ラグビーW杯 南ア戦のカギは福岡、松島、山中の「バックスリー」

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Wフェラーリの福岡堅樹と松島幸太朗。二人は南アフリカ戦でも勝敗のカギを握る存在だ/写真 アフロ

強大だが、“相性の良い”対戦国

なんという巡り合わせだろうか。

4戦全勝で史上初のプールマッチ突破を果たした日本代表が準々決勝で対峙するのは、南アフリカ。2015年の前回大会で歴史的勝利を挙げ、大フィーバーが巻き起こるきっかけとなったラグビー界の巨人だ。

折しも試合が行われる10月20日は、3年前に53歳の若さで他界した“ミスターラグビー”平尾誠二さんの命日。ジャパンにとって、これほど燃えるシチュエーションはない。

南アフリカは現在世界ランキング5位で、過去2回のワールドカップ優勝を誇る強豪。今季はニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンと争う南半球4か国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」を2勝1分で制しており、このワールドカップでも優勝候補の一角に挙げられている。プールマッチでニュージーランドに敗れ(13-23)2位通過となったが、全参加国の格付けでは横綱といっていい存在だ。

もっとも、強大な敵であることは間違いないが、日本にとって南アフリカは戦いやすい部分もある。南アフリカの強みは、世界最高レベルの体格とパワーを生かした圧倒的なコンタクト力。その分、戦い方はシンプルで、日本としては的を絞りやすい。また速いテンポで攻撃を継続された時や突破された後のディフェンスには、緩い部分も目立つ。

一方、日本の持ち味は豊富な運動量をベースに15人がすばやく動き続けるスピード感と、プレーの多彩さだ。つまり南アフリカは“相性の良い相手”。「自分たちの強みを出して、相手の強みを出させないラグビー」を遂行する上で、絶好のターゲットといえる。

勝利のカギは「ノーペナルティ」と「キック処理」

では、ジャパンはいかにして戦うべきなのか。

南アフリカがもっとも強さを発揮するのは、スクラムとラインアウトを軸にFW戦で優位に立ち、パワーでなだれ込むパターンだ。自陣深くで、重いナタを打ちつけるような猛攻をしのぎきるのは難しい。あの強大なFWをいかにゴールラインから遠ざけられるかが、重要なポイントになる。

そのためのカギとなるのが『ノーペナルティ』、反則をしないことだ。中盤でペナルティをおかせば、南アフリカはキックで陣地を進め、得意のラインアウトからモールを組んでくる。もっともリスクが低く、かつ高い確率でトライが狙える戦い方だ。

この形に持ち込ませないために、ジャパンは激しいプレッシャーにさらされても「絶対に反則しない」という意識を全員で徹底する必要がある。

南アフリカの強みは、世界最高レベルの体格とパワーを生かした圧倒的なコンタクト力/写真 アフロ

キープレイヤーは福岡堅樹、松島幸太朗、山中亮平

逆に中盤より敵陣側で戦っていれば、今のジャパンのディフェンスなら南アフリカのアタックを十分抑えられるだろう。手詰まりになれば、相手はキックを蹴り込んでくるしかなくなる。そこでもうひとつの焦点となるのが、『キックボールの処理』だ。

7-41の完敗を喫した9月6日のテストマッチでは、多くの失点の起点が相手のキックボールにうまく対処できなかったことだった。ただしこの時はWTB福岡堅樹が開始4分に足を痛めて退場し、キック処理を担うバックスリー(両WTBとFBの3人)の連携の乱れが大きな要因となった。

しかし、福岡・松島がスタメン出場したスコットランド戦は終始安定したプレーを見せており、前回の対戦からは大幅な改善が期待できる。南アフリカ戦のスタメンは左WTBに福岡、右WTBに松島幸太朗、FBに山中亮平が名を連ねており、3人の連携がカギとなりそうだ。

敵陣でゲームを進め、相手のキックボールをしっかりと確保できれば、逆にいいエリアでアタックを仕掛けられるチャンスになる。陣形が崩れたアンストラクチャー状況でのアタックは、今のジャパンが得意とする分野。松島、福岡の決定力がもっとも生きる局面だ。

恩師・平尾誠二の命日での決戦に、山中亮平は活躍を誓う/写真 アフロ

“ジャイアント”をふたたび失意に沈める

ここ数年で南アフリカがいいパフォーマンスを発揮した試合を振り返ると、ディフェンスで猛然とプレッシャーをかけ、相手に大きくボールを動かせない点が特徴となっている。逆にリズムよくボールがつながりディフェンスで前に出られないと、苦しんでいるケースが多い。今回のニュージーランド戦や昨秋のウェールズ戦(11-20で敗戦)は、まさにこのパターンだった。

繰り返しになるが、ジャパンの持ち味はチームとしてのスピード感とプレーの多彩さだ。

一次攻撃からの工夫を凝らしたサインプレーで相手が下がりながら守る状況を作り、流れるような連続展開で南アフリカの防御陣形が整う前に仕掛け続ければ、トライを取りきる力は十分ある。その起点となるスクラムやラインアウトで、マイボールを安定してキープできていることも心強い。

今のジャパンは、先にトライを取られてもすぐに取り返す力があり、相手の猛攻に対し我慢強く守り続けられるたくましさがある。先行する展開、追いかける展開のどちらになっても、焦らず浮足立たず対応できるだろう。

僅差で終盤勝負に持ち込めば、「負けるかもしれない」という不安と地響きのようなサポーターの大声援が、プレッシャーとなって南アフリカに重くのしかかる。前回大会の南アフリカ戦、今大会でのアイルランド戦とスコットランド戦と同じ、あの空気感だ。

国際ラグビーにおける正真正銘の”ジャイアント”をふたたび失意の底に沈める条件は、そろっている。

  • 直江光信

    1975年熊本市生まれ。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)

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