ラグビーW杯 日本の勝機はスコットランドが苦手な「序盤20分」 | FRIDAYデジタル

ラグビーW杯 日本の勝機はスコットランドが苦手な「序盤20分」

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スコットランドのSHグレイグ・レイドロー。15年W杯の対戦時に日本から一人で20得点を挙げた「因縁」の相手/写真 アフロ
スコットランドのSHグレイグ・レイドロー。15年W杯の対戦時に日本から一人で20得点を挙げた「因縁」の相手/写真 アフロ

スコットランドが日本の「因縁の相手」である理由

「次は僕らの決勝戦になる」

ジャパンの司令塔・田村優は、サモア戦後のインタビューで10月13日のスコットランド戦をそう表現した。この試合の結果次第で、日本代表が史上初めて決勝トーナメントに進出できるかどうかが決まる。まさに日本ラグビーの命運をかけた一戦である。

そもそもスコットランドはジャパンにとって因縁の相手だ。過去のワールドカップにおける対戦成績は3戦全敗。とりわけ前回の2015年大会では、初戦で南アフリカから金星を挙げたもののスコットランドとの2戦目に10-45と完敗し、3勝しながら勝ち点の差で決勝トーナメント進出を阻まれた苦い記憶がある。

しかもこの時は南アフリカ戦から中3日での対戦で、消耗から後半に失速しての敗戦だった。さらに翌2016年に日本で行われたテストマッチシリーズでも、13-26、16-21で連敗。2015年大会の雪辱を期して臨んだ選手たちは、またしても悔しさを味わった。

今大会に向け取材を続ける中で、多くの選手や関係者の口から「スコットランドには絶対に勝ちたい」という言葉を聞いた。FLリーチマイケル主将はサモア戦直後のインタビューで「個人的にスコットランドをボコりたい」と珍しく感情むき出しのコメントを残している。おそらくそれは、全選手に共通する思いだろう。

ハイボールの処理が勝敗を分けるカギ

では、「因縁」スコットランドはどんなプランで日本戦に臨んでくるのか。

現時点の勝ち点は日本14に対しスコットランドは10。勝ち点で並んだ場合は直接対決で勝利したチームが上位になるため、スコットランドが決勝トーナメントに進出するためには、日本にボーナスポイント(BP)を与えずに勝利するか、自分たちがBPを取った上で日本のBPを1以下に抑えて勝利するしかない。

BPは4トライ取ると1点、また7点差以内の負けで1点。このことをふまえれば、まずは最低条件の勝利を最優先し、日本のトライをできる限り抑える展開に持ち込みたいと考えているはずだ。

スコットランドが伝統的に得意とするスタイルは、巧みなキック戦術で陣地を進め、安定感あるラインアウトとスクラム、堅固な守備でプレッシャーをかけてコツコツとポイントを刻むラグビーだ。

近年はSOフィン・ラッセルやFBスチュアート・ホッグら特別な才能を持つBKの台頭でボールを大きく動かすアタックにシフトしてきたが、今の日本代表の防御の仕上がりを考慮すれば、スコアが開くまで展開勝負は控え、キックとFW、ディフェンス力を前面に押し出してくる可能性が高い。

とりわけ日本がロシア戦でエラーを連発したハイボールを多用してくることが予想されるだけに、相手が蹴り上げた球をきっちり処理できるかが、試合の流れを決める重要なポイントになるだろう。

これまでの3試合で日本代表が奪われた4つのトライのうち、実に3本が相手のキックを処理しきれずゴールラインを割られたものだ。逆に組織ディフェンスを崩されて失ったトライは、サモア戦の1本だけ。大会屈指の強力FWを擁するアイルランドに対しても、地上戦では互角以上に渡り合えた。

スコットランドのSHグレイグ・レイドローは世界有数のプレースキッカーであり、自陣での反則は即座に3点を失うことを意味する。また敵陣でペナルティをすれば、得点機を逸するばかりか長いタッチキックで陣地を後退させられ、スコットランドに強みのラインアウトから攻撃するチャンスを与えることになる。

決死の覚悟で向かってくる相手の強烈な圧力の中で、いかに反則せずに戦い続けられるかが、日本が勝利するための最大の鍵だ

注意すべきフィン・ラッセル(左)、グレイグ・レイドロー(中央)、スチュアート・ホッグ(右)/写真 アフロ
注意すべきフィン・ラッセル(左)、グレイグ・レイドロー(中央)、スチュアート・ホッグ(右)/写真 アフロ

チャンスは序盤20分にあり

ジャパンはスコアや内容に関係なく勝てば文句なしでプールマッチ首位通過が決まるのだから、BPは意識せずとにかく勝利することだけに集中ればいい。むろんスコットランドに勝つのは簡単ではないが、今のジャパンには、十分に勝ちきれるだけの力がある。

スコットランドの過去の傾向を分析すると、序盤の20分のパフォーマンスが低調で、劣勢を強いられているケースが多い。

今大会でも初戦のアイルランド戦は開始24分までに3トライを奪われ、3-27で完敗。記者会見でグレガー・タウンゼンド監督に対し、母国メディアから「ここ数年ずっと課題だった立ち上がりの悪さがいまだ改善されないのはなぜか」と厳しい質問が飛んだ。

日本が序盤にスコアを重ねて先行する展開になると、スコットランドは無理をしてでも攻めなければならない状況になる。強引な攻めは守備側にとって的を絞りやすく、そこをきっちり止めれば、相手の焦りはさらに増幅するだろう。

7万人のサポーターで埋まる観客席から地響きのようなニッポンコールが降り注ぐ中、リードして終盤を迎えられれば、ロシア戦の疲れが残るスコットランドはいよいよ足が動かなくなるはずだ。

スコットランドは死ぬ気で向かってくる

さらに、今回の対戦でひとつの焦点となるのが『試合間隔』だ。日本が中7日での戦いになるのに対し、スコットランドは中3日。前回大会と逆の立場になり、消耗した身体のリカバリーと次の試合に向けた準備という点で、日本には小さくないアドバンテージがある。

スコットランドも、これをふまえ、9日のロシア戦で主力を温存するという策をとった。結果は61-0の圧勝。“スコットランド強し”のイメージを強烈に印象づけ、あらためて甘くない戦いになることを想像させた。

日本戦では、ロシア戦を欠場したLOジョニー・グレイやレイドロー、ラッセル、ホッグらワールドクラスの選手が、万全の状態で復帰してくる。ジャパンの分析も徹底的に進めているだろう。勝ち点で4ポイント先行し、ホームの大声援を受ける日本に対し、スコットランドはそれこそ死ぬ気で挑んでくるはずだ。

だが、いまのジャパンは強い。15 年W杯の雪辱を晴らし、ノーサイドの笛とともに、桜の戦士たちが歓喜の拳を突き上げる。そんな光景が見られることを期待しよう。

  • 直江光信

    1975年熊本市生まれ。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)

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