筒香、秋山は成功するか?MLBで打撃成績を伸ばしたのは一人だけ

イチローなど過去の日本人野手の成績を分析したら、二人の未来予想図が見えてきた!

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16年にホームラン王を獲得するなど、日本ではスラッガーだった筒香嘉智。メジャーではどうか?

DeNAの筒香嘉智が、ポスティングによるMLB移籍を表明した。かねてよりの希望を球団側が容認した形だ。また西武の秋山翔吾もMLBへのFA移籍の希望を持っているといわれる。

野手のMLB挑戦は、二刀流の大谷翔平を除けば、2013年の日本ハム、田中賢介以来7年ぶりとなる。

一般的に、投手に比べて野手は、MLBで成功することが難しいとされている。
2001年のイチロー、新庄剛志から現在まで、日本人野手のMLBでの成績を振り返ろう。
各打者のNPBでの年平均 本塁打、打点、打率、OPS(出塁率+長打率)が、MLBでどう増減したかを見ていこう。(%)は増減を示す。

2001年
〇イチロー
13本→6本(-53%) 59点→41点(-30%)
打率.353→.311(-12%)OPS.943→.757(-20%)
〇新庄剛志
15本→7本(-54%) 52点→33点(-36%)
打率.249→.245(-1%)OPS.728→.668(-8%)

MLBで3000本安打を記録し、殿堂入り確実とされるイチローだが、NPB時代に比べれば、本塁打は半減。打点も激減し、打率も12%下がっている。NPBでは他に並ぶものがない傑出した成績を挙げていたイチローだが、それでもMLBでは「小型化」したのだ。

2002年
〇田口壮
7本→2本(-64%) 41点→20点(-51%)
打率.276→.279(1%)OPS.716→.717(0%)
2003年
〇松井秀喜
33本→18本(-47%) 89点→76点(-15%)
打率.304→.282(-7%)OPS.996→.822(-17%)
2004年
〇松井稼頭央
17本→5本(-73%) 63点→30点(-52%)
打率.309→.267(-14%)OPS.848→.701(-17%)

2002年の田口は、MLBに移籍して打撃成績が落ちなかった稀有の例だが、打撃に期待されたというより、スーパーサブ的な起用が多かった。
2003年の松井秀喜は、NPBでは今に至るも50本塁打を打った最後の日本人選手だ。日本では長打力は傑出していた。MLBでも松井秀喜は唯一30本を記録しているが、平均すれば本塁打は半減している。

2005年
〇井口資仁
19本→11本(-41%) 63点→51点(-19%)
打率.271→.268(-1%)OPS.820→.739(-10%)
〇中村紀洋
24本→0本(-100%) 70点→3点(-96%)
打率.267→.128(-52%)OPS.873→.350(-60%)
2006年
〇城島健司
19本→12本(-37%) 64点→50点(-22%)
打率.299→.268(-10%)OPS.877→.721(-18%)

2005年の中村紀洋は、イチロー世代でありパ・リーグ時代はライバルだったが、MLBでは全く適応できなかった。
2006年の城島、はMLBでも「打てる捕手」として活躍したが投手とのコミュニケーションが上手くいかず、契約半ばで退団した。

2007年
〇岩村明憲
21本→4本(-81%) 63点→29点(-54%)
打率.300→.267(-11%)OPS.585→.720(-19%)
2008年
〇福留孝介
21本→8本(-61%) 72点→39点(-46%)
打率.305→.258(-15%)OPS.940→.754(-20%)

岩村は、若いチームでリーダー格として活躍したが、走塁時に負傷して成績が下落した。
福留は、デビュー当初こそ大活躍してオールスターにも選ばれたものの、彼も負傷するなど実力が発揮できず。

2011年
〇西岡剛
7本→0本(-100%) 38点→10点(-73%)
打率.293→.215(-27%)OPS.789→.503(-36%)
2012年
〇青木宣親 
11本→6本(-48%) 48点→37点(-24%)
打率.329→.285(-13%)OPS.857→.738(-14%)
〇川崎宗則 
2本→0本(-92%) 34点→10点(-70%)
打率.294→.237(-19%)OPS.723→.609(-16%)
2013年
〇田中賢介 
3本→0本(-100%) 25点→2点(-92%)
打率.286→.267(-7%)OPS.740→.620(-16%)
◯中島裕之 
メジャー昇格できず

2011年以降で規定打席に到達したのは、青木宣親だけ。川崎はマイナーとメジャーを往復。田中賢介は打撃だけでなく、守備でも評価されず、MLBでは外野を守った。
そして中島裕之(現巨人、中島宏之)は、マイナーから昇格することなく2年でアスレチックスを退団した。

以後、MLBに挑戦する野手は途絶えた。田口壮をのぞく13人の野手はすべて打撃成績がNPB時代よりも悪くなった。この結果だけを見れば、NPBの野手はMLBに移籍すれば「小型化する」ということになりそうだった。

しかし2018年に二刀流でMLBに挑戦した大谷翔平は違った。

〇大谷翔平
10本→20本(+108%) 33点→62点(+85%)
打率.286→.286(0%)OPS.859→.883(+3%)

本塁打、打点は倍増し、打率、OPSも落ちなかった。
大谷は、打者単独で見ても、従来のNPBの常識を破る活躍をしていると言える。
その原因の一つは「移籍年齢の若さ」だ。これまでの野手はNPBで9年以上のキャリアを積み、20代後半から30歳前後でMLBに挑戦している。
しかし大谷は日本ハムで5年プレーした後、24歳のシーズンに移籍している。まだ野球のスタイルが固まっていない成長途上で移籍したことで、MLBに適応できたのではないか。
大谷は移籍当初は左投手を苦手にしていたが、2年目には克服した。
大投手ジャスティン・バーランダーにも歯が立たなかったが、今では本塁打を打つまでになった。
彼の存在は、日本人野手への希望を抱かせるものではある。

筒香嘉智はキャリア10年、来シーズン28歳(91年11月26日生)、秋山翔吾はキャリア9年、来シーズン32歳(88年4月16日生)。大谷翔平と同じようにMLBに適応できるかどうかは、微妙だ。

大谷も含め、過去にMLBに挑戦した15人の野手の本塁打、打点、打率、OPSの増減の平均は、本塁打-55%、打点-39%、打率-13%、OPS-18%となる。

筒香、秋山のキャリアハイのシーズン成績にこれを当てはめる。

筒香嘉智 
2016年 44本塁打 110打点 打率.322 OPS1.130
MLBでは 20本塁打 67打点 打率.280 OPS.926

秋山翔吾
2015年 14本塁打 55打点 打率.359 OPS.941
MLBでは 6本塁打 34打点 打率.312 OPS.772

となる。
米記録サイトBaseball Referenceによれば、今季のMLBの打者の平均は

22本塁打 72打点 打率.251 OPS.753

だ。筒香の長打力は「並の成績」になる。守備では大きな期待ができないだけに、厳しい数字だと言えよう。筒香は選球眼が良いので、その部分は期待できよう。

日本では、最多安打のタイトルを4度獲得した秋山翔吾。ヒットメーカーとして鳴らした

秋山は打率だけならリーグ10位前後となる。守備範囲も広く、リードオフマンとして活躍する可能性はあるだろう。青木宣親と似たポジションか。

今のMLBは、日本の野手に関しては比較的冷静な目で見ている。
筒香はポスティング、秋山は海外FAと、移籍の方法は異なるが、彼らの実績と過去のNPB出身選手の実績を勘案して、どんなオファーがあるかだ。
過去には、ポスティングや海外FAを表明しても、MLB球団から声がかからなかったケースもあった。

筒香、秋山両選手ともに、MLB側の評価が厳しいことは十分承知しているだろう。それでも夢に挑戦したいということなのだろう。

筒香嘉智は、日本の野球界の旧態依然とした状況に警鐘を鳴らし、少年野球の改革を訴える勇気ある発言をしている。
そういう意味では、筒香のメジャー挑戦は、選手としてだけでなく、野球人として日本球界を変革したいという気持ちもあってのことだと思われる。
MLBの野球環境や、少年野球の指導法などを「学ぶ」ことも含めて、米国に渡るのであれば、選手としての結果如何にかかわらず、有意義な挑戦ということもできるだろう。

  • 広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

  • 写真時事通信社

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