オリックス・吉田正尚 ホームラン生む頭脳プレーと師・室伏広治 | FRIDAYデジタル

オリックス・吉田正尚 ホームラン生む頭脳プレーと師・室伏広治

身長173cmながら侍ジャパンの中軸を担う小柄な大砲が独自の打撃理論を語り尽くす

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自主トレ仲間の柳田悠岐も吉田正尚の筋力には脱帽。現在は懸垂など自分の体重を使った鍛錬で強くしなやかな身体の維持を心掛けている
自主トレ仲間の柳田悠岐も吉田正尚の筋力には脱帽。現在は懸垂など自分の体重を使った鍛錬で強くしなやかな身体の維持を心掛けている

「皆さん、フルスイングだ、マン振りだって言われますけど、力を入れているのはインパクトの瞬間だけ。僕が大事にしているのは、ボールに対してどうアプローチしていくか。いかにコンタクト率を上げるか、です」

身長173㎝と小柄ながら、豪快なスイングで快打を連発。打率.322、29本塁打と好成績を収めて、吉田正尚(まさたか)(26)は侍ジャパンに選出された。親善試合以外ではこれが初のトップチームとなるが、稲葉篤紀監督はクリーンナップに抜擢。『プレミア12』開幕直前のカナダとのテストマッチでは、あわや本塁打というフェンス直撃のタイムリーをカッ飛ばした。

世界にパワーを見せつけた吉田だが、冒頭のように「大事なのは準備。これは絶対です」と彼は言う。

「ピッチャーの投げ方や右左、角度によって適切なスイングは違う。たとえば『このピッチャーでこのカウントだったら真っ直(す)ぐを8、スライダー系を2で待つ』とか、『落ちる系がウイニングショットのピッチャーだから、追い込まれたら落ちる系を7、内外角にズバッと決めにくる真っ直ぐを3で待つ』などとネクストバッターズサークルでイメージして、最もコンタクトできる確率の高いスイングを選ぶ。上から叩き潰(つぶ)すのか、アッパー気味にすくい上げるのか、レベルスイングで対応するのか――考えて考え抜いて打席に入ったら、あとはタイミングをしっかり取ることだけを意識する。シンプルに、後悔のないスイングをすることを心がける。一球一球に最大限集中する」

豪快なイメージと対照的な緻密な戦略。意外だと告げると吉田は白い歯を見せた。

「感覚でプレーしている方って、長く現役をやれないんじゃないですかね」

「頭でプレーすること」の大切さに気付いたのは中学時代だという。

「もともとキャッチャーをやっていたからか、僕は小さいころからテレビで野球を観ていても『次はここに投げるんじゃないか』と常に配球を予測していた。それは現在も変わらない」

後悔しない、一球一球に集中する――吉田の野球観にはケガに苦しめられた日々が反映されている。プロ1年目、開幕一軍の切符をつかみ、初戦から6試合連続安打をマークするも腰椎(ようつい)を痛めて二軍落ち。翌年も腰痛で登録抹消された。2年連続で二ケタ本塁打を放ちながら、60試合ちょっとの出場にとどまった。

「とくに2回目がキツかったですね。『またか……』と落ち込みました。朝から腰が痛くて憂鬱(ゆううつ)で、一日がとても長く感じて。『明日、治っていてくれ』と祈ってから寝て、翌朝落胆する。その繰り返しでした。あの苦しい時間を身体が覚えているから、一球たりとも疎かにしたくない。一球一球言い訳しない、後悔しない野球人生を送ろうと思うようになった」

故障に苦しむ吉田がハンマー投げの五輪金メダリスト、室伏広治(45)に手紙を書いて教えを乞うたのは有名な話だ。いまも師の言葉が頭に残っている。

「プレーも大事だけど、ケアも同じくらい大事――当たり前なんですけど、これがなかなかできないんです。ケガも経験というか、プロ1年目にケガをした僕だから、若くしてケアの大切さに気づけたのだと思います。『年をとってからじゃ遅いぞ』という言葉が沁みました」

ホームゲームの際はしっかりトレーニングをする一方、遠征時は思い切って休むなどメリハリをつけた。その甲斐あって’18年から2年連続でフル出場。吉田は「自信になりました」と腕を撫(ぶ)す。

「まだまだいけますね。僕の中でベストスイングはホームランになるスイング。相手投手がタイミングをズラそうと工夫するなかで、いかにホームランのスイングができるか。基本はセンターめがけて大飛球をカッ飛ばすこと。僕の中では、やっぱり野球イコール、ホームランなんですよ。ダイヤモンドをまわるあの時間は打った者だけに与えられる特別なもの」

迷いなき魂のスイングが、侍ジャパンの大きな武器となった。

特徴的な大きなフォロースルー。パワーと相手投手に合わせて数種のスイングを使いわける巧さを併せ持つ
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スクワットで鍛えた太もも回りは64㎝!現在は筋肥大よりバランスを整えるトレーニングが中心
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本誌未掲載カット オリックス・吉田正尚 侍ジャパンの新主砲をスペシャルインタビュー
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『FRIDAY』2019年11月22日号より

  • 撮影ジジ

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