日本郵政副社長・鈴木康雄氏はなぜこんなにエラソーなのか
お年寄りをダマしてインチキな契約を押し付けながら、取材したNHKを「暴力団」呼ばわり
「取材を受けてくれるなら動画を消すなんて、そんなことを言っているヤツの話を聞けるか、と。それじゃ暴力団と一緒でしょ。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならもうやめてやる、オレの言うことを聞けって。バカじゃないの」
かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHKについて、日本郵政副社長で元総務省事務次官の鈴木康雄氏(69)がこう発言し、波紋を広げている。
本誌は真意を聞こうと10月7日早朝に自宅を訪れたが、鈴木氏は無言で運転手付きの黒塗りの車に乗り込んだ――。
鈴木氏は’73年に郵政省(現総務省)に入省。’09年7月に事務次官に上り詰めたが、その後、民主党への政権交代があり、わずか半年でクビを切られた。
「鈴木氏は学園紛争で東京大学の入試が中止になった年に大学進学を迎え、東北大学法学部に進学しました。’01年に郵政省が自治省と合併したため、周りには東大法学部卒のエリートがゴロゴロいる状態に。学歴コンプレックスをバネに郵政や通信分野で頭角を現し、『郵政のエリート』として一目を置かれる存在になりました。当時から尊大な物言いとマスコミ嫌いは有名で、次官室のドアに『取材お断り』と書かれた紙を貼ったこともあるそうです」(全国紙社会部記者)
’13年には日本郵政の副社長に就任。日本郵政グループ関係者は「鈴木氏は日本郵政のドンとして君臨している」と言う。
「人事の実権を完全に掌握していて、彼に物申せる雰囲気ではない。そのため、自分に逆らえる人などいないと慢心してしまったのでしょう。NHKを所管する総務省の元事務次官として、昨年4月にかんぽ生命の不正販売を報じたNHKに文句をつけ、同年8月に予定されていた続編の放送を延期させました。しかし、実態はNHKが放送したとおり、かんぽ生命はお年寄りをダマしてインチキな保険契約を押し付けていたわけで、鈴木氏の抗議はまったく不当です」
元NHK記者でジャーナリストの竹中明洋氏が問題点を指摘する。
「『総務省の影』をちらつかせながらNHKに圧力をかけたり、『NHKはまるで暴力団』と発言したりしたことは、あまりに不用意でした。一方のNHKも抗議を受けて続編の放送を延期するなど、容易に圧力に屈してしまったのは問題です」
報道機関が権力におもねって手心を加えるから、権力者たちがエラソーに振る舞うのである。
『FRIDAY』2019年10月25日号より
- 撮影:結束武郎
- 2枚目写真:毎日新聞社/アフロ