血液クレンジング、水素水など「疑似科学商品」に騙されないために

インチキを見抜く方法をパーフェクトに解説

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自己血にオゾンガスを混ぜて再び体内に戻す「血液クレンジング」は数年前から密かなブームに

科学的根拠がないにもかかわらず、あたかも科学的に正しいかのようにと思わせる「疑似科学」。なかでも、この1ヵ月ほど話題となっているのが「血液クレンジング」だ。11月6日には衆院厚生労働委員会でもそのリスクについての議論がなされた。

「血液クレンジング」とは、自分の血液を抜き、そこにオゾンガスを混合した後、体内に戻すという施術。「日本酸化療法医学会」という団体の医師などが中心となって提唱しており、同会ホームページでは〈活性酸素種〉が発生し、〈それが赤血球、白血球、血小板に働きます〉と説明されている。アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、頸椎ねんざから進行性肺がんにまで効果があるとしているのだ。明治大学・石川幹人(まさと)大学院長と共同で『疑似科学とされるものの科学性評定サイト』を運営する、明治大学科学コミュニケーション研究所の山本輝太郎研究員が言う。

「私が初めて血液クレンジングという言葉を聞いたのは5年前。私たちが開設しているサイトに対して『どういう内容なのかを調べてほしい』と連絡が来たのです。当時はあまりその名も知られていませんでした。その後、血液クレンジングのエビデンス(証拠)とされる論文を国内外問わず可能な限り入手して検証しましたが、いずれの論文でも『作用機序はわかっていない』と書かれています。これは平たく言えば、効果を及ぼすメカニズムはわからないということ。しかし理論以上に問題だったのはデータのほうです。ほとんどが動物実験や血液クレンジングを受けた人の感想を並べているだけでした」

なかには論文の体を成していたものが4本あったが、その4本も実験方法に致命的な欠陥があったという。

「血液クレンジングは、注射針を刺して血液を抜き、オゾンを混ぜて体内に戻すというものです。その効果をきちんと見定めようとするのであれば、血液クレンジングをした人と、抜いた血液にオゾンを混ぜずに再び体内に戻した人を比べてみないといけません。ところが4本の論文では、いずれも偽薬被験者には注射をせず、著しく異なる条件で両者を比較していた。注射針を刺された患者には『治療されている』という思い込み、いわゆるプラセボ効果が発生するということは、医療関係者であれば誰でも知っている常識です。注射針を刺した人と、刺さなかった人では違いが出て当然で、もちろんそこから導き出されたデータに科学的根拠はありません」(山本氏)

鮮やかな血で信用させる

血液クレンジングは、保険適用される標準治療としては認められておらず、自由診療として’15年頃から急増してきた。人気の秘密は、血液がオゾンを混合した後、鮮やかな赤色になることだろう。見た目にも血液がクレンジング=洗浄されているように見える。『暮らしのなかのニセ科学』などの著者で、東京大学講師の左巻健男氏は言う。

「血液は身体中の細胞に酸素と栄養分を運びます。赤血球の中にあるヘモグロビンが、肺で酸素を結びつけて血が赤くなり(=動脈血)、身体中を駆け巡って細胞に酸素を放出すると赤みが減って(=静脈血)、また肺に戻ってくるのです。

血液クレンジングは、静脈から血液を抜き、酸素(O2)の同素体で、酸素より酸化力のあるオゾン(O3)を入れて、身体に戻すというもの。

要するに血液クレンジングは、私たちの体内で肺が行っていることを、わざわざ注射針を入れて身体の外でやっているだけで、血液が赤くなるのはあたりまえです。それを、あたかも血液がキレイになっているかのように比較画像を出して、人々をたぶらかしていた」

〝デトックス〟という言葉も近年、よく聞くようになった。体にため込んだ毒素を出して健康になる、というのが謳い文句で、さまざまな療法や機器、サプリなどが販売されている。左巻氏が続ける。

「デトックスバスという機器があります。足湯のような感じで機器の中のお湯に足を入れてスイッチを入れると、汚いドロドロした物質が浮き上がってくる。販売業者は『体内に蓄積された毒素を足裏から排出しているのです』と説明しています。

ですがこれは、一言で言うと、食塩水の中で電極の鉄が溶け出す現象です。スイッチを入れて電圧を上げると、機器に内蔵されている電極が溶け出て水酸化鉄(Ⅲ)などができる。これが販売業者が言うところの毒素=ドロドロの正体であり、毒素などではありません。しかし疑似科学では見た目のインパクトで信じてしまう人が多い。そういうところも血液クレンジングと似ています」

毒にも薬にもならない

血液クレンジングやデトックスバス、健康サプリなどが話題になるのには、芸能人や有名人がSNSなどで体験談を披露していることが影響している。

「藤原紀香さんが結婚披露宴の引き出物として水素水生成器を配って話題になりました。疑似科学の中でも、水は基本的に無味無臭ですし、毒にも薬にもならない製品が多い。高い金を払うという代償はあるけれど、健康被害が出ないので絶えることがないのです」(左巻氏)

一般人では新しいものに対する情報感度が高く、海外から入ってきた先端科学などといった言葉に興味を持つ、今風に言えば、〝意識高い系〟がターゲットとして狙われることが多いのだ。

「’90年代頃までの疑似科学は、がん患者をはじめとする重病者や、慢性疾患などで本当に困っていて、藁にもすがりたい人がいろいろ調べた結果たどりつく、いわば知る人ぞ知る知識というものでした。

’90~’00年代には、水によい言葉をかけると綺麗な結晶ができて、罵声を浴びせると崩れた結晶になるなどという『水からの伝言』などが、道徳的観点から学校教育に取り込まれてしまったこともありました。ですが、一般の人々に科学として見られていたかといえば疑問が残ります。

それが’10年代になると、疑似科学が普通の人にとっても身近なものになってきました。代表的なものは健康食品、サプリメントです。’15年に機能性表示食品制度がスタートしてからは爆発的に普及し、日常的に商品を目にするようになりました。

日本で最初に健康食品の基準というものが注目されたのは特定保健用食品(トクホ)でした。しかしトクホは基準が厳しく、多くの企業にとってはハードルが高い。そこで機能性表示食品が生まれ、科学的根拠のハードルがかなり下げられました。ちょっとしたデータがあれば機能性表示食品と謳えるようになったのです。今や2000を超える届け出がなされていて、ドラッグストアの店内を一周するだけでいくつもの機能性表示食品が陳列されていることが分かります」(前出・山本氏)

次々と登場する新しい「科学的」なるもの。その擬態はますます巧妙を極めるようになっている。

血液クレンジングをSNSに上げた有名人

市川海老蔵は2015年に2度、施術風景をアップ。その後、同療法が問題視されるようになり「勧めたことはありません」と発言

仲里依紗は輸血ボトルが写り込んだ姿で

芸能人が多数通ったことで知られる「グランプロクリニック銀座」がフォローし、血液クレンジングの原理まで細かく記述しているGENKING

『FRIDAY』2019年11月29日号より

Photo Gallary5

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