秋ドラマはテレ朝が圧勝?「視聴率」でわかった各局のドラマ戦略

各局初回の通信簿~世帯と個人で評価はこんなに違う~

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秋ドラマの初回が出そろった。

GP帯(夜7~11時)に週3本並べる日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの4局で比べると、初回平均の世帯視聴率はテレ朝が他を圧倒した。

ただし個人視聴率の詳細を分析すると、各局の戦略の違いと激戦ぶりが見えてくる

世帯視聴率の明暗

ビデオリサーチが調べる関東地区の世帯視聴率では、3ドラマ初回の平均でトップだったのはテレ朝。

『相棒 season18』(水谷豊主演)、『科捜研の女 SEASON19』(沢口靖子主演)、『ドクターX~外科医・大門未知子~第6期』(米倉涼子主演)の初回平均は16.47%。2位と6.3ポイントも引き離す圧倒ぶりだ。

3ドラマとも初回は16.7%、12.4%、20.3%と二桁スタートは、安定の強さだ。

GP帯(夜7~11時)にドラマを週3本並べる日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの4局の平均視聴率

2位は『4分間のマリーゴールド』(福士蒼汰主演)、『G線上のあなたと私』(波留主演)、『グランメゾン東京』(木村拓哉主演)を並べたTBS。

3作初回は10.3%、7.8%、12.4%で、平均は10.17%と、なんとか二桁を守った。健闘していると言えよう。

3位は『シャーロック』(ディーン・フジオカ主演)、『まだ結婚できない男』(阿部寛主演)、『モトカレマニア』(新木優子と高良健吾のダブル主演)のフジ。

それぞれ初回は12.8%、11.5%、5.6%。2作は大健闘したものの、3作目がブレーキとなり、平均は9.97%と二桁に届かなかった。

そして4位は日テレ。『同期のサクラ』(高畑充希主演)、『俺の話は長い』(生田斗真主演)、『ニッポンノワール』(賀来賢人)をラインナップしたが、初回は8.1%、8.4%、7.8%と、いずれも二桁に届かなかった。平均で8.1%は3位からも2ポイント近く離された格好だ。

このように世帯視聴率だけでみると、テレ朝の圧勝、2位TBSと3位フジが接戦で、日テレが大きく出遅れたように見える。

ただし以上の序列は、今やテレビ番組の評価基準としては意味を失いつつある世帯視聴率のお話である。

個人視聴率から見える風景

まず押さえておきたいポイントは、世帯視聴率におけるテレ朝の高い値は、65歳以上の4層により支えられているという事実。

逆に世帯で3位に2ポイント近く離された日テレは、個人視聴率でみると、個人全体もC層(4~12歳)から4層まで、2位TBSや3位フジとほとんど差がない。

では個人で差がないのに、世帯では2ポイントの開きがなぜ出来てしまうのか。

そのからくりは、家族一緒にテレビを視聴しているのか、1人で見ているのか、どんな視聴のされ方が多いのかに依る。

例えば100世帯中、10世帯がA番組を視聴していると、世帯視聴率は10%になる。8世帯しか見ていないB番組より2ポイント高くなる。

ところがA番組は、全世帯が1人で見ていたとすると、100世帯300人がサンプル家庭だと、個人視聴率は10人÷300人で3.3%と算出される。

一方B番組は、見ていた8世帯のうち6世帯が1人視聴、残り2世帯は2人で見ていたとすると、個人視聴率は(6人+4人)÷300人で、やはり3.3%となる。

つまり1人で見る人が多い番組か、家族一緒に見る番組かで、世帯視聴率と個人視聴率は変わってくるのである。

では広告を出稿するスポンサーの立場からは、この違いはどう見えるのか。

世帯が商品を購入するのではなく個人が買うのだから、世帯視聴率は意味がないとなる。昨春からスポットCMの取引が世帯を止め、個人視聴率で値決めされるようになったのは、こうした事情からだった。

首位テレ朝と他3局の差

再び首位テレ朝と4位日テレのデータを比べてみよう。

世帯視聴率では、テレ朝は2倍強と圧倒した。ところが個人視聴率では、テレ朝は日テレの1.27倍。両者の差は大きく縮む。

仮にテレ朝のドラマが全て1人視聴だったと仮定すると、日テレはほぼ全世帯が2人で見ていた計算になる。ドラマの見られ方によって世帯視聴率の”実態”には大きな差が生じることが浮かび上がる。

次に男女年層別の含有率という考え方で分析してみよう。

今回の含有率は、各層の個人視聴率を個人全体で割って指数化した。これで各局3ドラマ平均を比べると、一目瞭然となる特徴は、テレ朝だけが65歳以上の高齢者が多く含まれるという事実だ。

日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの4局によるGP帯(夜7~11時)に各ドラマ3作品の平均個人含有率(全体)

ご存知の通り、テレ朝の3ドラマは、『相棒』が18回目のシリーズ、『科捜研の女』が19回目、『ドクターX』も6回目と長寿番組だ。

見慣れた登場人物によるパターン化された展開が、多くの高齢者を惹き付けているようだ。

しかもテレ朝ドラマのテーマは、ドラマチックな展開になりやすい事件モノと医療モノだ。さらに途中を見そびれても話についていける1話完結モノに徹している。『ドクターX』は現代の『水戸黄門』的ドラマと評されることが多いが、こうした視聴率を獲りやすい仕立てが、世帯視聴率での強さの要因となっている。

ところが他3局は、1クールを通じてストーリーが展開するドラマで、刑事モノや医療モノ以外、さらには小説や漫画を原作にしないオリジナルドラマにも挑戦している。

初物についていけない高齢者には見てもらいにくいが、若年層の含有率は高くなっている。

若年層での差

では、その若年層の含有率を、詳しくみてみよう。

長寿ドラマが3本並ぶテレ朝は、C・FT・F1・F2・M1で最下位だ(Cはchild:子どもの男女の頭文字、Tはteenager:若い男女の頭文字、Mはmale:男性の頭文字、Fはfemale:女性の頭文字)。

そのC層ではフジが首位。F2ではTBSがトップ。他のFT・F1・MT・M1・M2は日テレがおさえた。世帯視聴率では他局の後塵を拝した日テレは、若年層含有率で圧勝と言える。

日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの4局によるGP帯(夜7~11時)に各ドラマ3作品の平均個人含有率(C層~2層)

まずC層首位のフジは、GP帯で放送する民放ドラマ14本の中で、1位『まだ結婚できない男』、2位『シャーロック』と上位を独占した。この世代は、阿部寛の偏屈な性格とシャーロック・ホームズに魅力を感じたようだ。

F2でトップのTBSは、3ドラマともF2が注目した。

『4分間のマリーゴールド』という恋愛モノ、『G線上のあなたと私』というアラサーの転機、そして美味しいフランス料理の『グランメゾン東京』は、いずれもこの世代の関心にヒットしたようだ。

そして特筆すべきは、若年層全般で優勢だった日テレの3本。

強烈な個性の新社会人が主人公の『同期のサクラ』、無職のニートが主人公で“30分×2話”と異例の作りに挑戦する『俺の話は長い』、そして『3年A組』の半年後の設定で過激な展開の『ニッポンノワール』。いずれも若年層にとってフックが用意周到に設けられている。しかも3本ともオリジナルドラマ。こうした野心的な姿勢が、若年層を惹き付けていると言えよう。

若年層の人数という視点

含有率とは別に、若年層の絶対数を見るなら年層別個人視聴率をチェックしなければならない。

これを詳しく見ると、含有率で劣勢だったテレ朝も、絶対数では2~3位と健闘する。要はドラマ全視聴者の中での比率で見ると、高齢層が多いために比率が下がるが、絶対数では視聴者数自体が大きいので若年層の数も大きくなる。

結果として、他3局と互角となる。

日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの4局によるGP帯(夜7~11時)に各ドラマ3作品の平均個人視聴率

広告主は率を重視しているのではなく、自社のCMが何人に届いたのかを気にしている。欧米でも視聴率を使わず、視聴者数を指標とする国が主流だ。

その意味では、世帯視聴率で大差がついているように見える秋クールの初回だが、実数でみるとC層から2層まででは、4局が完全に肩を並べていると言えよう。

広告主の中には、高齢者を含めた世帯視聴率で評価する社、ターゲット層の含有率を重視する社、若年層ターゲットとする社などがあり、CM出稿戦略は一様ではない。こうした広告主のニーズを前提に、各局はドラマ制作の方向性を微調整している。

初回では横一線となった秋ドラマ。クール終盤までにどの局が抜け出すのか、熱い戦いが展開されそうだ。

  • 鈴木祐司

    (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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