プレミア12 メキシコの東京五輪出場決定が「歴史的快挙」な理由

初のオリンピック出場を決めたメキシコ野球界の歩み。メキシカン・リーグは日本とも関係が!

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11月17日に東京ドームで行われたプレミア12の3位決定戦、メキシコ対アメリカの試合前セレモニー

第2回プレミア12は、まさに大団円というべき盛り上がりで終了した。日本代表が世界一になった試合では、視聴率は29.6%を記録。ここまで視聴率が上がらず、ラグビーワールドカップなどとの比較で「野球人気の衰え」が懸念されていただけに、関係者は胸をなでおろしただろう。

実は「快挙」は、日本代表だけではなかった。メキシコ代表も同じ17日の昼の試合で、アメリカを破って初のオリンピック出場を決めたのだ。

プレミア12のメキシコ代表と言えば、2015年の第1回プレミア12のことを記憶している人もいるかと思う。

プレミア12は開催前年の12月時点でのWBSC(世界野球ソフトボール連盟)のランキングの上位12ヵ国によって争われる国際大会だ。

第1回、第2回ともにランキング1位は日本。メキシコは2015年は12位だったが、メキシコ野球連盟の内紛が起こって大会10日前に出場辞退を表明、WBSCは急遽13位のパナマに出場を打診したが、あまりにも直前のためパナマは対応できず。
そこでメキシコは急遽選手をかき集めて出場にこぎつけた。主催者のWBSCの関係者はオープニングラウンドの会場である台湾で、メキシコチームが本当に来るのか、やきもきしながら待っていた。まさに寄せ集めのメキシコ代表だったが、オープニングラウンドを勝ち抜き、準決勝まで進出。ここでアメリカに負け、3位決定戦でも日本に敗れたが4位と健闘した。

今大会は、メキシコはWBSCランキングで6位。そしてメキシコはオープニングラウンドのグループAの主催国にもなった。メキシコ、アメリカ、ドミニカ共和国、オランダという組み合わせだったが、自国開催の有利はあるにせよWBC優勝国であるアメリカ、ドミニカ共和国を相手に勝ち抜くのは厳しいかと思われた。

しかし開幕するとメキシコはドミニカ共和国を6-1、アメリカを8-2と連破し早々に勝ち抜けを決めた。さらに、オランダにも10-2で勝ってスーパーラウンドに進出。
そしてスーパーラウンドも日本、韓国には敗れたものの台湾、オーストラリアを破る。3位決定戦では再度アメリカを下し、初のオリンピック出場を決めたのだ。

プレミア12の主催はWBSCであり、MLBは直接関与していないため、40人枠に入る現役メジャーリーガーは出場しない。
しかしアメリカはトッププロスペクト(超有望株)のジョーダン・アデルなど次代を担う若手と、オリックスで活躍するブランドン・ディクソンなど実力者をそろえてきた。

MLBへの選手供給国であるドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコは、40人枠に入らないマイナーリーガーと、MLBを退団したベテラン選手でチームを編成していた。
これに対し、メキシコは国内リーグでプレーする選手が中心だった。

実はアメリカとメキシコの野球界は、微妙な歴史を刻んできた。

メキシコの国内リーグであるメキシカン・リーグは1925年に発足。第二次世界大戦後に発展し、一時はMLBから選手を引き抜くなどライバル関係にあった。MLBはメキシカン・リーグへの人材流出を防ぐために様々な対抗策を打った。
しかし、MLBが東海岸に進出するとともにメキシカン・リーグは衰退し、MLBの傘下に入った。今もメキシカン・リーグは、メキシコ国内のトップリーグだが、同時にMLB傘下のマイナー・リーグであり、MLBのすぐ下のAAAという扱いになっている。

こういうケースはメキシカン・リーグだけだ。
メキシカン・リーグは南北2リーグ計16球団でペナントレースを争っている。高度な情報戦となっているMLBとは異なり、メキシカン・リーグは、打つ、投げる、走るの力勝負が多い。またMLBをリタイアして参加する選手も多く年齢は高い。

NPBからも選手が参加している。今季は元DeNAの荒波翔がモンテレイ、同じく元DeNAの久保康友がレオン、元楽天の横山貴明がメキシコシティでプレーした。またNPBでプレーした外国人選手もメキシカン・リーグで数多くプレーしている。

球団の経営基盤は弱く、給料の遅配や突然の解雇などもあるが、メキシカン・リーグは現地野球ファンの熱狂的な支持を得ている。
メキシコは、ドミニカ共和国やベネズエラなどのように「MLBの人材供給源」になることなく、国内リーグを維持してきた。MLB傘下にはなったが、容易に軍門に下らなかったのだ。その歴史からしてもメキシコはアメリカに対してライバル意識を持っているのだ。

17日の3位決定戦では、元中日、オリックスでプレーし、現在はメキシカン・リーグのレオンに在籍するマット・クラークが9回、現オリックスのブランドン・ディクソンから同点ホームランを打った。二人は2016年にはオリックスでチームメイトだった。
さらに、タイブレークとなった延長10回には、今季阪神でプレーしたエフレン・ナバーロが中前に落ちる決勝タイムリーを打った。

観客席からは大歓声が起こった。残留が微妙なナバーロだが「来年も阪神で頑張れ!」という掛け声がかかった。
そして表彰式では、メキシコ代表に惜しみない拍手が贈られた。

メキシカン・リーグの公式サイト、Liga Mexicana de Beisbolでは、東京ドームでの選手の記念写真を大きく載せ、初めてのオリンピック出場を祝福している。

メキシコでは2020年東京オリンピックへの注目度がぐっと上がるはずだ。
日本ではほとんど報道されないが、2019年11月17日は、メキシコ野球界の歴史的な記念日となったのだ。

 

  • 文・撮影広尾 晃(ひろおこう)

    1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイーストプレス)、『球数制限 野球の未来が危ない!』(ビジネス社)など。Number Webでコラム「酒の肴に野球の記録」を執筆、東洋経済オンライン等で執筆活動を展開している。

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