偉業!井上尚弥が「年間最高試合」制し、さらなるビッグマッチ挑戦

ノニト・ドネアの老獪な「目潰し」にも耐え、WBSSで優勝

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11R、井上尚弥は左ボディでドネアからダウンを奪い、3-0の判定勝利。フルラウンド戦い抜いたのは3年半ぶりだ

スピードやパワーに目を奪われがちだが、一度でも井上尚弥(26)と拳(こぶし)を合わせたボクサーたちは、彼の凄さは「目の良さ」にあると言う。動体視力もさることながら、相手がフウッと息を吐いたタイミングなど、一瞬のスキを見逃さない観察眼が群を抜いているというのだ。

世界4団体の中からバンタム級のトップ・オブ・トップスを決めるWBSS決勝で井上と対峙(たいじ)した〝レジェンド〟ノニト・ドネア(36)。老獪(ろうかい)な5階級王者の狙いは、この驚異の「目」潰(つぶ)しにあった。

これまで通り、1Rは相手との距離感、ドネアのパンチが届く距離の測定に費やした井上。だが、2R2分過ぎ、ドネアが牙を剥(む)く。左ボディアッパー、右ストレート、左フック、右フック、そして、タメを作ってからの左フックが井上の右目を破壊したのである。

元WBA世界ジュニアウェルター級1位で、「天才ボクサー」と称された亀田昭雄氏が解説する。

「左フックはドネアが最も得意とするパンチ。タイミング、角度、スピードとも完璧でした。井上には左フックが見えていた。見えていたけど、よけられなかったのです。もし見えていなかったら、倒されていたでしょう」

世界のトップ選手ともなれば、「見えるパンチ」は耐えられる。いかに「見えないパンチ」を打つかが大事。井上はかつて本誌にそう語っていた。自慢の「目」の良さでKOは免(まぬが)れたが、眼窩底骨折により、ドネアが二重に見えるようになった。最大の武器の「目」が奪われたのだ。以後、ドネアが試合の主導権を握るのだが、「ここからの展開に井上の凄みが出ていた」とライターの藤本大和氏が言う。

「井上がボクシング動画を見て世界の強豪から技やコンビネーションを盗んでいたのは有名な話ですが、WBSS決勝という土壇場で井上は’13年のドネアVS.リゴンドー戦を思い出した。右目をカットしたドネアが、グローブで右目を隠し、左目だけで距離を測っていたのを思い出して、咄嗟(とっさ)にマネしたのです」

右目を守るため、そして距離感がなかなかつかめないため、得意の右ストレートが封じられた。井上は後半勝負と覚悟を決め、5回、6回と中盤の数ラウンドを体力の回復、左目での距離感測定に費やした。そして11R、勝負に出る。

強引に距離を詰め、右アッパーで視界を遮(さえぎ)ってから、「見えない左」をボディに叩き込んだのだ。

「最も大きいのはメンタルの成長でしょう。フルラウンド戦って、苦しんで傷ついた末に勝利を得た。自分の限界がまだ先にあることを身体で理解できた。劣勢のとき、ピンチのときにどう対処すればいいか。ゲームプランが狂っても慌てず、焦らず、自分を保つことを体験的に学習しました。これは必ず井上の肥やしになる。ボクサーとしてさらに一皮剥けたのは間違いない」(前出・亀田氏)

世界中で「年間最高試合」の声が上がる一戦を手土産にモンスターは渡米。さらなるビッグマッチに挑む。

『FRIDAY』2019年11月29日号より

  • 写真AFP/アフロ

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