ラグビーW杯「世界一になる」エディHCが挑むオールブラックス戦

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コーナーフラッグを抜いて投げるイングランド代表エディ・ジョーンズ監督。その心は「オールブラックスに当たれ」?!(写真:アフロ)

ラグビーワールドカップ(W杯)で3連覇を狙う「オールブラックス」ことニュージーランド代表と、エディー・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ(HC)が率いるイングランド代表が26日、対戦する。世界ランキング1位対2位の激突で、「事実上の決勝戦」と世界の耳目を集めている。

2015年大会、自国開催にも関わらず、予選プールで敗退という屈辱を味わったイングランドは、W杯で指揮官とコーチで16勝2敗と高い勝率を誇るジョーンズHCを外国人として、初めて指揮官に招聘。2019年が日本開催であり、知日家だったことも後押しした。

自身もその期待を十分に感じ、就任会見で「2019年のW杯で優勝する」と宣言。その言葉通り、順当に勝ち上がったイングランドは今大会の優勝候補として、打倒オールブラックスの最右翼となった。

2016年、「イングリッシュ・ウェイを作り上げる」と気合い十分のジョーンズHCは、強固なセットプレーとディフェンスを軸に初のシックス・ネーションズ(欧州6カ国対抗)では早速、全勝優勝を達成した。6月の豪州遠征でも3連勝、11月も南アフリカに土をつけるなど全勝し、世界ランキングも8位から2位まで上昇した。2017年3月のシックス・ネーションズの最終節・アイルランドに敗れるまで、18まで連勝記録をのばした。

「最初に選手も私も言ったことは、世界一になりたいということだ。その能力はある。トレーニング、プレー、考え方を少し変えればいいだけ」というジョーンズHCは、日本代表時代と大きくコーチングスタイルを変えたわけではない。

HOジェイミー・ジョージが「エディーのセッションは試合よりも激しいし、トレーニングも試合より難しいことがほとんど。だから試合の後のリカバリーは自然と早くなる」と言えば、エディー・ジャパン時代も片腕を務めたスコット・ワイズマンテルコーチも「(ハードワークという)エディーのコーチングのベースは変わらない」と話す。

おそらく、一番変えたのは、選手たちのメンタル面だ。

No.8ビリー・ヴニポラは「W杯で優勝するには君が必要だと言ってくれた。目標ができた」と話し、WTBのジョニー・メイも「エディーが来たことで一番大きく変わったのはマインドセットだ。ポジション争いは、それぞれが最高のパフォーマンスを出そうとすることで、ライバルで競い合うものではない。それが、チームとして高いレベルに上がっていく」と指揮官に信頼を置き、選手たちも徐々に自信を取り戻していった。

2017年6月のブリティッシュ&アイリッシュライオンズの遠征では、イングランド代表からSO /CTBオーウェン・ファレル、HOジョージ、PRダン・コールら、現代表スコッド31名のうち13名が選ばれ、オールブラックスに勝利した。最年少で参加したLOマロ・イトジェは、「この経験をイングランドに持ち帰ることができる」と自信をのぞかせた。

一方で、同時期、イングランドはアルゼンチン遠征を行い、最年少キャップホルダーとなった当時18歳のFLトム・カリー、同20 歳のFLサム・アンダーヒルの「カミカゼキッズ」の2人など現在、スコッドに入っている若手選手を起用し連勝を飾った。

「W杯で優勝するためにはあらゆることをやる。それが代表の指揮官としての責務だ」と語気を強めたジョーンズHCはその年のワールドラグビーの最優秀コーチ賞にも輝いた。

豪州代表戦試合前。イングランド代表・エディ・ジョーンズ監督はネクタイをしていてもボールを手放さない(写真:アフロ)

このまま上昇気流に乗るのかと思ったが、2018年になると急降下。3連覇のかかったシックス・ネーションズで、2勝3敗で5位に沈む。さらにDFコーチのポール・ガスタード氏が去った影響もあり、5月のバーバリアンズ戦で大敗、6月の南アフリカ3連戦でも最初の2戦は惜敗し、世界ランキングも4位に落ちた。

協会はW杯が終わるまでジョーンズ体制を維持するとしていたが、メディアやファンからはジョーンズHCの解任がささやかれるまでの事態になった。

しかし、PRコールが「エディーは選手たちにトレーニングと試合でベストのパフォーマンス出す以外のことはすべて心配しないようにしてくれている」と言うように選手たちに動揺は見られなかった。

目標に対して綿密にプランを立てて、実践するジョーンズHCは、昨年秋、オールブラックスを指揮した経験もあるジョン・ミッチェル氏をディフェンスコーチに招聘し、立て直しを図った。上手くキッキングゲームも取り入れた成果もあって2018年秋は 南アフリカに12-11で勝ち、今年のシックス・ネーションズではSOファレルを正式にキャプテンに指名。優勝したウェールズに敗れたが、2位となった。

迎えたW杯では、文化も気候も日本を知り尽くすジョーンズHCは「この時期日本で戦うためには2種類のラグビーを用意する必要がある」と暑さと湿気対策としてセットプレーラグビーと、決勝トーナメントで晴れた天候では得意のパスラグビーを両方できる準備をしてきた。

他のチームとは異なり、暑さ対策としてポルトガルやイタリアで合宿を行っていたため、イングランドの選手たちは直前まで来日しなかった。そして、予選プールを勝ち上がり、準々決勝ではオーストラリアを40-16と下した。

「2017年5月に、今大会の組み合わせが決まり、その時から準決勝の相手がオールブラックスになることを想定し準備をしてきた。チームが進歩してきたことは、今、世界のトップ4にいることでわかるはずだ。この4年間、素晴らしい勝利と、いくつかの意味のある敗戦があった。その中で難しい局面にどう立ち向かうかということを選手たちは学んできた」

さらに屈託のない笑顔を見せながらこう続けた。

「ベストを尽くせば勝つ。それでなければ負ける。こんなチャンスはワクワクするしかない」。

W杯の準決勝と言えば2003年大会、オーストラリアを率いていたジョーンズHCは下馬評を覆し、ニュージーランドに22-10で勝利した。今回も虎視眈々とその再現を狙う。

就任以来、「イングランドが2019年の11月2日に世界ナンバーワンのチームになる」と繰り返し発言してきたジョーンズHCは〝第2の故郷〟でオールブラックスに勝って決勝に進めば、その言葉は現実となりそうだ。

  • 取材・文斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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