原画が大集結!「なかよし展」に夢を摘みにくる乙女たちの熱い想い

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2019年10月から「創刊65周年記念『なかよし』展~乙女には恋と夢(ファンタジー)が必要だ☆~」(開催期間:2019年10月4日〜12月25日)が東京都・弥生美術館にて開催中だ。

弥生美術館 東京都文京区弥生2-4-3(午前10時~午後5時 入館は4時30分まで)

創刊から現在にいたるまでの掲載作の原画や付録が大集結する貴重な展示。少女漫画雑誌において最長の歴史を誇る「なかよし」の展覧会では、トキメキとワクワク、そして懐かしさであふれていた。

絵物語から始まる65年

1954年12月に創刊された「なかよし」。連載をリアルタイムで追っていた、今は大人のみなさんはどの作品を読んでいただろうか。90年代に小学生だった筆者はちょうど『美少女戦士セーラームーン』『魔法騎士レイアース』などの連載が始まり、部数が最大に達したころ。「りぼん」と「なかよし」の2冊を買うにはおこづかいが足りない……でも、どちらも読みたい。このふたつは異なる味がするおやつみたいなものだ。姉妹がいる人なら1冊ずつ買って回し読みしたり、学校の友達と交換しつつ読んだりと、工夫とやりくりで楽しんでいた人も多いのではないだろうか。

「子供達が明日も元気で生きていくための活力になるような雑誌でありたいという気持ちは65年間ずっと変わっていないと思います。展示では、昔好きだったものやキラキラしたものを取り戻せる瞬間があるはず」と「なかよし」編集長・須田淑子さん。展示を見れば先のような“私”は全国に、時代のあとさきに大勢いたことがわかる。

展示会場に足を運ぶと、集まっていたのは10代〜50代と幅広い層の女性客が大半だが、食い入るように眺める男性客も散見された。中には、「カナダから旅行で来ました。子供の頃にアニメで『美少女戦士セーラームーン』を見て夢中でイラストを描いてました」という訪日客も。

会場で最初に目を引かれたのは華やかな少女スターの表紙。近藤圭子などの少女スターを起用した表紙は60年代まで続いたそう。化粧や髪型、ファッションが現代の流行のそれとは違ったとしても、目にした瞬間に何かが高まっていくのがわかる。きっとこれこそが、どの時代の少女達もが感じていた「なかよし」へのワクワクの正体なのではないか。

「当館では雑誌文化やふろくの歴史をたどっていることもあり、少女漫画雑誌において最も長い歴史をもつ『なかよし』の展示ができて嬉しいです」という弥生美術館学芸員の外舘惠子さんの想いがあふれるように、会場には原画や単行本、雑誌の展示だけでなく、懐かしいふろくの数々が充実していた。

50年代後半〜60年代も、紙製ではあるもののふろくはブローチや指輪などおしゃれ雑貨がメインで、現代の少女達と同じときめきを感じていたはず。プラスチック製の「花のブローチセット」、布製の「春のかみかざり」は今でも十分に通用するかわいさで、これは欲しくなる! と思わせられるラインナップだ。

デジタル入稿が主流となった今、改めて感じるのは、アナログ原稿の“圧”。美内すずえ『妖鬼妃伝』の原画の前に立つとおどろおどろしさと恐怖が覆いかぶさってくるようだ。また、あべゆりこの『わんころべえ』の線のひとつひとつの、なんて美しいこと。

『こっちむいてラブ!』のカラーワイドポスターは羽根、蜘蛛の糸……光と透明感にかける執念。やはり少女漫画は光の演出が命だ。全体に散りばめられたキラキラ、瞳の輝き、髪の毛の艶やかさ。

キラキラ表現といえば『ミラクル☆ガールズ』も目に入る画面すべてが眩しく、それだけで子供心は浮き立った。

さらに進むと『美少女戦士セーラームーン』のカラー原画。こちらも美しさと鮮やかさに圧倒される。塗りの優美さにハートを射抜かれた少女は全世界にどれくらいいるだろうか。

『魔法騎士レイアース』の原画はトーンとホワイトの使い方。重ねたり削ったり、上からホワイトで線を重ねたりと工作にも近い工程だ。

子供の頃に夢中で読んでいた雑誌の大規模展示。大人になって原画をじっくりと見られるなんて想像できただろうか。ついでに言えば、大人になったことでグッズも予算が許す限り購入することができた。好きなものを好きなままで大人になるって本当に素晴らしい!

それぞれの思い出の「なかよし」

読者はもちろん、執筆していた漫画家にとっても展示はメモリアルなイベント。現在も活躍中の3人の先生に、連載時の思い出や展示にあたっての心境などを聞いてみた。

「当時は普通の学園ものが主流で、あまり深く考えず超能力を持つ双子という斜め上の設定を出し、読者のターゲットに合うかどうかと言われたものの、4話の短期連載の予定だったこともありOKが出ました。双子という設定も見分けがつきにくいから髪の色を変えては、など意見もありましたが『それじゃ双子に見えないから! 読めば見分けられるように描きます!』と抵抗し、結果自由に描かせていただけて良かったです」(秋元奈美氏 『ミラクル☆ガールズ』など)

「私自身も小学生の頃に読者として楽しんだ作品の原画を、初めて見る事が出来て感動です。私の作品の読者さんも大人になって同じように感じていただければ幸いです。当時の思い出としては、憧れだったレターセットやトランプの付録を担当させてもらったのが嬉しかったこと。ただカットの点数が多くて(笑)! 連載中はずっと忙しかったおぼえがあります」(あゆみゆい氏 『ようこそ! 微笑寮へ』など)

「『なかよし』はそうそうたる方々が描いていたのだなあと感慨深いです。萩尾望都先生がなかよしデビューなことも知りませんでした。自分としては、ちょうど『美少女戦士セーラームーン』で『なかよし』最大発行部数の頃に末席に載っていたので、ついでにたくさんの方に知っていただけてありがたかったです(笑)」(海野つなみ氏 『ロマンスのたまご』など)

回答は3人3色。だが、読者に届けたいものに対する想いには1本の軸があるように思う。「少女漫画において大切なことは?」という質問に、あゆみゆい氏は「普遍的な誰もが感じる感情を大切にすること、そこに少し憧れもプラスすること」、海野つなみ氏は「ロマンですかね。ロマンスじゃなくて。女の子が大人になるために必要な栄養がギュッと詰まってるのが少女漫画だと思います」と答えてくれた。

今度は反対に、広い世代の話も聞いてみたい……ということで、展示を楽しんでいる最中に恐縮ながら、来場客にも声をかけてみた。

「小学生の頃『キャンディ・キャンディ』が好きでした。当時は北海道に住んでいて、外国の方と触れ合う機会もなかったので『アルバート』『ジョルジュ』といった名前もとても新鮮で。洋服もとにかくおしゃれで憧れていました。服なんてそう買ってもらえるものでもなかったですから。次々と困難が降りかかっても健気に生きるキャンディが大好きでしたね」(50代女性)

名前に服に洋館に、まだ見ぬ異文化の扉を開いてくれたのが『キャンディ・キャンディ』で、華やかな世界に胸を高鳴らせていたそう。

「よく読んでいたのは『美少女戦士セーラームーン』『ミンミン!』や『ミラクル☆ガールズ』で、恋愛よりファンタジー要素にひかれていましたね。アニメも見ていて、友達と『昨日のあの話、見た?』と感想を言い合ったり、主題歌を一緒に歌ったりしていました」(30代女性)

ドキドキする恋愛も楽しいけれど、やっぱり女の子が冒険したり勇ましく戦ったりする活劇が好き。筆者含め、恋愛以外の部分も楽しみたい少女達をすくいあげてくれたのも「なかよし」だった。

「大人になってから『魔法騎士レイアース』と『カードキャプターさくら』を読み返し、改めてCLAMPファンになりました。展示を見ていると『ピアノソナタ殺人事件』『修学旅行殺人事件』など本気で怖いホラー漫画があって驚きました。過去にはこんな作品も連載していたんですね」(20代女性)

「小学校から『おはよう!スパンク』『キャンディ・キャンディ』『LET’S SMILE メグ』などを読んでいました。物語の細部は記憶から薄れていても、展示を見ると記憶が蘇ります。

『血まみれ観音』『ピアノソナタ殺人事件』といったホラーは怖いけれど楽しかったです。よくひとりでこそこそ読んでいましたね。一番怖かったのは『白い影法師』で、まるで誌面のお化け屋敷のようでした。子供の心に人間の見てはいけない部分を見てしまったようで、そういった人間の負の側面も漫画で覚えました。いろいろな物の見方ができるようになるのが、漫画の面白いところですね」(50代女性)

少女漫画雑誌といえばキラキラやトキメキであふれているイメージだが、おどろおどろしいホラーやオカルトもまた「なかよし」の顔だった。

読者が大人になり、「なかよし」から離れ記憶が薄れたとしても、心に刻み込まれた何かはそう簡単には消えない。食べた物が血肉となって体が成長するように、摂取した物語は心を変化させていく。

65年という長い間、数多の少女達の成長に伴走してくれた「なかよし」は、新しい時代にどんな物語で少女達を楽しませてくれるのだろうか。ずっと好きでい続けることは人生を豊かにしてくれる。今度はこちらが「なかよし」に伴走していきたい。

  • 取材・文川俣綾加

    アニメ&漫画ライター。アニメの劇場パンフレットや公式ガイドブック、声優・クリエイター・漫画家などの取材記事、漫画のレビューなどを執筆。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せる POPの見本帳』がある。1児の母。

  • 撮影田中祐介

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