ポストシーズン絶好調の田中将大とディビジョン敗退前田健太の役割 | FRIDAYデジタル

ポストシーズン絶好調の田中将大とディビジョン敗退前田健太の役割

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自身初のワールドチャンピオンに向け、重要な役割を果たしている田中(アフロ)
自身初のワールドチャンピオンに向け、重要な役割を果たしている田中(アフロ)

 日本ではクライマックスシリーズの熱戦が続いていますが、こちらアメリカでもポストシーズンが始まり、いよいよリーグチャンピオンシップに突入しました。

 ディビジョン(地区)シリーズでは、二人の日本人投手の活躍が目立ちました。ヤンキースの田中将大投手、ドジャースの前田健太投手です。

 田中投手はミネソタ(ツインズ)との第2戦に先発し、5回83球を投げ被安打3、2四死球で自責点1、7奪三振を記録し勝利投手になっています。さらにア・リーグ優勝決定シリーズの第1戦に先発し、6回68球を投げ、被安打1で失点0という好投を見せました。プレーオフ通算勝利数も5に伸ばしましたね。彼の大舞台での強さは実に際立っています。

 もともと、勝負できる球種が多いので、プレーオフでは初回からフルスロットルで出し惜しみせずに多彩な球を見せることができる。逆に言えば「今日はこの球が思ったところに放れないな」と思えば、走っている球、効果的な球を多く投げるという、取捨選択ができるのが彼の強みです。

 また、ヤンキースは今季もブルペンが充実しています。クローザーのアロルディス・チャップマン投手につなぐべく、アダム・オッタビノ投手、ザック・ブリトン投手らが、素晴らしい仕事を遂行し続けています。彼らの調子もいいので、田中投手も「まずは一巡、抑えよう」と精神的に余裕を持ってマウンドに上がれる。チーム状態はとても良好です。打線が噛み合えば優勝候補の筆頭かもしれません。

 前田投手が所属するドジャースは残念ながらディビジョンシリーズ敗退となりましたが、前田投手は大車輪の活躍でブルペンに欠かせない存在でしたね。

 今季は主に先発として登板して10勝を挙げましたが、シーズン終盤にプレーオフをにらんでブルペンへ。本人としては複雑な思いがあるかもしれませんが、リリーフピッチャーとしての適性に優れている投手ですので、これはチームもファンも望んでいた配置転換かもしれません。

 98-99マイル(約157-159km)の直球を投げるパワーピッチャーが多い昨今のメジャーでは、前田投手は軟投に分類されます。しかし、彼はその状況を自分でしっかり把握した上で武器にしている印象です。先発のマウンドでは2巡目-3巡目を考えて配球していましたが、プレーオフでのピッチングを見ていると、スライダーを中心に据えた組み立てで、カットボール、カーブなど変化球の連投でタイミングを巧みに外しているケースがありました。バッターは基本的に直球を待つものですから、あれはかなり効果的ですし、その上で時折、まっすぐを織り交ぜると93-95マイル(約150-152km)前後でも打席での体感はかなり速く感じるでしょう。同時に、前田投手の前後に登板する投手にとっても打線の目先を変えさせる役割も果たしているので、チームとしてもプラスでした。

 そして何よりも、彼はスライダーもカットボールもチェンジアップも、すべての球でしっかり腕を振って投げています。これは基本的なことですが、投手にとっては非常に大切なことで、しっかり腕を振ることで打者はボールを絞れないのです。特に彼のような質の高い変化球を持っていると、その日の初打席で彼のボールを捉えるのは困難です。既に先発としては一流のメジャーのピッチャーですが、僕は個人的には本格的にブルペンに転向したら超一流に進化するのではと考えています。もちろん本人の意向やチーム状態にもよるでしょうが、今後、彼がどんな成績を積み上げて行くのかも楽しみですね。

 田中投手と前田投手、ワールドシリーズでは史上初となる日本人投手同士投げ合いは来季以降にお預けになりました。リーグチャンピオンシップは、ア・リーグはヒューストン・アストロズとニューヨーク・ヤンキース、ナ・リーグはワシントン・ナショナルズとセントルイス・カージナルスという対戦です。

 まずリーグチャンピオンシップは、前述のように戦力が充実しているヤンキースに、2年ぶりの戴冠を狙うヒューストンがどういう戦い方をするか。ワイルドカードから勝ち進んだワシントンがセントルイス相手に下克上を果たすか、とても楽しみです。

 ただ、アメリカのファンの多くはヤンキースの試合に注目しているはずです。やはり球界の盟主である彼らが何年かに一度、ワールドチャンピオンにならないと野球界全体は盛り上がらない。

「やっぱりヤンキースは強いな。来年こそうちが」と多くのチームやファンに刺激を与えて欲しいと個人的に僕は考えています。そしてそのためには引き続き、田中投手の好パフォーマンスは欠かせません。みんなで応援しましょう。

  • 長谷川滋利

    1968年8月1日兵庫県加古川市生まれ。東洋大姫路高校で春夏甲子園に出場。立命館大学を経て1991年ドラフト1位でオリックス・ブルーウェーブに入団。初年度から12勝を挙げ、新人賞を獲得した。1997年、金銭トレードでアナハイム・エンゼルス(現在のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)に移籍。2002年シアトル・マリナーズに移り、2006年現役引退

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