もう何が何だか分からない 複雑すぎる「消費税10%」で日本混乱
増税だけど軽減税率でキャッシュレス還元……制度のややこしさでトラブルも
消費増税が実施された10月1日、都内でコンビニを営む男性がこう話した。
「うちの店で食べ物を買って、消費税10%払ったお客さんが何人いると思います? ゼロですよ、ゼロ。食品を持ち帰るなら8%、店内のイートインスペースで食べると外食扱いで10%の消費税がかかりますが、自分から『イートインで食べる』と申告したお客さんは一人もいませんでした。でも、イートインスペースには、店内で買った商品を食べている人が結構いるんです。こちらから『あなた、嘘つきましたね』と言うわけにもいかないので、黙認です。消費税10%を払ってコンビニのイートインスペースを使う人は誰もいないんですから、なんで増税なんかしたんですかね」
増税直前の9月30日には駆け込み需要の買い物客が溢れ、閉店後、店員は看板やメニューの修正など、増税後の対応に追われた。増税実施後も、至るところで混乱が生じている。
政府が消費の落ち込みを抑えようと、中小の小売店でのキャッシュレス決済時にポイントを還元する制度を導入したことで、混乱に拍車がかかった。マネーコンサルタントの頼藤太希氏が解説する。
「厄介なのは、会計に使えるキャッシュレス決済がすべてポイント還元の対象になっているわけではない、ということです。お店によっては10月1日までにポイント還元制度への登録が間に合わなかった決済手段もあり、レジなどに『準備中』などと表示されています。
たとえば、クレジットカードの『JCBカード』はポイント還元の対象になるが、『ラインペイ』は準備中で、まだ対象ではないといった具合です」
今回の消費増税によって、消費税率は実質3%、実質5%、実質6%、8%、10%の5段階となったが、これに加えてスマホ決済事業者が独自に5%ポイント還元などのキャンペーンを行っているから、もう何が何だか分からない。なぜこんな複雑怪奇な制度になったのか。
「政府が複数の目的をポイント還元と軽減税率に詰め込んだからです。一つ目の狙いがキャッシュレス決済の普及。二つ目が中小企業の振興。そして三つ目が消費増税による消費の冷え込み対策です。その結果、内容がぐちゃぐちゃになってしまった。今回の消費増税は、『政治がおかしい時代になった』ことの象徴として受け止めるしかないでしょう」(経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏)
制度があまりに複雑すぎて、全国に200万店舗あるポイント還元の対象店舗のうち、10月1日から参加したのは50万店舗に留まった。しかし、まだ73万店舗が申請中だ。今後は、客足の鈍った大手小売店が「対抗値下げ」に踏み切ることも予想される。ポイント還元制度は来年6月まで。事業者と消費者の混乱はまだまだ続きそうだ。


『FRIDAY』2019年10月18日号より
撮影:結束武郎