「食べログ」評価興味なし! 怖い店ほど愛がある 神保町「仙臺」

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「客ファースト」だと思うな! 不機嫌な店には理由がある。そして愛もある

「頑固な店」「怖い店」ってありますよね。店主が不機嫌だったり独自ルールがあったり。しかしネットの書き込みが怖くてお客さんに「NO」「NG」と言えない飲食店が増えているこのご時世、まだその姿勢を崩さない店主って逆に凄いと思いませんか? しかも私の経験上、そんな店主は間違いなく「人情深い人」たちです。今回は、その1店の「仙臺」をご紹介します。

「テール売り切れ!!」となぜかこちらが怒られます

怖い……。

こんな顔でいらっしゃいませとか言われたら即座に帰りますよね。でもこの「仙臺」、昼は行列必至。1日200人以上が入る超人気店です。

ラーメン屋だったり居酒屋だったり、お店が続かない場所でしたが…

2015年8月、カレー激戦区神保町に降臨しました。ちなみに「せんだい」と読みます。「せんつぼ」って、そんなわけないじゃないですか。

ハイレベルな欧風カレーが450円〜!

牛タンカレー750円が看板メニュー。ほろほろっと繊維に沿ってほぐれる牛タンが絶品

名物はカレー450円。安い上に尋常じゃない量が出てきます。ビーフカレーでも550円、カツカレーでも680円。安くてデカ盛りなだけでなく、味が一流ホテル並みに本格的です。オヤジが怖いからお世辞言ってるわけではありません。

ビーフカレーには長時間煮込んで柔らかくなった牛肩ロースがゴロゴロと入っています
ハヤシライス780円もデミグラスがコク深くて濃厚です

カレーソース(『ルウ』と言うとオヤジに怒られます)はじんわりスパイシーで、タマネギやリンゴなどの野菜、牛肉や鶏肉のブイヨンなど多種類の具材の旨みが凝縮されています。これで450円〜とは信じられないクオリティです。

でも店主が……

怖いですねえ。この時はちょうど、長居しているOLに「あんたたち、空気読んでね。食べ終わったら帰ってね」と言って震え上がらせていました。この顔で言われたら泣いちゃいますよ。

ですが皆さん……大事なポイントを見落としてはいけません。店主は間違ったことを言っていないのです。

実際このOLは食べ終わった後も店の混雑をよそに 同僚の噂話をしていました。会社の給湯室ですりゃいい話だと思います。

仙臺で店主の逆鱗に触れないための3原則

「お客さん、喋るなら外行ってね」とやんわり怒られます

このように、店主が不機嫌になるのには理由があるのです。そこで、「仙臺」で店主に注意されず心地よく過ごすための3原則をまとめてみました。

①携帯電話を使うな

通話は厳禁。またカレーそっちのけで携帯に夢中、もしくは食べ終わっても携帯をいじる行為も避けましょう。写真撮影も1枚なら良いですがパシャパシャやっていると店主の眉間のシワが一層深くなりますので注意。動画撮影なんてもってのほかです。

②聞くな

面倒な質問はしないこと。「カレーってけっこう辛いですか?」とか聞かない。想定内の辛さですので。「オムライスできますか?」って、12時30分まで注文不可って壁に貼ってます。「辛口のえびめしってどんなんですか?」って、辛口のえびめし、そのままです。

③長居するな

先のOLのようにGET OUTを命ぜられます。経験上、混んでいても混んでいなくても長居しないほうが身のためです。席はカウンターだけだし外は行列しているので、長居する方が心強いなと思います。

もうお気づきかもしれませんが、よく考えると、以上のことって飲食店で当たり前のルールではありませんか?それをして「怒られた」というのはお門違いかもしれません。

その証拠に、以上のことをきちんと守って、店主に美味しかったです!とか伝えると、こんな顔になります。

右は奥様の美代子さんです。とってもチャーミング

実は、店主の藤原哲雄さんは非常に心の優しい人です。同時に稀に見るほど正直な人でもあります。

「とにかくお客さんには美味しい料理を美味しいうちに味わってもらいたい」。その一心でストレートにものを言います。携帯電話で話をしているとカレーが冷めてしまうし、長居をされると待っているお客さんが迷惑だし。理不尽な理由で塩対応しているわけではありません。

しかもなんと哲雄さん、年齢はなんと76歳。奥様は75歳です。見えませんねえ。ここに店を出すまでの遍歴はとにかく波乱万丈で、テレビの1時間番組ぐらいじゃないと収拾つかないと思います。

店主はものすごい苦労人だった

ざっくり言うと、哲雄さんは仙台出身で、地元の職場を喧嘩辞めし、叔父を頼って北海道の会社を紹介されるも叔父と喧嘩して破談に(喧嘩っ早い)。そして、たまたま道で見かけた「レストラン調理見習い募集」の張り紙がきっかけで洋食の道へ。

その後は札幌や仙台などのレストランの料理長も経験し、カレーをメインにしたフランチャイズを展開しましたが、倒産。そこから夫婦で働いて働いて、やっとこの店を開店するまでに至るわけです。

「うちは洋食屋です。カレー屋ではありません」と哲雄さん

とにかく自分の作るカレーには確固たる自信を持っています。行くたびに「あのねえ猫田さん、俺のカレー世界一だと思うんだよねえ」とおもむろに話しかけられ、「そう思います!」と心から同意しています。

あと、まかないでもご夫婦はカレーを食べていますが、毎回「あ〜、このカレーは本当にうまいな!」と言っているのを聞くと、思わず頬が緩んでしまいます。

店内は大音量で行進曲がかかっていますが、このBGMだとやる気が出るのだそう

仕込みの手間も並ではありません。閉店後も深夜までミキサーを回したりソースを煮込んだり。土曜も午後は仕込み、定休日の日曜も店に出ていることがほとんどです。

最近は息子さんがお店に立つようになり、夫婦の重労働も軽減されました(よかった……)。

右端の張り紙に注目。テレビに出たことがちょっと嬉しかったようです
チューをしようとしているわけではありません。でも本当に奥様想いです

こんな一面を知ってしまうともう仙臺愛が止まらなくなってしまうのです。

でもこのお店だけでなく、今まで訪れた飲食店で、「店主怖え!」と思った店ほど、よくよく聞くとお客さんへの愛が深いんだなと思い知らされるわけです。同時に、そんな店主たちは総じて「不器用」ということも。

自分のマナー違反を鑑みず、「注意された」「怒られた」とネットに書き込んでしまう今の世の中。

「仙臺」の他にも、お客さんへの愛の深さゆえ不機嫌な店がまだまだあります(中には本当に感じの悪い店もあると思いますが)。そんな不器用な店主たちの優しさをこれからもお伝えしていきたいものです。

仙臺 住所:東京都千代田区神田神保町1丁目64−1 /アクセス:地下鉄神保町駅徒歩5分、JR水道橋駅東口徒歩7分/電話:03-5577-4051  /営業時間:11:00~15:00・15:30~21:00(L.O.20:30)土・祝11:00~15:00/定休日:日

  • 取材・文・写真猫田しげる

    1979年北海道函館市生まれ。京都のタウン誌、北海道の新聞地域面、東京の街歩き雑誌、旅行本などの編集・ライター業に従事。2019年4月から拠点を札幌に移動し、ウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。

Photo Gallary13

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