阪神の四球王・藤浪晋太郎 山本昌が伝授した「復活への3条件」
“四球病”が治らない阪神の藤浪晋太郎。秋季キャンプでは藁にもすがるような気持ちで山本昌・臨時コーチの指導を受けている。山本氏が伝授した復活への“3つの条件”とは
「グッチェ!」
「グッチェ!」
高知県安芸市で行われている阪神の秋季キャンプ。19年シーズンは1試合のみの登板で初の未勝利に終わった藤浪晋太郎(25)が、ブルペンで1球1球声をあげながら投げ込んでいる。「グッチェ」とは、グッドチェンジアップのこと。キャンプ初日から連日、捕手を座らせ70球ほど投げ続けている。その大半がチェンジアップなのだ。
「投手陣はブルペン投球が免除されているにもかかわらず、藤浪は志願して投げています。10月26日のフェニックスリーグ(韓国ハンファ戦)で9四球を出すなど、近年は制球難が続いている。’16年以降は成績が急降下し、本人も相当な危機感を持っているのでしょう。今キャンプではチェンジアップを中心に、見違えるように安定したボールを投げていますよ」(スポーツ紙記者)
藤浪が変わった要因は、山本昌・臨時コーチの存在だ。
「これまでの藤浪は、周囲の意見を聞こうとしませんでした。’15年の春のキャンプで臨時コーチを務めた江夏豊氏が、『(投手陣の中で)藤浪だけがわかってくれなかった』とボヤいたほどです。しかし今キャンプでは『質問していいですか』と、自ら昌さんに歩み寄っている。藤浪自身の危機感に加え、福原忍・投手コーチから『考えこむな。積極的にアドバイスを求めろ』と強く言われたのも大きかったと思います」(同前)
ほぼ付きっきりで指導する山本氏が、藤浪に伝授した“復活の条件”は3つだ。
チェンジアップを習得し手首を立てろ!
「右打者の内角にチェンジアップを投げてみて。そうすれば手首が立つ。コントロールも安定するハズだ」
山本氏が藤浪に勧めたのが、チェンジアップの習得だ。藤浪はリリース時に手首が地面と平行になり、抜け球やボールを引っかけることが多い。チェンジアップは手首を立てないと投げられず、投球法を覚えれば制球力のアップにつながるという。藤浪が連日ブルペンに立つのは、「グッチェ」を身体にしみこませるためなのだ。
イメージはバレーボールのアタック!
近年、藤浪のフォームが安定していない。山本氏はこうアドバイスした。
「バレーボールのアタックのように腕を振って。身体の最も近いところに、腕が通るようなイメージで。打撃でも、バットが外回りするとボールに力が伝わらないでしょう。投球も同じ。身体の近くで回すことで、腕がブレずボールをコントロールしやすくなるんだ」
藤浪は「斬新な教えで面白い」とコメントしている。
登板前のルーティンをもうけろ!
「気持ちを落ち着かせるために、登板前にルーティンを持ったらどうかな」
宿舎で夕飯をとっている際、藤浪は山本氏からこう助言された。プロ通算219勝をあげながら、山本氏は極度のあがり性だった。気持ちを抑えるため、球場へは必ず同じルートで行くなど決めていたという。山本氏は藤浪の制球が悪化した理由の一つに、精神面の不安定さがあると考えたのだ。藤浪は報道陣に、こう話している。
「高校(大阪桐蔭)時代は、ユニフォームの下に赤いスパッツをはくなど決めていたことがありました。でもプロでは(ルーティンを)作っていませんでした。高校の時を思い出し、やってみようかな」
以前から「藤浪には個人コーチをつけるべき」と提案してきた、阪神OBの広沢克実氏が語る。
「ゴルファーにもテニスプレイヤーにもパーソナルのコーチがいるのに、プロ野球選手を指導するのはチームの首脳陣ばかりです。選手に選ぶ権利がない。もし本当に昌さんのアドバイスが藤浪に合うのなら、今後も個人コーチとして契約してはどうでしょうか。藤浪は制球力が定まらない理由を、以前から『どうしてかわからない』と言っていました。昌さんがコントロールが悪い原因やメカニズムをしっかり説明できれば、おのずと解決策が見つかるハズ。そうすれば、以前のように活躍できる可能性は十分あります」
山本氏のアドバイスで、藤浪が復活の手がかかりを掴んだことは間違いない。
写真:時事通信社