育成なき巨人 今度は中日・中継ぎエース強奪で招く“セの弱体化”
また巨人がライバルチームの主力選手を強奪しようとしている。セ・リーグでは巨人ばかりが戦力肥大し、その他のチームは弱体化の一途。リーグの劣化を招いているのだ
‘17年にDeNAのエース・山口俊、’18年にセ・リーグの本塁打王・中日ゲレーロ、’19年に広島の主軸・丸佳浩……。毎年のように、ライバルチームの中心選手を獲得してきた巨人。今オフも、セの有力ピッチャーを強奪しようとしている。リーグ最多の41ホールドを達成した、中日の最優秀中継ぎ投手ロドリゲスだ。
「ソフトバンクとの日本シリーズで、巨人は中継ぎ陣の脆弱さが明らかになりました。第1戦はリリーフ3人中2人、第2戦は3人全員が失点。第3戦では、新人の戸郷翔征が4回に4失点し試合をブチ壊しました。4連敗という屈辱の結果を受け、原辰徳監督は中継ぎ陣の強化を来季の最重要課題にあげている。ロドリゲスは防御率1.64で、バツグンの安定感を見せています。原監督としては、ノドから手が出るほど欲しい存在です」(スポーツ紙担当記者)
原監督にとって圧巻だったのが、9月に行われた中日戦。ロドリゲスは8回にマウンドに上がると、150kmを超える速球で巨人の打者を3者連続見逃し三振にしとめたのだ。
「中日は複数年契約と年俸の大幅アップ(今季推定7000万円)を提示し残留要請していますが、巨人はそれを上回る金額を用意するでしょう」(前出・記者)
原監督は“大補強による戦力アップ”がモットーで、育成で弱点を補おうという考えはないらしい。リーグ優勝を決めた直後にNHKに出演。「(選手を)育てるというような義務感などまったくないですね」と語ったのだ。
「昨オフに3度目の就任が決まり、原監督がまっ先に動いたのが他球団の有力選手の獲得です。原監督は球団から全権委任されているのですが、自分の目にかなった選手をピックアップするため、どうしても同じリーグやWBCなどで一緒に戦ったプレイヤーが多くなる。作年、広島から獲得した丸が大活躍し、周囲は原監督の“眼力”を褒めたたえています。丸の成功のおかげで、原監督は大補強の姿勢をさらに強めるでしょう」(巨人球団関係者)
もはや恒例となりつつある巨人の強奪。だが巨人の大補強は、“セの弱体化”を招く諸刃の剣になりかねない。中日で監督経験のある山田久志氏が語る。
「完全にマネーゲームです。巨人は自分の弱点を補うというより、ライバルチームの戦力を削ぐことが目的の一つになっているように見えます。有力選手を集められれば巨人はさらに強くなるでしょうが、他チームの競争力は落ちる。ようやく一流打者に成長した丸を獲られた広島など、たまったもんじゃない。巨人との戦力に大きな格差が生じ、リーグ全体の劣化になりかねません。対照的にパ・リーグの各チームは、補強もしますが育成もしっかりしています。セに比べ戦力が拮抗しているので、各チームに競争力がありリーグ全体のレベルが高められている。最近、交流戦や日本シリーズで圧倒的にパが優勢なのは、おカネにものを言わせ選手をかき集める巨人の体質にも一因があると思います」
巨人は美馬学(楽天)、益田直也(ロッテ)などFA選手の調査にも乗り出している。
- 写真:時事通信社