ラグビープロ化へ 川淵三郎氏が明かした「清宮くんに伝えたこと」 | FRIDAYデジタル

ラグビープロ化へ 川淵三郎氏が明かした「清宮くんに伝えたこと」

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川淵三郎氏は、ラグビー界のプロ化について熱弁をふるった
川淵三郎氏は、ラグビー界のプロ化について熱弁をふるった

日本スポーツ界における「プロリーグ化」のパイオニア、日本トップリーグ機構会長の川淵三郎氏が2021年にプロ化を目指す、日本ラグビーフットボール協会・清宮克幸副会長(52)を激励した。「高校でラグビー部があれば入ろうと思っていた」と語るほどの愛好家が、ワールドカップ(W杯)の感想から、7月に清宮副会長の表敬訪問を受けたときのことを余すことなく語った。

「ラグビーのW杯が日本で開催されてよかったなと。日本ラグビー界にとってもこれほどの大会はなかった。素直にそう思うよ。日本人がこれほどまでにラグビーを知ったのは初めてで、多くの人が耳にしたことがないようなラグビー用語を知った。あれだけ激しいぶつかりあいは他のボールゲームでは絶対見られないからね」

ただし決勝で敗れたイングランド勢がメダルをすぐに外した態度には怒りのツィートを発信している。

「僕はいつも言うんだ。グッドルーザー(good loser)【負けても潔い人】であれと。それがスポーツマンとしてなくてはいけない。ヘッドコーチ(エディ・ジョーンズ)はすぐにポケットに入れた。決勝をスタンドで観戦していて、それを見てツィートするか、しないか、帰る途中にずっと考えて……。やっぱり我慢ならないなって。きっと反響が大きいだろうと思ったら、案の定そうだった(苦笑)」

日本ラグビー協会の清宮副会長はW杯開幕前の7月19日、川淵氏のもとを表敬訪問している。

「日本ラグビーのトップリーグを『プロ化』すると聞いて、『やるんだったら、W杯、東京五輪の次の年だな』って思っていたら、彼の考えも全く同じだった。そこで伝えたことは、プロ化の成功の鍵はホームスタジアムとホームタウンの実現だと話した。特定の企業に頼るのではなく、地域社会に溶け込み、愛されるクラブを目指して、そこに地域の人々が集うようなスタジアムを作るほうが、長い目で見てプラスになるからね。

実はJリーグがはじまる時、三菱自動車サッカー部(J1浦和の前身)が江戸川区に対し、江戸川陸上競技場をホームスタジアムにしたいので、1万5000席の観客席を作って欲しいと交渉したんだけど、なかなか認めてもらえなかった。片や浦和の青年会議所の方が僕のところにきて『浦和にぜひプロサッカーチームを招致したい』と言ってきたんだ。でも当時、浦和を拠点にしようとしたのは三菱自動車ではなくホンダ(本田技研)だった。ホンダは和光市に研究所があって、浦和でプロ化を検討していた。だけど、会社のコンセプトに合わないと、結局Jリーグ入りをやめてしまった。そこで三菱自動車は、江戸川区をホームタウンすることを諦めて浦和に行くことにした。それで今の『浦和レッズ』が誕生したわけだ。だからスタジアムさえ確保できれば、ホームタウンが後回しになっても成功できる。これからプロ化するラグビー界にとっても、とてもいいサンプルだと思う」

ラグビーW杯期間中の9月26日、博多で行われたカナダ-イタリア戦。芝生のめくれ方は川淵三郎氏の想定を超えていた
ラグビーW杯期間中の9月26日、博多で行われたカナダ-イタリア戦。芝生のめくれ方は川淵三郎氏の想定を超えていた

ただ、そのホームスタジアムの確保は難航が予想されている。今回、ラグビーW杯ではJリーグのホームスタジアムを使用した。ラグビー協会では天然芝と人工芝をブレンドしたハイブリット型の芝を日本大会で初めて導入したが、川淵氏の目から見ても、芝の傷み方は想定外だった。

「今更言っても仕方がないんだけど、ラグビーW杯の日本開催が決まった後、なぜ自前のラグビー専用スタジアムを釜石以外に全国に作らなかったのか。それはラグビー協会の怠慢でしょう。5年あればできたはずだからね。
僕が清宮君にアイデアとして出すならば、例えば東京なら駒沢陸上競技場が空いている。そうやってラグビークラブがある都道府県をリストアップして、空いている会場をまずは改修してスタートさせ、将来は自前のスタジアムを作る。Jリーグと同じ手法でやった方がいいと、僕は思っているんだ」

プロ化成功には運営費は不可欠だ。ラグビーチームの年間運営費は15億円といわれている。ちなみに10クラブでスタートしたJリーグではヴェルディ川崎(当時。現J2東京ヴェルディ)が最も高くて年間8~9億、横浜マリノス(現J1横浜F・マリノス)も7~8億円で、10億円を突破したクラブはひとつもなかった。

「置かれている状況はラグビーもJリーグも似ている。ただラグビーの場合、これまで一流外国人の年俸は1億円台だったそうだ。でもプロ化になれば、この年俸があがるのは間違いない。そうなると運営費は15億から最低でも年間20億円が必要になる。清宮君はラグビーは富裕層の観客が多いから心配していないと話していたけれども……。彼が言うことでなるほどなと思ったのは、世界一流の選手を日本に呼んできて、世界に冠たるリーグになりますよ、という構想だね。僕個人としては、多くの一流外国人選手が来た場合は、戦力の均衡化を図る調整をどうするかを考えるけど、いずれにせよ成功のポイントになると思う」

川淵氏は「独裁者」といわれるくらいのリーダーシップを発揮してJリーグとBリーグを成功に導いたが支えたスタッフ陣の意見をまず聞くリーダーでもある。

「僕はよく独裁者といわれる(笑)。全部自分が決めたように思われているけど、それは違う。各委員会の意見を尊重した。清宮君も強いマインドを持っているから、リーダーシップをとってやっていける。実はJリーグを作るときに行政をいろいろ回り、様々なスポーツ団体も回った。プロの興行として成り立っていた相撲協会の出羽の海理事長(当時)さんとは仲良くさせていただいていて、『大丈夫だ』というお墨付きの言葉をもらったことがどれだけ支えになったか。ラグビーのプロ化を実現できるのは、本当に彼(清宮氏)しかいないと思う。こういう大事業に挑める人はそうはいないからね」

プロ化を推し進める日本ラグビーフットボール協会の清宮克幸副会長とバスケットBリーグ創設にも尽力した境田正樹氏(右)
プロ化を推し進める日本ラグビーフットボール協会の清宮克幸副会長とバスケットBリーグ創設にも尽力した境田正樹氏(右)

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