それでも使う?「超音波式加湿器」のヤバすぎる微生物汚染の実態

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使用中の「超音波式加湿器」の半数以上から“加湿器病”発症レベルの雑菌が放出されていた

冬の必需品、加湿器。最近、問題になっているのが、加湿器からばらまかれる菌が原因の“加湿器病”。細菌やカビなどの微生物を長期にわたって吸い込んだことによっておこる、アレルギー性の肺疾患「過敏性肺臓炎」だ。咳や発熱、全身の倦怠感などの症状が現れ、重症化すると呼吸困難に陥ることもあるという。

昨年は、加湿器が原因の死亡例もニュースになった。注意が必要なのが、安価で多く普及している「超音波式」だ。その恐ろしい実態を識者に聞く。 

超音波式加湿器は「腐敗した水を入れた霧吹きで、部屋全体にスプレーをしているようなもの」と家電ライターの藤山哲人さん

雑菌をそのまま室内に放出する「超音波式加湿器」

まず、加湿器を選ぶうえで知っておきたいのが、その仕組み。加湿器が、空気中に水分を放出させる仕組みは、大きく二つに分類される。一つは、水分を“沸騰”や“蒸発”で「気化」させるタイプ、もう一つは、水を細かいミスト(霧)にして室内に放出する「エアゾール〈スプレー〉」タイプ。

「超音波式加湿器」とは、超音波で水を振動させ、細かいミストにして放出する後者のタイプの加湿器だ。

超音波式の加湿器は、貯水タンク内などに繁殖した雑菌をそのまま室内に放出する

2018年1月、大分県の高齢者福祉施設でレジオネラ菌の集団感染で、90代の男性一人が死亡した。調査の結果、感染源は部屋の「超音波式加湿器」だった。

なぜ、「超音波式加湿器」だけが問題視されているかというと、それ以外の方式の加湿器は、たとえ貯水タンク内に雑菌が繁殖したとしても、その雑菌は“放出されない”。それに対して、超音波式は、貯水タンク内やその下にあるミストを発生させる霧化部(振動子)がある水槽に繁殖した菌が室内に“そのまま放出されてしまう”からだ。「腐敗した水を入れた霧吹きで、部屋全体にスプレーをしているようなもの」と考えれば、その怖さがわかるだろう。

しかも、病院内の除菌・殺菌を長年研究している山口東京理科大学薬学部の尾家重治教授によると、超音波式の加湿器は、作動後、霧化部がある水槽の水温が30℃付近に上昇し、雑菌の増殖に適した温度になるという。さらに、超音波の作用で、水道水中の残留塩素が急激に消失するため、雑菌がより繁殖する状況になるのだとか。

昨年の死亡事故を受け、川崎市が市内の高齢者福祉施設の加湿器を調査したところ、23台のうち4台からレジオネラ菌が確認され、そのうち2台が超音波式だった。つまり、その加湿器を使用していた施設の高齢者は、室内にレジオネラ菌がばらまかれている危険な環境の中で生活していたということだ。

日本では規制がないが、アメリカ疾病予防管理センターの病院におけるガイドラインでは、「病室内での超音波式加湿器の使用禁止」を勧告している。

では、家電量販店に並んでいる数々の加湿器。その中で、超音波式の割合はどのくらいなのだろうか? 

「昨年1月の高齢者福祉施設での死亡事故により、加湿器の方式を気にする人が増えました。しかし、正確なデータは分かりませんが、感覚的には、手軽で安い超音波式がシェアの半分以上を占めていると思われます他の加湿器では見えない“ミスト”が超音波式では見えるので、すごく加湿されている感があるのも購入動機となっているのでしょう」(家電ライター藤山哲人氏 以下同)

微生物汚染された「超音波式加湿器」の危険性は、30年前から警告されていた! 

前出の尾家重治教授が、30年前に超音波式加湿器の「霧化部がある水槽」内の雑菌汚染状況について調査したデータがある。学校、家庭、小売店など市中で使われている超音波式加湿器20台を調べたところ、13台は10⁴~10⁵コ/mlレベル、残りの7台は10²~10³コ/mlレベルの細菌汚染だった。10⁴~10⁵コ/mlレベルの菌量とは、「過敏性肺臓炎(加湿器病)」の発現症例で報告されている汚染菌量と同レベル。つまり、調査した超音波式加湿器の半数以上はその可能性があったということだ。 

ちなみに、調査した20台の超音波加湿器の“お手入れ”状況をそれぞれの加湿器を使っている家庭などに聞いたところ、貯水タンクの水の入れ替えは、20台中14台が「毎日」行い、残りの6台は「2~7日ごと」。霧化部がある水槽の洗浄頻度は、「まったく洗浄せず」が16台、「3ヵ月~1年に1回」が2台、「7日間に1度」が2台だった。

「超音波加湿器に関しては、1日おきの“お手入れ”をメーカーは推奨しています。具体的には、貯水タンクと経路に残っている水を捨て、拭き掃除します。可能であればタンク内も拭き掃除するのがベストですが、大半の加湿器は手が入らない構造になっています」

だが、尾家教授のレポートでは、「汚染を防止するためには12回の霧化部がある水槽の洗浄が必要」との結論が出されている。とはいえ、24時間使っている加湿器を1日2回洗浄したり、1日おきに乾燥させるなどの“お手入れ”は不可能に近い。現実的には、尾家教授が調査したような“お手入れ”状況ではないだろうか。

国内大手電気メーカーは「超音波式」の製造から撤退。販売されているメーカーのほとんどは対策なしの現状

以上のような結果をみて国内の大手電気メーカーは、約10年前から超音波式加湿器の製造から撤退している。

これほどまでに危険なのに、家電ライター藤山氏の言葉通り超音波式は依然として人気だ。消費電力が低く、デザイン性が高く、安価で手軽なことが魅力のようだ。尾家教授の調査から30年たった現在、超音波式加湿器もそれなりに進歩しているのだろうか。

「超音波式を採用しているメーカーの中には、水が腐敗しないようにフィルターを設けるなど、対策を打っているところもあります。たとえば、ダイソンは水に紫外線を当てて滅菌しています。また超音波加湿器でシェアがナンバーワンのアピックスは、特殊なフィルターを水タンク内に設けて、腐敗を抑えるようにしています。

しかし、ほとんどのメーカー(主に中国製で、代理店により輸入されているもの)は何の対策もしていません」

では、貯水タンクの水そのものに、殺菌剤などを入れる等の方策はないのだろうか?

尾家教授の研究室で、メーカーの依頼により、除菌剤などを貯水タンクに入れる実験をしたところ、気化式、スチーム式等は除菌剤が空気中に排出されることはなかったが、超音波式は除菌剤も空気中に排出されてしまった。2011年、韓国で、吸入すると有毒な殺菌剤を入れた超音波式加湿器により多数の死者を出した事故もあった。

2011年に発覚し、2016年に本格的な捜査が始まった韓国の加湿器殺菌剤事件。被害者団体によるとその死傷者は1500人以上だという。写真は、製造元のレキット・ベンキーザー本社(英国)前での抗議活動の様子(2016年/写真:アフロ)

インフルエンザ予防のために使っていた加湿器が、逆に“加湿器病”を引き起こしていたとは……。安価なことは魅力だ。しかし、それで病気になってしまってはなんにもならない。価格と健康、どちらが大事か、今一度考えたい。特に、抵抗力が弱い高齢者や乳児がいる家庭では、注意が必要だろう。 

尾家(おいえ)重治 山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部客員教授。著書に『病棟で使える消毒・滅菌ブック』『シチュエーションに応じた消毒薬の選び方・使い方』などがある。

藤山哲人 『家電Watch』『DIME』など多数の媒体で執筆。あらゆる家電を使い込んで比較する技術系家電ライター。「家電おじさん」「体当たり家電ライター」の異名を持つ。TBS系列バラエティ番組『マツコの知らない世界』には5回出演。

  • 取材・文中川いづみ

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