ラグビーW杯 エディHCに見い出された指令塔、ファレルの悲願

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イングランドのCTBファレルは、同国のレジェンド、ウィルキンソン氏も「必ず私を超える」とうなるイケメン指令塔(写真:アフロ)

日本代表の躍進で盛り上がりを見せたラグビーワールドカップ(W杯)も、11月2日の決勝戦で幕を閉じる。ファイナルの舞台に立つのは、2003年大会以来2度目の優勝を目指すイングランド(世界ランク1位)と、3度目の優勝を狙う南アフリカ(同2位)だ。

元日本代表指揮官エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が率いるイングランドは準決勝で3連覇を狙っていた王者・ニュージーランドを19-7で撃破し、4度目の決勝に駒を進めた。

そんな「ラグビーの母国」を引っ張るキャプテンは、28歳ですでに78キャップを誇るイケメンCTBのオーウェン・ファレルだ。31日に記者会見に出席したファレルはこう明かす。

毎週、ビルドアップしてきました。今は穏やかでリラックスした良い気分です。フィールド上での準備は完了しました。今からメンタルのビルドアップができると確信しています。南アフリカ代表WTBコルビが脅威なのは誰の目にも明らか。彼にボールを渡してしまったらトライを決めてしまうでしょう。気をつけないといけません。さらにFBルルーやSHデクラークなど、加えてフィジカルが強く危険な選手もいます。大事なのは私たち全員が試合に入り込んで、南アフリカにボールを持たせないように働くことです」

ファレルは、準決勝でオールブラックスのハカにV字フォーメーションで対抗し、不敵な笑みを見せたことでも大きな話題を呼んだ。

「ただ立ったまま彼らを見るのは嫌だった。敬意を払うべく一定の距離は保ちたかったが、ただ単に直線に並んで見ているのは嫌だった」

ジョーンズHCはファレルのことを「ラグビーボールを持って生まれてきた」と評し、イングランドのレジェンド、ジョニー・ウィルキンソンも「必ず僕を越えていく」と評価しているように、パス、ラン、キックのすべてを兼ね備えた司令塔で、メンタルも強い。

実父はリーグ(13人制)とユニオン(15人制)の両方の元イングランド代表で、今回のW杯ではアイルランドのコーチを務め、次の指揮官となるアンディだ。ファレルはリーグラグビーが盛んなマンチェスターのウィガンに生まれ、14歳の時に父が強豪サラセンズと契約したことでファレル自身も15人制ラグビーに転向した。

普段はSOとしてプレーすることがほとんどだが、イングランド代表においては、戦術的にジョージ・フォードが10番、ファレルが12番でプレーする。フォードもファレル同様にリーグラグビー出身で、同じウィガンでプレーし、父がコーチと共通点も多い。中高生時代はファレルが年下のフォードによくフランス語の宿題をやらせていたという間柄で、ユース世代からともにプレーしてきた幼なじみだ。

2008年10月5日、ファレルは17歳11日でプロ最年少デビュー(当時)を果たした。この時、当時33歳の父アンディは、元日本代表コーチで現イングランド代表FWコーチのスティーブ・ボーズウィックとともにチームの共同キャプテンを務め、父とも一緒にもプレーした。何より、当時、サラセンズ を指揮していたのが他ならぬジョーンズHCだった。

ファレルは、2012年オールブラックス戦に勝利に貢献し世界最優秀選手賞にノミネートされた。サラセンズ では2014–15シーズンはプレミアシップの決勝でマン・オブ・ザ・マッチの活躍を見せて優勝した。

またファレルはチャリティにも積極的であり、プレースキックを決めると左右の人差し指をクロスする「JJポーズ」には、深い意味がある。2014年から、父アンディ・ファレルのリーグラグビー時代のチームメイトの息子、JJことジャック・ジョンソンが筋ジストロフィーで闘病中であり、この難病治療への基金(ジョイニング・ジャック)を呼びかけ、関心を持ってもらうためなのだ。

11年前、ファレルが17歳の時からエディ・ジョーンズヘッドコーチ(手前)に才能を認められてきた(写真:アフロ)

2015年、母国で開催されたワールドカップに、当時はイングランド代表のコーチだった父アンディとともに出場した。だが、予選プールのウェールズ戦にSOとして先発し、キック7本を全て成功させながら敗れ、オーストラリア戦では試合終盤にシンビン(10分間の退場)となって13-33で連敗。イングランドは開催国ながら史上初めて決勝トーナメントに進めなかったという屈辱を味わった。

2016年、ジョーンズHCがイングランドの指揮官に就任すると、ファレルはすぐにリーダーのひとりである副キャプテンに任命された。2016年のシックスネーションズ(欧州6カ国対抗)の全勝優勝、同年6月のオーストラリアツアーで3連勝とすぐに勢いを取り戻し、その中心にいつもファレルはいた。

ジョーンズHCは17歳の時から知る指令塔に成長を感じている。

「オーウェンはラグビーの試合でいかに勝つかをより深く理解するようになった。試合を読む能力が優れている。彼は昔からいつもフィジカルで、大胆不敵な選手だった。そこは変わらない部分もあるが、落ち着いて決断できるようになった」

そして2018年、ジョーンズHCは日本代表時代に廣瀬俊朗からリーチ マイケルにキャプテンを変えたとき同様、「キャプテンは80分間試合に出ている選手」という理由で、ファレルはHOディラン・ハートリーと共同キャプテンになり、今年から単独のキャプテンに就任。自身2度目のW杯では、一度も負けることなく決勝の舞台まで上がってきた。

ジョーンズHCは世界的名選手を引き合いに出して「世界の偉大な司令塔たちは揺るがない。ダン・カーターやジョニー・ウィルキンソンがグラウンドで冷や汗をかいているのを見たことがあるか?」と称えれば、No.8ビリー・ヴニポラは「ファズ(ファレルの愛称)がすごいのは、ゲーム中の冷静さだ。彼が叫んでいるのはレフリーのマイクからいつも聞こえるかもしれないが、プレーが中断すると彼は別人になる。彼は周りの選手を落ち着かせる」と絶大な信頼を寄せている。ファレルが言う。

「感情はゲームにとって重要だが、使い方はもっと重要だ。僕は感情に支配されたくない」

過去8大会で優勝チームのキャプテンは、すべて背番号は一桁の選手である。「今までの準備が自信になっている。リラックスしていれば冷静な判断ができる」と意気込むファレルは、11月2日、インサイドCTBのキャプテンとして初めてウェブ・エリスカップを掲げることができるか。

  • 取材・文斉藤健仁

    1975年生まれ。ラグビー、サッカーを中心に、雑誌やWEBで取材、執筆するスポーツライター。「DAZN」のラグビー中継の解説も務める。W杯は2019年大会まで5大会連続現地で取材。エディ・ジョーンズ監督率いた前回の日本代表戦は全57試合を取材した。近著に『ラグビー語辞典』(誠文堂新光社)、『ラグビー観戦入門』(海竜社)がある。自身も高校時代、タックルが得意なFBとしてプレー

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