巨人・阿部二軍監督 訓示に猛練習も“課題山積みで寝るヒマなし”
巨人の二軍監督に就任した阿部慎之助が精力的に動いている。練習前には訓示をたれ若手打者にはみずからトス。順調なスタートを切ったが今後は課題山積みの茨の道を歩くことになりそうだ
「考える力をつけよう! なんでキミたちはここ(二軍)にいるのか。一軍で活躍するためには、どうしたら良いのか。考える力をつけ、それを行動に移せるかがカギだ!」
11月1日、巨人の二、三軍の選手が集まったジャイアンツ球場(神奈川県川崎市)に若き指揮官の声が響く。今季限りで引退した二軍監督・阿部慎之助(40)が、新体制でスタートした秋季練習の冒頭で訓示をたれたのだ。
朝から休むヒマはない。午前中は「選手一人ひとりの能力や性格を把握できるように」と、コーチ陣も含めみっちりミーティング。午後からはグラウンドに姿を現し、3時間以上にわたり精力的に動き回った。
「阿部監督はヤル気マンマンですよ。選手時代は黒いソックスを見せるオールドスタイルでしたが、気分を一新するためロングパンツに変更。ブルペンで投手陣をチェックし、打撃練習ではみずからノックを打つ熱の入れようです」(スポーツ紙記者)
“ターゲット”となったのが、1年目の育成選手・黒田響生(19)だ。「いい選手と聞いていたから」と、身振り手振りを交え指導。休む間を与えず50球連続でみずからトスを投げると、バットを振り切った状態で止まることを命じた。
「30秒そのまま! あと3cm重心を下げろ!」
太モモをブルブルと震わせ静止する黒田。30秒経つと「あ~~~ヤバい!」と叫んで、その場に崩れ落ちた。
「阿部監督は、こう言って笑っています。『これぐらいハードな練習が必要なんだと、わかってもらいたかった』と。一軍と二軍の違いはありますが、同じく現役引退直後に監督になった高橋由伸さんを意識しているようです。由伸さんは選手とのコミュニケーションをコーチに任せていたため、自分の意思をうまくナインに伝えられなかった。阿部監督は反面教師にして、なるべく選手と直接話をしようとしているようです」(同前)
新監督として順調なスタートを切ったようだが、今後は頭を悩ませる場面も多くなりそうだ。プロ野球で一軍と二軍の監督経験がある、デーブ大久保氏が語る。
「最初のうちは、自分のしたいコトを自由にヤレばいいんです。そうするうちに、『この指導は間違っているな』『あの選手にはこう声をかければいいんだな』というのがわかってきます。一つだけ重要なのは、一軍の原辰徳監督がどんな野球をしたいのかを理解しておくコト。例えば原さんがバントや走塁などを重視しているのに、打者に長打ばかり求めていては意味がありません。二軍の目的は、一軍で求められる人材の育成です。二軍監督は本当に忙しい。ボクの場合、朝7時にはグラウンドに行き練習に来た選手の表情を見て調子をうかがいます。午前中はミーティングで午後は練習。一軍の試合結果を見て、夜中までコーチ陣と話し合い……。『この選手を上げてくれ』と、いつ一軍から連絡が入るかわからないので風呂に入る時以外は常に携帯電話を近くに置いていました。選手全員の能力の底上げなど、課題は山ほどあり寝るヒマもない。慎之助が重圧を感じるのは、これからです」
ファームとはいえ、“球界の盟主”ジャイアンツのリーダーに抜擢された阿部。現役引退後の“第二の戦い”は、早くも始まっている。
写真:時事通信社