日本人選手向きは東京 五輪マラソン札幌変更でアフリカ勢独走? | FRIDAYデジタル

日本人選手向きは東京 五輪マラソン札幌変更でアフリカ勢独走?

仰天発表のウラ側にある、国際オリンピック委員会(IOC)と五輪の実態

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MGCで優勝し、「暑さに強い」と絶賛された中村匠吾選手。札幌開催の報に接し、中村を指導する大八木弘明・駒澤大学監督は「北海道で開催するなら一番暑い士別で」と不快感を表明
MGCで優勝し、「暑さに強い」と絶賛された中村匠吾選手。札幌開催の報に接し、中村を指導する大八木弘明・駒澤大学監督は「北海道で開催するなら一番暑い士別で」と不快感を表明

「あまりに突然の発表だったので、どうして今さらこんな話になるのか、という疑念のような気持ちが浮かびました。

私は8月の東京でもマラソンは成功すると思います。なぜなら、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)は、あれだけの成功を収めたではないですか。MGCは五輪の男子マラソン予定日より約1ヵ月遅い9月15日でした。しかしスタート時間は五輪当日より3時間遅い午前9時だったので、好天の中、気温が非常に上昇した。つまり、本番に限りなく近いコンディションだったんです。それにもかかわらず、ケガ人や病人も出ずに誰もが納得する最高に面白いレースとなりました」

かつて日本陸連で強化委員をつとめ、マラソン解説者としても知られる金哲彦氏は、こう憤る。10月17日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は「我々は東京五輪のマラソンと競歩の会場を札幌に移すことに決めた」と発表。その激震は収まる気配をみせない。

五輪とIOCの実態を長らく取材してきたジャーナリスト・岩瀬達哉氏が語る。

「五輪は世界最大の総合スポーツイベントで、世界の視聴者をテレビの前に釘付けにしいかに楽しませるか、スポンサーにいかに喜んでもらえるか、それを果たすことが興行主たるIOCの役割です。もし東京五輪で、ドーハ世界陸上の女子マラソンのように棄権者が続出することが繰り返されたら、多額のスポンサー料を払っている企業からクレームが来るかもしれません。IOCとしては当然の判断だということでしょう。開催都市の東京からすれば、陸上最終種目の男子マラソンが遠く離れた札幌開催では、あまりにも間の抜けたものになる。それでもIOCはJOCや東京都のことなんて眼中にありません。彼らの目的は五輪の人気を維持し、IOCの権威を保ち、次の大会でも稼ぐことですから」

いきなり名指しされた札幌も、右往左往していることでは変わりない。IOCの提案は、「国際陸連公認の北海道マラソンをしているのだから、そのコースを参考にして、さらに発着点を札幌ドームにしたらどうか」というものだ。

しかし、自身もランナーであり北海道のコースを熟知している金氏が言う。

「東京から札幌になれば、レース展開もかなり変わるでしょう。

東京のコースは前半が下りで後半が上り。高温多湿の中、慎重に入らざるを得ず、後半失速する選手が出るので粘り強く戦う日本選手向きです。勝負も最後までもつれる可能性が高い。一方、北海道マラソンのコースならばオールフラットの平坦コースです。後半を待たずしてアフリカ勢がスピード勝負に出て、早々に決着がついてしまうかもしれない。

8月上旬の北海道は東京より気温が4度低いというが、それはあくまで平均気温に過ぎません。しかも、東京のコースはビルによる日陰がかなりあるのですが、北海道マラソンのコースは終盤の北大構内をのぞいて、日陰がほとんどない。直射日光を浴びながら長時間走り続けるので、熱中症になってしまう選手も出てくる可能性があります。東京に比べて走りやすいコンディションかと問われれば、決してそうではないのです」

そして、もしこのまま札幌案を飲んだら、コース設計、ボランティア募集、警備体制といった運営面をゼロから練り直さなければならない。

「IOCは、自分たちが命じれば開催国は言いなりだと思っていたのに、五輪対策のサマータイム案を日本政府が実施できなかったことを苦々しく思っていた。丁寧に進めても話がまとまらないなら、トップダウンで決めてしまえ、というのが今回の決定の真相でしょう。IOCは札幌のマラソンコースのことなどろくに調べていないでしょうから、詳しい事情を知ったら『やっぱり東京でやろう』と言い出しかねない」(全国紙五輪担当記者)

11月1日に札幌開催が正式に決定したが、IOCが次から次へと「難題」を持ち出す可能性も大いにあるのだ。

札幌で開催されている北海道マラソン。終始日差しが降り注ぐ平坦なコースで、東京とはまるで違うレース展開になる可能性が高い
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事前の根回しもなく、小池都知事は憮然とした表情
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IOCバッハ会長。ドーハ世界陸上の女子マラソンで4割が途中棄権したことが”変心”のきっかけだった
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『FRIDAY』2019年11月8日号より

  • 写真築田 純/AFLO 時事通信撮影鬼怒川毅

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