ゆるくて熱い! 人気クイズ番組『クイズ!脳ベルSHOW』 | FRIDAYデジタル

ゆるくて熱い! 人気クイズ番組『クイズ!脳ベルSHOW』

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昨今のクイズ番組は、どれも知識や学歴に縛られている印象もある。もちろんそれが悪いことではなくて、見ていると楽しいしついつい答えたくなってしまう。ただ、その一方で芸能人たちが爪あとを残そうとしのぎを削る姿に、視聴者側としては少しくたびれてしまうときもある。

しかし、そんな風潮のある現代のクイズ番組界で、ひときわ異彩を放つカウンター的な存在の番組がある。ネット上でも“とにかくゆるい”と支持を集める、BSフジ・フジテレビで放送中の「クイズ!脳ベルSHOW」だ。

BSフジ・フジテレビで放送中の「クイズ!脳ベルSHOW」 プレートには出演者名と共に( )内に、丁寧に年齢が明記されている
BSフジ・フジテレビで放送中の「クイズ!脳ベルSHOW」 プレートには出演者名と共に( )内に、丁寧に年齢が明記されている

出演者として目立つのは、昭和のテレビ界を彩ったスターたち。地上波ではなかなかお目にかかれないような大御所タレントたちが“脳活性化”をテーマに、たがいのひらめきを競い合う帯番組だ。出題される内容も「なぞなぞ」「マッチ棒クイズ」「ちらばったコインの金額を当てる」など、どこか牧歌的な匂いがただようものばかりなのだ。

さらに、月曜〜火曜の上位2人、水曜〜木曜の上位2人が最終的には金曜日に行われる週間チャンピオン大会へ進むのだが、最後の最後に雌雄を決するのがまさかのすごろく。せっかくの得点を積み重ねた回答者が大逆転されてしまうなど、ハチャメチャな展開が待ち受けていたりもする。

BSフジで放送開始した2015年10月からは毎週水曜の放送であったが、2017年4月からは月〜金の帯番組へと拡大。昨年4月からは、地上波であるフジテレビで早朝4時からの放送も始まった。高齢者向けの内容かと思いきや、若い世代からもじわじわと注目を集めているという。一体その魅力はどこにあるのか。現場を知る制作陣に直撃し、番組づくりの裏側から探ってみた。

「頭がいい人が必ずしも勝つわけではない番組」を作ろう

「アメトーーク!」(テレビ朝日)でもお笑い芸人たちがこぞって話題に上げるなど、業界内でも支持を集める同番組。「主なターゲットは40代以上で、コア層は60代〜70代に設定しています」と解説してくれた小沢英治プロデューサー(51)は、番組のコンセプトを説明する。

「放送当初から土台に敷いていたのは“脳トレ”です。他のクイズ番組のように知識を競うような問題はめったに出さず、高齢者層をターゲットに据える中では、認知症予防の問題からヒントを得る機会も多いです」(小沢氏)

高齢者層をターゲットにしていた一方で、若い世代からも支持を集めている現状に「思わぬ誤算でしたが、素直にありがたい」と述べたのは演出・丸林徳昭(46)氏。制作開始当初から「視聴者が出演者の優位に立てる番組」を意識していたと明かす。

「現場ではシンキングタイムを長めに取り、実際のオンエアでもほぼそのまま放送することが少なくないですね。問題文を読み上げる時間も通常のクイズ番組と比較して長くしているのですが、視聴者の方々がノーヒントで答えられるような“間”を設けられるよう工夫しています」(丸林氏)

地上波でパネラーとして出演する機会が少ない大御所タレントたちが一同に会する
地上波でパネラーとして出演する機会が少ない大御所タレントたちが一同に会する

実際の現場では「20代〜30代のスタッフが多い」と話す丸林氏。しかし、番組を見てみると、記憶力を競う「クイズ!言われてみれば」のコーナーで出題される内容は1950~90年代のものと幅広い。昭和~平成初期の歴史をたどりながら、問題を作る上では苦労はないのか。クイズの監修を手がける道蔦岳史(57)氏は「回答者の誰か一人は答えられるよう、問題づくりには取り組んでいます」と語る。

「僕自身については50代後半なので、問題の内容に対する肌感覚は残っていますね。」(道蔦氏)

「とはいえ、若いスタッフが多いので、彼らはよく自分たちの親世代からもネタのヒントを得ています。また、実際の問題づくりではクイズの鉄則である『誰もできない問題は作らない』を徹底しつつ、出演者ごとの年代に沿った問題を含めるようにしていて、進行上での話題にもつながるよう心がけています」(丸林氏)

さらに、番組の大きなみどころとなるのは、金曜日の週間チャンピオン大会で行われる「クイズ!すごろく大逆転」だ。

問題に答えた回答者はサイコロを振ってマス目を進みゴールを目指すのだが、道中のマス目には相手から得点を奪い取る「横どり」や足止めをくらう「◯回休み」のほか、一番先に進んでいる回答者と位置を取り替えられる「場所チェンジ」が設けられているなど、必ずしも正解数が多ければ勝てるわけではないというのも、同番組ならではの醍醐味になっている。

金曜日に行われる「クイズ!すごろく大逆転」は番組の名物コーナー
金曜日に行われる「クイズ!すごろく大逆転」は番組の名物コーナー

演出を手がける丸林氏は「コーナー企画段階から綿密なシミュレーションを重ねながら、すごろくを完成させた」と話し、裏側にあった思いを明かす。

「当初より番組を制作するにあたって『頭がいい人が必ずしも勝つわけではない番組』にしようという意識もあったんです。そこで、逆転するにはどうするかと考えて作ったのがすごろくだったのですが、問題が解けなくてもギリギリで見返りをもらい優勝できるようにしたり、反対に、何度かに一度はゴールまで行き着いても得点によって勝てない人がいたりと、そのあたりのせめぎ合いをみせられるように工夫しています」(丸林氏)

正解を重ねても、必ずしも勝てるわけではないクイズ番組。このバランスもまさに同番組ならではの魅力であるといえる。

誤算が生んだ岡田圭右さんと川野良子アナの上手さ

大御所タレントたちが、和気あいあいと盛り上がる同番組。視聴者もどこかほのぼのと見られる空気感に欠かせないのが、MCを務めるますだおかだ・岡田圭右さん(50)の立ち回りと、アシスタントを務めるフジテレビ・川野良子アナウンサー(49)の存在だ。

番組の進行を務めるますだおかだ・岡田圭右さんとフジテレビ・川野良子アナウンサー(「BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦」記者会見にて)
番組の進行を務めるますだおかだ・岡田圭右さんとフジテレビ・川野良子アナウンサー(「BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦」記者会見にて)

プロデューサー・小沢氏は「岡田さんならではの空気感が生まれたのは、スタート当初からするといい誤算だった」と話す。

「元々、岡田さんを起用した背景には『クイズ!脳ベルSHOW』以前に放送したBSフジの単発番組『フロンティアドクター〜医療の未来を切り拓く医人列伝〜』(2015年3月)がありました。それも高齢者層に向けた番組だったのですが、お任せてしてみたらスタジオでの仕切りが抜群に上手かったんですよ。」(丸林氏)

「今の番組でも仕切る力への信頼感はもちろんなのですが、岡田さん自身がテレビっ子だったのもあり昔のこともよく覚えていて、現場で初めてお会いするような大御所のタレントさんたちのこともよく知っています。そういった方々を相手に堂々と嫌味なく場を回せるというのは大きな才能だと思います」(小沢氏)

番組の進行中、手に持った笛で出演者たちをいなす場面も定番となっている(「BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦」記者会見にて)
番組の進行中、手に持った笛で出演者たちをいなす場面も定番となっている(「BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦」記者会見にて)

岡田さんの振る舞いについて「スタッフへの気配りも細やかで、カメラが回っていない場面でもさりげない一言で緊張をほぐして出演者の方を安心させたりもする」と明かしたのは演出の丸林氏。さらに、そのサポートを務める川野アナについても印象を話す。

「岡田さん以上に誤算だったかもしれません。元々、川野さんはラジオ出身なので、落ち着いて的確に問題を伝えられる方としてお願いしたんですよ。ところが、放送開始から2ヵ月ほど経過してから、歌をテーマにしたクイズでやたらと口ずさんでいたりと、意外なキャラがみえてきたんですよね。

番組の面白さにつながっていったのはまったくの偶然だったのですが、おそらくふたりともクラスの中心人物ではないけど、何かあると『イエーイ!』と盛り上がれるキャラなんですよ。引くべきときは引きつつも、前に出るときは前に出る“明るい調子ノリ”のようなふたりが揃ったからこそ、スタジオの明るい空気ができているのだと思います」(丸林氏)

ラジオでのアナウンス経験を豊富に持つフジテレビ・川野良子アナウンサー(「BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦」記者会見にて)
ラジオでのアナウンス経験を豊富に持つフジテレビ・川野良子アナウンサー(「BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦」記者会見にて)

また、気になるのは同番組ならではのキャスティングの妙。40歳以上でなければ出演できないというルールのため、「40代になったら出てみたい」という声がタレントから上がっていると、小沢氏は話す。

「ベテランのタレントさんたちの間でも、横の繋がりから『もう、出演した?』というお話が出ているようでうれしい限りです。なかには、番組を通して数十年ぶりに共演する方々もいて、みなさん同窓会のように楽しんでいらっしゃるようですね。新聞に掲載されているBSフジの代表番号を通して直々に『出演させて欲しい』と“逆オファー”をしてきてくださった方もいたりと、輪が広がっているのはありがたいです」(小沢氏)

出演者も視聴者もみんな一丸となって、どこかほのぼのとした気持ちで楽しめる。それこそが「クイズ!脳ベルSHOW」の最大の魅力かもしれない。小沢氏は「家族そろってワイワイ楽しめるような長寿番組になれば」と願いを込めたが、祖父母や親の世代は昔を懐かしみつつ、孫の世代は頭の体操にただただ挑戦するといった、老若男女の誰もが楽しむきっかけを与えてくれる番組でもある。

とりあえずテレビを付けたら“何となく楽しい”という昭和っぽさを感じられるのも同番組ならではの味だが、今後も独特な空気感をかもし出しながら、末長く続く番組として存在感を発揮してほしいところだ。

◎クイズ!脳ベルSHOW
BSフジ:毎週月曜〜金曜 22時〜22時55分(再放送:10時〜10時57分)
フジテレビ:毎週月曜〜金曜 4時〜4時55分

◎BSフジ11時間テレビ2019 全国対抗!脳トレ生合戦
「クイズ!脳ベルSHOW」をベースにお笑いや歌でも脳を活性化する特別番組
2019年11月16日(土) 11時〜22時

  • カネコシュウヘイ

    (編集者/ライター)1983年11月8日生まれ。埼玉県在住。成城大学出身。2008年から出版業界に従事、2010年に独立しフリーランスとなる。以降、Webや雑誌でエンターテインメント系のジャンルを中心に取材や執筆へ注力。月平均4〜5回はライブへ足を運ぶアイドル好き。著書に『BABYMETAL追っかけ日記』(鉄人社)

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