増設をする。しかし、マツダスタジアムや東京ドームは広島や巨人のグループ会社ではないから、勝手に建て増し工事はできない。
球団も企業だから昨年対比での動員数、売上の増加が求められる。しかし広島や巨人は業績を上げるためには「客単価を上げる」しかないという状態だ。

もう一つは、本拠地以外では観客動員が見込めなくなっていること。広島はDeNAと並び、今、最もチケットが取りにくいチームになっているが、5月21日、今季1試合だけ行われたみよし運動公園野球場での公式戦は、1万3836人、動員率は86%だった。
また巨人は、東京ドームの他に京セラドーム大阪で2試合、鹿児島、熊本、岐阜、新潟、前橋で各1試合行っているが、地方5球場での主催試合の平均動員率は74.8%だった。
かつては、地方球場の試合は早くからチケットが売りきれ、立ち見が出るのが当たり前だったが、今は満員にならなくなっている。地方での主催試合は、地元プロモーターに丸投げをするので、球団側は楽なのだが、客数が伸びないので最近は減少している。

ざっくりいえば、日本のプロ野球は本拠地球場でしかお客が呼べなくなっている。
マーケティングは新規顧客開拓ではなくリピーター対策に特化している。2600万人以上の観客動員といえば、日本人の5人に1人以上がプロ野球を見に来ていることになるが、実際は数百万人のお客が何度も球場に足を運んでいるに過ぎない。
地上波放送のプロ野球中継の視聴率が伸びないのは、実数としてのプロ野球ファンが少ないからだ。特に、プロ野球チームがない地方では、ローカル局も地上波で野球中継をしないので野球への関心は急速に薄れている。地方球場でお客が入らないのは、このためだ。

今世紀に入って、プロ野球は放映権ビジネスが衰退する中で、地域密着型のマーケティングで観客動員を増やしてきた。足元に限定したマーケティングは効率的ではある。お得意様相手の商売は見込みが立ちやすい。経験値が高まれば、効果的な手が打てるようになる。しかしこのビジネスモデルもそろそろ限界が近づいている。
しかも小学生以下の「野球離れ」も深刻なのだ。将来のマーケットは非常に心細い。
健全なビジネス感覚があれば、業界全体で新たな展開を考えるべき時期なのだ。

MLBは、1960年には16球団で1991万1489人、1試合あたりの観客動員は1万6109人に過ぎなかった。しかしこの時期から歴代コミッショナーの強い指導力でエクスパンション(球団拡張)を推進し、50年後の2010年には30球団で7307万4932人、1試合あたりの観客動員は3万72人にまで成長させた。動員数は実に3倍、1試合あたりの観客動員も2倍近くになっている。
球団を増やせばマーケットが拡大する。そして対戦カードが増えることで、観客動員も増える。競合も激しくなるからマーケティングも進化する。経済規模が大きくなれば、放映権やライセンス、マーチャンダイジングなどのビジネスにもスケールメリットが生まれる。
北米では、バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケー、MLBの4大スポーツのシェアの奪い合いが続いているが、MLBはエクスパンションでこの競争を生き残ってきたのだ。

日本でも、1993年に1部10クラブでスタートしたJリーグは、エクスパンションを続けて2019年は3部55クラブが全国に展開している。1993年に323万5750人だった観客動員は、2018年には約3倍の976万7611人になっている。それ以上に、プロ野球がないマーケットにしっかり根を下ろしていることも大きい。

NPBの斉藤惇コミッショナーはエクスパンションには消極的なようだ。また、NPBでは球団の新規参入には30億円という「預かり保証金」が必要になる上に、外資の参入を規制するなど、障壁が高い。
さらに、既存球団は新規参入によって「商圏が奪われる」ことを警戒している。実質的には日本のプロ野球の商圏は、「野球離れ」によって全国に大穴が空いているのだが、それでも既存球団はいい顔をしないのだ。

球団が自社の利益だけを考えるのは、営利企業としては当然ではあるが、マーケット全体の成長を12球団が一緒に考えるべき時期に来ている。
プロ野球は1社1球団では成り立たないのだ。業界全体でマーケットを大きくしていかないと、将来はない。

観客動員が表面上「絶好調」に見える今しか、エクスパンションのチャンスはないと思う。
落ち目になって、ステイタスが落ちたら二度とできない。
日本各地にある独立リーグや、社会人のクラブチーム、韓国、台湾のプロ野球との合従連衡も視野に入れて、プロ野球の大きな未来構想を描いてほしい。

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。<br /> <br />

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