大成長!「ライブ・ビューイング」動員数が5年で30倍のワケ

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近年、ライブ・エンタテインメント産業が盛り上がりをみせている。ぴあ総研の統計(19年6月発表)によれば、2018年の市場規模は5,685億円で前年比10.4%増(速報値)。2000年代に入ってから、過去最高を記録したという。

音楽や演劇など、出演者の声や表情を間近で楽しめるのがライブ・エンタテインメントの魅力。その流れの中で、最近、定着しつつあるのが「ライブ・ビューイング」という鑑賞スタイルだ。映画館などの施設を活用して、複数の人びとと一緒に現地でなくともライブ会場さながらの迫力を楽しめる。体験したことがある人たちも少なくないはず。

ライブ・ビューイングには、どのような魅力や課題があるのか。国内外で音楽や演劇、お笑いなどさまざまなジャンルのライブ・ビューイングに取り組んできた、株式会社ライブ・ビューイング・ジャパンを訪ねた。

アーティスト市場開拓の切り札として期待されたライブ・ビューイング

取材に対応してくれたのは株式会社ライブ・ビューイング・ジャパンの代表取締役社長執行役員を務める豊田勝彦氏。同社は、大手芸能事務所・アミューズのグループ会社として2011年6月に発足した。

ライブ・ビューイングそのものに取り組み始めたのは発足前にあたる2010年末。同年12月に宇多田ヒカルが活動休止直前に行った公演「WILD LIFE」(横浜アリーナ)や、同年末に福山雅治が行ったカウントダウンライブ「福山☆冬の大感謝祭 其の十」(パシフィコ横浜)で、映画館でリアルタイムでの同時生中継を試みた。

当時、ライブ・ビューイングに可能性を見出した背景として、豊田氏は「音楽市場の伸び悩みがあった」と話す。

「2000年代半ばごろの『着うた』や『着うたフル』の流行があって以降、弊社の株主であるアミューズ、エイベックス、ソニーミュージックを含め、音楽業界の多くはデジタル配信に注力していました。しかし数年後、音源自体の販売数に限りがみえてきたことから、音源からコンサートへとビジネスの比重が移っていきました。しかしながら、コンサートは公演数にも会場にも制限があるので、もっと多くのお客様にコンサートを楽しんでいただきたいという発想のもと、ライブ・ビューイングへ乗り出しました」(豊田氏)

映画館からアーティストのライブに見入る観客たち

発想の原点にあったのは「ライブ会場とは異なる場所で、ファンのみなさんに体感してもらう」という思い。さらに経緯をたどると、開始当時は映画館にデジタルの映写機や通信インフラが整備され始めた時期で、技術的な裏付けとのタイミングが重なったことから、数百人が同時に体験を共有できて公演自体も違った角度で楽しめる鑑賞スタイルを実現できたという。

また、もう一つの理由として「日本のコンテンツホルダーを海外へ売り出すねらい」もあった、と豊田氏は話す。

「当時、さらに注力していたのは、国内アーティストの海外戦略でした。ただ、日本国内で順調にビジネスとして成立していると、あえて海外での公演を実施すること自体にメリットが生まれづらい現状もあります。また、日本の音楽はバンドサウンドの比重が高く、海外公演で数曲を披露するだけでも、周辺のスタッフなどを含めると人員や機材が大がかりになる傾向もあるんです。そうした状況を打破するべく、国内のアーティストを海外の方々にも味わっていただける機会にと、ライブ・ビューイングに望みを託した経緯もあります」(豊田氏)

大きな枠組みとしては“ライブ会場さながらの迫力を、多くの人たちが同時に共有できる場所”になっている一方で、国境を超えてアーティストたちが飛躍するきっかけとしても活用されている。

アーティストを始めとするコンテンツホルダーが市場をけん引

ライブ・ビューイング・ジャパンが発足した当時の2011年頃は「アーティストの公演(コンサート)に比重が置かれていました」と話す豊田氏。以降、興行主側からもライブ・ビューイングの特徴が認知されるにつれて、宝塚歌劇団をはじめとする演劇や近年はお笑い芸人によるライブも配信するなど、取り扱うジャンルも拡充してきたという。

「ライブ・ビューイング・ジャパン実施案件を元にした“のべ動員数”と“配給実施件数”の推移」(2017年3月 発表)

ライブ・ビューイングに取り組み始めた当時、周囲からは「やっぱり本物のライブが一番」「映画館で見るのとテレビで見るのでは何が違うのか」といったネガティブな意見も聞こえてきた。

また、アーティスト側からも「映像や音がどれほど満足いくまで再現できるか」という懸念も聞かれたと話す豊田氏。さまざまな実績が重なるにつれて、ライブ自体の興行主からも支持を獲得していったようだ。

「ライブ・ビューイングに早くから可能性を見出してくれたアーティストは、映画館に来たお客さんだけが本番前に円陣を組むグループの姿や、終演後のアフタートークなどにも積極的にご協力いただき、本会場とは異なる楽しみ方を提案できるようになったのもちょうどその時期だった記憶があります」(豊田氏)

ライブ・ビューイング・ジャパンによる統計をみると、発足当初の2011年では作品を提供する“配給実施件数”が20件だったのに対して、2016年には166件と約5年半で8倍以上に増加。公演を鑑賞した人数の合計である“のべ動員数”も15万9000名から502万6000人と30倍以上になっており、ライブ・エンタテインメントの楽しみ方として、ここ数年で急速に拡大しているのが分かる。

実際の会場にある臨場感や一体感をどう生むかが課題に

実際の会場とは異なる場所でライブの興奮を届けるなかでは「映画館へお越しいただいたみなさまに、付加価値をいかに与えるかも自分たちの使命」と話す豊田氏。生中継では、さまざまな工夫をしてきた。

ライブ・ビューイングの客席も本会場さながらに白熱

公演によっては、ライブ・ビューイング向けに専用のカメラを現地に配置する場合もあります。実際の会場にあるスクリーンや映像化された作品とは異なる一面を切り取るのも一つの工夫で、リアルタイムに映画館のお客さんへ視線をいただいたり、現地から『ライブ・ビューイングのみなさん』とお声がけいただくのもそうですね。他には、ステージの舞台袖やバックヤード、終演後の風景を映すなど、アーティストなど興行主側にも提案させていただきながら可能な範囲で取り組んでいます」(豊田氏)

さらに、実際の会場と同じような臨場感を味わってもらえるよう、映画館とは異なる空間でもライブ・ビューイングを実施しているという。

「ライブハウスでのライブ・ビューイングは映画館より大音量を流せるメリットもあり、例えば、実際の会場で客席へ銀テープを飛ばすタイミングに併せて、実際にライブ・ビューイングでも同様の状況を作り出すなどの工夫も試みています。また、臨場感と共に中継先の会場とどう一体感を生み出すかも鍵で、直近でいえば、プログラムによるライブ演出にあわせて腕時計型のペンライトを映画館でも同時発色する取り組みも実践しましたが、現状はトライ&エラーを繰り返しているところです」(豊田氏)

ライブハウスで行われたライブ・ビューイングの様子

ライブ・ビューイングを提供する側としては「実際のライブ空間に勝るモノを届けるのでなく、あくまでもステージの臨場感を伝えるのが役割」だと話す豊田氏。今後は「映画館以外の場所にも可能性を見出していきたい」と展望を明かす。

「ライブ・ビューイングは主な会場が映画館となりますが、やはり上映できる館数にはいずれ限りがみえてきます。現状、スマートフォンやタブレットを活用した生配信サービスや、カラオケボックスで中継を楽しめるよう取り組んでいますが、みなさんにお届けできる場所をいかに発掘するかは課題として残されています。当初からの『ライブイズム』という精神は忘れず、エンターテインメントビジネスに貢献できるよう選択肢を拡げられればと思います」(豊田氏)

観客としては、チケットが取れなかったり、遠方で実際の会場に足を運べないときにも役立つライブ・ビューイング。一人で映像を見るのではなく、誰かと時間や空間を共有しながら間接的にライブそのものの興奮を味わえるのもメリットだ。将来的にどのような進化を遂げていくのか、その動向に注目していきたい。

  • カネコシュウヘイ

    (編集者/ライター)1983年11月8日生まれ。埼玉県在住。成城大学出身。2008年から出版業界に従事、2010年に独立しフリーランスとなる。以降、Webや雑誌でエンターテインメント系のジャンルを中心に取材や執筆へ注力。月平均4〜5回はライブへ足を運ぶアイドル好き。著書に『BABYMETAL追っかけ日記』(鉄人社)

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