台風19号で闇に沈み……対策遅れ“セレブエリア”タワマンの弱点
電気は完全に止まりトイレも使えない……。高級住宅街の高層マンションはこんなに危険
「台風が通過した翌日の10月13日は、朝早くに目が覚めました。でも、部屋の灯りがつかなくて真っ暗。枕元の懐中電灯を使って、なんとかリビングのカーテンを開けました。テレビもつかないので不安になって1階に降りたら、ロビーに『住戸のトイレの水を流さないでください』って注意書きがあったんです。使えるのは1階の仮設トイレだけなんですが、臭いがキツくて……。いまは近くのマンションにトイレを借りにいくところです」
人気の住宅街として知られる神奈川県川崎市・武蔵小杉のタワーマンションに住む女性はそう悲痛な思いを漏らした。
台風19号によって「セレブエリア」の道路は土砂でぬかるんでいた。そして、その道の先にある一部のタワマンは浸水により、停電と断水の状態が続いている。
「東日本大震災の時は大丈夫だったのに、今回は非常エレベーターでさえ止まっているんです。高層に住んでいるので、とても生活できない。いま周辺のホテルはどこも満室ですよ。管理会社は、復旧まで最長1ヵ月かかると言っているとか。長すぎですよ……」(タワマンの別の住民)
日が落ちると、マンション内は完全に闇に包まれ、異様な雰囲気となった――。
危機管理アドバイザーの国崎信江氏はこう指摘する。
「そもそも武蔵小杉は水害のリスクが高いエリアです。しかもタワマンの電気設備は地下に設置されていることが多いので、浸水被害にとても弱いんですよ。また低層階では浸水によってトイレが逆流する危険性があります。場合によっては水没した設備を全部取り替える必要がありますので、復旧には時間がかかりますし、共用部ですから費用を住民が負担することもありえます」
多摩川の氾濫が、タワマン暮らしのセレブ生活を一変させたのである。それ以外でも、入間川、利根川、荒川などに流れ込む支流の堤防が次々と決壊した。
気象予報士の森田正光氏はこう語る。
「今回の河川氾濫で被害を受けた地域は、大豪雨を想定した堤防の建設が進んでいないエリアに開発された新興住宅地が多いんです。現実問題として新たに堤防を建て直すには莫大な費用がかかるため、安全とのバランスが難しいのです」
大規模な水害対策がなかなか進まない一方で、19号のような巨大な「都市型台風」はこれからも都心を襲う。
「温暖化などの影響で巨大台風は今後も増えていくことが考えられます。またコースも変わってきていて、昔は九州エリアを『台風銀座』と言っていましたが、近年は東海や関東に上陸する回数が増えています。まだはっきりとは言えませんが、15日現在は南海上にうっすらと渦巻きができています。これまでに最も遅い台風の上陸は、11月30日ですから、今年もこの後、絶対にこないとは言えません。少なくとも来年、巨大台風が再び到来する可能性が考えられるので、対策しておくべきでしょう」(森田氏)
都市は暴雨に弱い。台風19号はそれをまざまざと見せつけた。
『FRIDAY』2019年11月1日号より
- 撮影:結束武郎(写真1、2枚目) 樋口琢生 濱﨑慎治 中村將一