ラグビーW杯 大一番で日本代表がおそれる元石工のイケメン指令塔

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ボールを持っておどけてみせるラッセル(写真:アフロ)

いよいよ日本ラグビーの歴史を変える大一番が行われる。

ラグビーワールドカップ(W杯)は13日にベスト8が出そろう。プールAの決勝トーナメント進出をかけて、日本代表(世界ランキング8位)は、横浜国際総合競技場でスコットランド(同9位)と激突する。日本代表は勝ち点2以上を得れば、文句なしでプールAの首位通過となり、史上初めてベスト8に進出する。

日本代表にとってスコットランドは大きな壁となってきた。1976年に初めて対戦し12回対戦し1度しか勝利していない(両国がキャップ認定している試合では0勝7敗)。2013年にアウェイで敗れて、2016年もホームで2試合とも敗れた。またW杯では1991年、2003年、そして前回2015年大会といずれも敗北。特に2015年はスコットランド戦での敗戦が響き、決勝トーナメントに進めなかった。

相手選手で脅威となるのは、日本代表選手も「9番、10番、15番がキープレイヤー」と徹底マークするSHグレイグ・レイドロー、SOフィン・ラッセル、FBスチュアート・ホッグの世界的BKの3人だ。

なかでもSOのラッセルは、ゲームコントロールに長けた27歳の司令塔。2015年大会でもトライを挙げるなど大活躍した選手だ。イケメンとしても知られ、かつてはミス・スコットランドと交際するなど華やかなイメージを持たれがちだが、実はかなりの苦労人だ。

幼少期は貧しく、中学卒業後、石工として働きながらラグビーを続けた。「その時の経験を思い出すと、あの時の苦しさに比べればどんなに辛いトレーニングでも耐えられないものではない」と語っている。

19歳の時に、現スコットランド代表ヘッドコーチで、当時グラスゴー・ウォーリアーズを指揮していたグレガー・タウンゼントに見初められ、プロの道へと踏み出し、ラグビー人生が花開く。2013年には奨学金をもらい、2ヶ月ニュージーランドのクライストチャーチにラグビー留学もした。

帰国後、めきめきと頭角を現し、2014―15シーズンの優勝に貢献。2014年にスコットランド代表に初めて召集され、秋のテストマッチ3戦(アルゼンチン、ニュージーランド、トンガ)すべてに先発出場した。その勢いのまま2015年の6カ国対抗、そしてW杯に出場。2017年にはブリティッシュ&アイリッシュライオンズのメンバーとしてニュージーランドにも遠征した。

2018年、元オールブラックスのSOダン・カーターが日本の神戸製鋼に移籍したことを受け、フランスのトップ14・ラシン92に入団し、18試合に出場して156得点を挙げ見事に中心選手として躍動した。

以前はきっちりとセットしたお洒落な髪型だったが、最近は坊主頭にしている。チームメイトのFBホッグが長崎でのキャンプ中にラッセルと間違えてサインを頼まれてショックを受けて、ホッグは真剣に髪型を変えようか悩み始めているそうだ。

9月21日のアイルランド戦で突破をはかるFBホッグ(写真:アフロ)

そのFBホッグは、「世界最高峰のFB」の一人として数えられ、2016年、2017年のシックス・ネーションズではMVPに選出されるほどの選手である。カウンターアタックが大きな武器だが、SO、CTBとしてもプレーできる万能なスキルに長けた選手だ。

セブンズ発祥の地としても有名なメルローズの出身で、兄もグラハムもスコットランド7人制代表として活躍、自身も7人制代表でも選ばれたことがあるように、そのスピードと決定力に秀でる。

2011年にグラスゴーでプロデビューを果たすと、2011-12シーズンからチームの中心として活躍。国際舞台でも2012年のシックス・ネーションズにおいて19歳で代表デビューを果たし、それ以降、代表に定着した。攻撃的なラグビーの中心的選手として、2015年W杯でベスト8、そして世界ランキング5位へと上昇させる立役者のひとりとなった。

実はホッグの高祖母の名字は「ベスト」で、サッカーの北アイルランド代表であり、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドで活躍したサッカーの名選手であるジョー ジ・ベストの遠縁にあたるという。

今大会でもホッグはサモア戦で50m級のドロップゴールを見せたが、そのキックはもしかしたらDNAのなせる技のかもしれない。日本代表も、スペースがある中でホッグのランを止めるのは至難の業であり、マークを外せない選手のひとりである。

スコットランドの攻守の中枢となるレイドロー(右)とラッセル(左)(写真:アフロ)

そして、現在はフランスのTOP14・クレルモンでプレーするSHレイドローは、前回大会の日本代表戦でも4ペナルティゴールと4ゴール、計8本20得点を右足で決めて、45-10で日本を退けたことで、日本のラグビーファンにもすっかりおなじみとなった。来日してあまりの人気ぶりに驚いたFBホッグが「Mr.グレイグ(グレイグ氏)」と呼ぶようになったほどだ。

レイドローはエディンバラのラグビー一家に育った。伯父であるロイはスコットランド代表でキャプテンを務め、ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ遠征にも4回選ばれた伝説的なSH。その息子で、グレイグにとってはいとこにあたるクラークは現ニュージーランド男子7人制のヘッドコーチだ。今大会ではキャプテンをHOスチュアート・マクイナリーに譲ったがその存在感は変わらない。

タウンゼントヘッドコーチ(HC)が試合日程の間隔の短さについて嘆く言葉が頻繁に聞かれるが、レイドローは「そりゃあ日本代表の日程の方がもちろん嬉しいけど、この日程はずっと前からわかっていたこと。だから選手もスタッフも一丸となって時間をかけて準備してきたわけだし、このメンバーはタレント揃いだから自信を持ってやればいい」とさらりと言ってのけた。

タウンゼントHCはこの3人を9日のロシア戦ではメンバー入りもさせず温存。もし3人に好きなようにプレーさせてしまうと日本の苦戦は必至である。日本代表としては勝利の大きな鍵のひとつは、この3人に自由にさせないことだ。

  • 取材・文斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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