台風19号による大雨災害 東京、神奈川、長野にまだまだ残る傷痕 | FRIDAYデジタル

台風19号による大雨災害 東京、神奈川、長野にまだまだ残る傷痕

写真が語るゴルフ場、リンゴ畑、新幹線基地の生々しい悪夢

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11月8日撮影の新東京都民ゴルフ場。台風19号上陸から1ヵ月経ったにもかかわらず、今でも水が引いていない。(国土交通省荒川下流河川事務所提供)
11月8日撮影の新東京都民ゴルフ場。台風19号上陸から1ヵ月経ったにもかかわらず、今でも水が引いていない。(国土交通省荒川下流河川事務所提供)

「被災から1ヵ月経ったというのに、コース内には、台風19号で流れ込んだ水がまだ残っています。まことに残念ですが、台風から3週間後に行われた役員会で協議した結果、ゴルフ場を廃業することを決定いたしました」(新東京都民ゴルフ場・総務部長の二階堂正孝氏) 

観測史上最大レベルの台風19号襲来から1ヵ月。残された傷痕はあまりにも深く、各地では今も対応に追われている。

10月12日から13日にかけて東日本に上陸した台風19号は、東京、神奈川、長野など13都県で90人以上の死者を出している。70を超える河川が氾濫し、東日本全域で3万棟を超える床上浸水被害を出すなど、未曾有の大災害となった。

とくに被害が大きかったのは、河川の堤防が決壊した地域だ。荒川の河川敷にあり、60年以上の歴史を誇る『新東京都民ゴルフ場』(足立区)もその一つである。二階堂氏が続ける。

「これまでも、大雨で川が増水して水没することはありました。しかし、数日あれば水が引き、元に戻せていたんです」

だが、台風19号にはこれまでの常識がまったく通用しなかったという。

「川から溢れ出た汚泥で、ゴルフ場全体が覆われてしまったんです。その後、徐々に水は減っていきましたが、荒川と隅田川が合流するところにある新岩淵水門が泥の堆積で埋まったままでした。水門が開き、水が流れ出るまでに2週間もかかりました。結局、水が引いても泥が残ったので、復旧には芝の全面的な張り替えが必要になってしまいました。資金繰りのメドが立たなかったので、これはもう断念するしかない。もし再建できたとしても、来年また同じような被害に遭う可能性は十分ありますから……」 

立命館大学歴史都市防災研究所教授の高橋学氏によると、一歩間違えれば大規模浸水がさらに拡大していたという。

「もし台風19号上陸が2時間早かった場合、東京湾の満潮の時間とほぼ一致します。高潮が発生して、足立区のような下町や、浦安や有明など東京湾沿いの埋め立て地にまで浸水被害が及んでいた可能性がある。その場合は、ディズニーランドも浸水被害に及んでいたでしょう」

あなたが住む地域も他人事ではない。次に来る台風に備えて、準備が必要だ。

台風通過の翌日は、辺り一帯が水浸しになった(国土交通省荒川下流河川事務所提供)
台風通過の翌日は、辺り一帯が水浸しになった(国土交通省荒川下流河川事務所提供)

台風19号による傷痕は、東日本各地に及ぶ

「台風被害から1ヵ月が経っても、集積所に持ち込まれるゴミは減るどころかどんどん増えてきています。千曲川から流れ込んだ泥や、家具などの災害ゴミは膨大で、年内で処理できる見通しは立っていません」(現地の災害ボランティア)

約70mにわたって堤防が決壊し、5000棟超に浸水被害がでた長野市内の千曲川沿いでは、10月30日に鋼板を打ち込んで強化した仮堤防が完成した。

「工事の終了を受けて、長野市は周辺の避難指示を解除しました。ただ、現在(11月11日時点)でも12ヵ所で679人が避難生活を余儀なくされています」(地元紙記者)

被害を受けたのは住宅だけではない。千曲川流域で収穫期を迎えていた特産のリンゴ農家は壊滅状態にある。

「育てていたリンゴはほとんど地面に落ちてしまい、売り物になりません。畑は泥が流れ込んだ後に干上がり、ひび割れを起こしているため、農家の中には廃業を考える人たちもいます」(地元住民)

また、11月8日にはJR東日本の長野新幹線車両センターで、浸水被害を受けた北陸新幹線の車両10編成120両の解体作業が始まった。

1ヵ月経っても復旧は進まず、むしろ被害は拡大している。東京大学情報学環特任教授の片田敏孝氏はこう話す。

「ここ数年、豪雨の規模がこれまでとまったく異なってきています。従来の防災対策が通用しなくなってきているのです。日本の防災対策は、比較的『穏やか』な気候を前提にしていましたが、今はそれが通じなくなってきている。想定を超える被害については行政任せにせず、個々人がリスクについて備える時代が来ています」

神奈川県相模原市の道志川沿いにあるキャンプ場も、壊滅的な被害を受けた。本誌が現地を取材した際も、重機で取り除かれた土砂の山が、キャンプ場の敷地内に大量に山積みされていた。

『青野原オートキャンプ場』代表の尾崎俊晴氏は話す。

「川沿いにあるキャンプ場の敷地の大半が一時的に水没してしまいました。台風で水かさが急激に増え、土砂や流木だけでなく、軽トラックや土管まで巻き込んで大量に流れてきたのです。現在、被害の少なかった一部は利用できる状態になっていますが、全面復旧には程遠い状態で、年内はどうすることもできないでしょう。現在は、県に復旧工事の許可申請を出すために被害状況を測量し、まとめている段階です。今後、同じような災害に見舞われた時にどう対応できるかなど、できる限り安全な施設づくりを目指していきます。来年桜が咲くころには営業再開できればと思っています」

生活再建までには、気の遠くなるほどの時間がかかる。悪夢は台風が通り過ぎた後にやってくるのである。

千曲川には仮堤防が築かれた

台風で決壊した千曲川の仮堤防は10月30日に補強工事が完了した

千曲川沿いの被災地では、災害ゴミが仮設の収集所に運ばれる

リンゴ畑では、洪水でたまった泥が乾き始め、ひび割れができた

浸水した新幹線は今でも長野新幹線車両センターに残っている

青野原オートキャンプ場には今なおトラックや流木が残る

青野原オートキャンプ場では流された軽トラや土砂がそのままで、完全復旧のメドは立っていない

台風19号の上陸によって、青野原野呂ロッジキャンプ場ではオフロードカーが川の増水で押し流され、今も撤去できていない

『FRIDAY』2019年11月29日号より

  • 撮影蓮尾真司(新東京都民ゴルフ場)撮影結束武郎(千曲川)撮影西﨑進也(青野原オートキャンプ場)

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