超高校級のラグビー選手 大阪桐蔭高・奥井章仁主将が語る「花園」 | FRIDAYデジタル

超高校級のラグビー選手 大阪桐蔭高・奥井章仁主将が語る「花園」

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高校ラグビー界の注目選手、大阪桐蔭の奥井章仁。将来のジャパン候補だ
高校ラグビー界の注目選手、大阪桐蔭の奥井章仁。将来のジャパン候補だ

大阪桐蔭の部活と言えば、誰もが知る野球がある。甲子園での春夏通算優勝は8回。

中村剛也(西武)、中田翔(日本ハム)、平田良介(中日)、浅村栄斗(楽天)らそのOBたちはプロ球界を席巻している。

ラグビーに、個人としてはその時代の彼らに劣らない「超高校級」の3年生がいる。

フランカーの奥井章仁だ。

178センチ、102キロのサイズを利して、立ちふさがる相手を弾き飛ばして進む。奥井は20歳以下日本代表(U20)に選ばれ、今年7月、ブラジルで開催された世界大会「ワールドトロフィー」に参加した。

「いい経験になりました」

日本の裏側で4戦全勝。最上のグレードである「チャンピオンシップ」への参加権を手にした。奥井は2戦に出場する。3戦目のケニア(48-34)はフル。初戦の地元・ブラジル(56-24)は途中からだった。

その遠征でコーチの菊谷崇から助言を得る。

「大学でもバックローをするなら、動ける体を作った方がいい」

帰国後、食事の内容を見直した。

「脂肪を落として、筋肉量を増やすことを考えるようになりました。そのため、油ものを控えました。部位で言うと、豚肉ならバラよりロース。鶏肉ならモモよりムネですね」

体重ありき、ではなくなる。高たんぱく、低カロリーを続けた結果、体重を5キロ減らし、現在の102キロになる。

「以前より走りやすくなりました。疲労感も少なくなりました」

菊谷は奥井と同じバックロー出身。大体大からトヨタ自動車とキヤノンでプレーした。日本代表キャップ(各国協会が認めた国際試合出場数)は68。2011年の第7回ワールドカップでは主将をつとめた。

菊谷も参加した楕円球の祭典は今、日本に来ている。奥井は目を輝かせる。

「国と国との戦いです。その責任感がすごいです。一流の選手たちの中でプレーできるのも素晴らしいですね」

U20の次のカテゴリーはフル代表になる。最上の桜のジャージーにも袖を通したい。

奥井は小1から地元の枚方(ひらかた)ラグビースクールで競技を始めた。楠葉中では2年から大阪府の選抜チームに名を連ねる。才能の開花は早かった。大阪桐蔭の監督である綾部正史が出会ったのはその頃だ。チーム練習を見に行った。

「輝いていたんですよね。声をかけて、ニコッと笑い返してくれた顔もよかった。それから、彼の元に僕にしては足を運びました」

綾部にとっては一目ぼれだった。入学後、持ち前の突破力で1年生からフランカーとしてレギュラーをつかむ。

「コンタクトは自信があります」

ラグビーの格闘技的要素、ぶつかり合いが強みの奥井とチームのスタイルが重なる。開催ラグビー場から「花園」と呼ばれる冬の全国大会にも奥井は出場する。

大阪桐蔭はこの97回大会(2017年度)で初めて決勝に進出した。20-27で東海大仰星(現東海大大阪仰星)に敗れるものの、1983年(昭和58)から始まった部史に、出場12回で新たな1ページを書き加えた。

昨年度の98回大会は2年連続で決勝進出。桐蔭学園との「トウイン対決」を26-24で制し、初優勝する。

奥井はこの年から高校日本代表になる。最終学年では主将にもなった。

「より明確に指示が出せるようになりました。ラックへの入りなんか『強くいこう』だったのが、どう強く入るかを説明しています」

表現力に磨きがかかる。想像しやすい言葉を放つことはリーダーに必要な資質だ。

今春、新チームでの全国選抜大会出場はならなかった。近畿地区の第5代表決定戦で常翔学園に19-28。奥井とプロップの江良颯(えら・はやて)が高校日本代表のウェールズ遠征に参加していた不利もあった。

奥井らが戻った5月の大阪府総体(春季大会)では大阪1位の座を手にした。

東海大大阪仰星に33-12、常翔学園には42-21と雪辱した。花園優勝回数歴代5位の5回を誇る両チームに快勝する。

そして、奥井にとっては最後となる99回大会では戦後6校目の花園連覇がかかる。

これまで、秋田工、目黒(現目黒学院)、相模台工(現神奈川総合産業)、啓光学園(現常翔啓光)、東福岡が成し遂げてきた。

開催地枠を合わせて3校が出場できる府予選は第一地区に入った。初戦は11月3日。単独で15人揃わない合同のD(渋谷、東淀川、成城)と戦う。

「相手は合同ですが、軽いプレーをせず、桐蔭らしく体を当て続けていきたいです」

白ベースに胸元に太い紺ラインが入るジャージーへの思い入れは増す一方だ。

「ここに来て大正解やったと思います。全国制覇ができて、主将、そしてU20にも選んでもらえました。成長させてもらえました。今の自分があるのはこの学校のおかげです」

大阪桐蔭躍進の象徴でもある奥井。連覇を果たし、有終の美を飾れれば、それはまた、チームと学校への最高の恩返しにもなる。

 

◆奥井章仁(おくい・あきと) 2001年(平成13)9月17日生まれの18歳。大阪府枚方市出身。小1から枚方ラグビースクールで競技を始める。楠葉中2年から大阪府選抜。大阪桐蔭では1年からフランカーでレギュラー。2年では17歳以下日本代表、高校日本代表にも選ばれる。同年度の98回全国大会では同校初の優勝に貢献。今年は20歳以下日本代表にも選出された。178センチ、102キロ。

  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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