地上波全局で放送「即位パレード中継」視聴率の明暗を分けたモノ

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「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)の天皇皇后両陛下。二重橋前にて 撮影:斎藤浩

天皇陛下の即位を祝う「祝賀御列の儀」が、秋晴れの10日(日)午後に行われた。

両陛下を乗せたオープンカーは、3時頃に皇居を出発し、約30分かけて赤坂御所まで進んだ。沿道には11万9千人が集まった。

NHKと民放キー5局は、一連のパレード生中継で、スタジオやCMを一切挿入しなかった。つまり全局が、ほぼ同じ映像で番組を続けたのである。
ところが見られ方には明暗がはっきりと出た。全く同じような番組なのに何が明暗を分けたのか。
視聴データと中継の演出から考えてみた。

世帯視聴率の差

ビデオリサーチが測定するパレードが行われた午後3時から1時間の平均視聴率(関東地区)は、NHKが各民放に5倍以上の差をつけた。

NHK:27.4%
日テレ: 5.3%
テレ朝: 4.0%
TBS: 3.0%
テレ東: 1.4%
フ ジ: 5.7%

また民放5局の中でも、明暗が分かれた。
日テレ・テレ朝・フジの3局は、パレードが始まって以降、前の時間より視聴率を上げた。ところがTBSとテレ東の2局は、直前1時間と比べると2~3%数字を落とした。

また日テレ・TBS・フジの3局は、生中継の間に徐々に数字が上がった。
ところがテレ朝・テレ東の2局は、ほぼ横ばいで終わった。

6局合計では45.5%と、テレビをつけていた家庭の9割以上が歴史的行事に集中した。それだけ国民の重大関心事だったと言えるが、各局の見られ方は大きく異なった。

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)。皇居・東庭取材台より(雑誌協会代表取材)  撮影:椎野充

接触率の時系列変化

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)のテレビ中継。NHKと民放の接触率推移

関東地区でインターネット接続テレビ50万台以上の視聴状況を調べるインテージ「Media Gauge」。
この接触率データで分析すると、同じ中継を放送した6局の時系列変化など、詳細な見られ方が浮かび上がる。

まず午後1時から特番態勢をとっていたNHKは、パレードが始まるまでに接触率を4倍以上に上げた。天変地異や大事件に強いNHKは、天皇一代に一回のみの大イベントでも、圧倒的な集客力をみせた。

ところが実際にパレードがスタートすると、上昇ペースはピタリと止まった。新たにテレビをつけた人などのNHKへの流入は続いていたので、流入とほぼ同じ数の人々がNHKから逃げていた(流出していた)ことを意味する。

しかも儀式終了後、特番がスタジオで続いたが、接触率は急落し半減してしまった。NHKのスタジオ演出を敬遠した人がかなりいたと思われる。

いっぽう民放の中では、日本テレビが中継の数字を最も上げた。
高低差は約2.5倍。次にフジテレビも2倍ほど視聴者を獲得した。そしてTBSが微増で、テレビ朝日とテレビ東京はほぼ横ばいだった。

またパレード終了後では、NHKが半減したのに対して、民放各局はCMでの流出を除きほとんど数字を落とさなかった。スタジオに戻って以降、NHKからの流出者の一部を、民放局が拾い上げていたのである。

NHKから流出が起こる瞬間

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)のテレビ中継。NHKと民放の流出推移
祝田橋付近。パレードを待つ人々と警備陣。  撮影:松井雄希
「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)。祝田橋に車列が近づく  撮影:松井雄希
「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)。祝田橋付近にて沿道の人々に手を振る天皇皇后両陛下  撮影:松井雄希

NHKの中継では、流出して他局へザッピングする視聴者が、一挙に急増する瞬間がある。実はその流出ポイントには、共通項があった。
スタジオに招いたゲストが、中継映像を見ながら感想を述べるなど、情報性に乏しいトークが展開される場面だ。

例えばパレードが桜田門を通過した頃。
モデルで大学生のゲストが、「あたたかくて、素敵!」「天気が良くて、美しい」と話す。また両陛下とテニスで交流のあるゲストが、「とても、あの、誇らかな感じ」「(二人)仲が良い」と、言うに事欠いたような感想を述べた。

青山通りから青山一丁目交差点を曲がる辺りでも大量の流出が起こった。
こんなやりとりだ。

ゲスト「本当に(沿道に)来て下さった方へのお心遣いが伝わってくる」
(その後、しばらく沈黙が続く)
アナ「あ~思わず、黙って見てしまう」
ゲスト「見入ってしまいます」
アナ「ほんと、そうですねえ」
(またもや間)
アナ「ほんとに、いろいろ説明のコメントもしようかと考えていたのですが、映像がやっぱりすごく力があって、思わず見入ってしまうというか、皆さんもそういう気持ちかも知れませんね」

筆者はNHKで番組制作を担当していた頃、次のように教え込まれた。

「絵を見ていてわかることはコメントするな」
「映像だけではわからない別の情報を伝えることで、番組に奥行を出せ」
「(中継では)何を伝えるべきか、事前の取材が命」

学者・有識者などのゲストが、専門家の立場から、彼らしか知らない話をするのは問題ない。
ところがNHKのスタジオには、天皇皇后と親交のある人や人寄せパンダとしての若いタレントが、パレードの映像を見せられながら、必要以上に長い時間トークさせられたことに敗因がある。
制作陣の準備不足・見立て違いが原因となった流出と言わざるを得ない。

民放各局の流出

いっぽう民放各局の中継では、NHKの流出ピークと比べ半分から6分の1程度と低かった。
そもそも視聴者の数が大きく異なるので、当然という部分もある。それでも各局から流出が増える瞬間には、やはり一定の共通項が存在した。

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)。国会議事堂前にて、沿道からの祝福の歓声に涙をにじませる雅子さま  撮影:山口隆司
「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)国会議事堂を過ぎ、憲政記念館前を左折する天皇皇后両陛下のお車  撮影:楠田守

例えば国会議事堂前で最も流出した日テレ。天皇の大学の後輩が映像を見ながら、天皇の気持ちを推し量かるような意見を述べた。
フジも桜田門あたりで流出が増えた。天皇にスケート指導をしたゲストが、「感無量」と語っているところだった。

逆に同じゲストの発言でも、フジが招いた皇室のファッションに詳しい有識者が、皇后のドレスを解説した部分では、流出は全く増えていない。情報性があれば視聴者は耳を傾け、ザッピングを控える。

またパレードが出発して最初の10分、民放からの流出はほとんどが0.1%未満で済んでいた。2~3分で通過する一定区間を各アナウンサーが担当し、テンポよく補足情報をコメントしていたのが功を奏したようだ。

例えば日テレのアナウンサーは、「沿道の並木がもともとアメリカから30粒の種で渡来したもの」「花言葉は“田園の幸福”」「皇居のお堀には先週シベリアから渡り鳥が帰ってきた」などを紹介していた。
映像に付加価値を持たせる内容で、事前の準備が垣間見える。

パレード終了後の明暗

パレード終了後も、各局の中継は明暗が分かれた。

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)のテレビ中継。NHK流出と民放流入の関係

NHKからは4分で累積6%以上も流出した。流入もあったので、毎分の接触率は13.4%から10.4%と、3%ほどの減少となった。

NHKからの流出を最も拾ったのは、日テレだった。
パレード直後の沿道と、大阪道頓堀からの中継が短く入り、パレード全体を3分にまとめたハイライトで振り返った。このハイライトの間は、流出が見事にとまっていた。
結果としてパレード終了後の5~6分で、日テレは接触率を4.5%から5.1%まで上げていた。

フジはスタジオゲストの発言で対応した。
結果として日テレより流出が多くなったが、NHKからの流入を得て、接触率は4~5分で3.4%から3.8%へと0.4%上げた。

テレ朝もスタジオゲストの発言で対応した。
よって流出は日テレより多くなった。それでもNHKからの流入により、2分で0.6%上昇した。ところが直後にCMを入れたため、すぐに0.8%ほどを失った。
その後にパレードのハイライトを置いたが、数字は元に戻ることはなかった。

いっぽうTBSとテレ東は、パレード終了後にNHKからの流入がほとんどなかったため、接触率が上昇することはなかった。
厳しい見方をすると、視聴者がザッピングする際の選択肢に、両局が入っていないように見える。

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)。青山一丁目交差点に近づく車列  撮影:林桂多

6局すべてがほぼ同じ映像の中継を行ったが、やはり全局が右に倣えをする必要があったか疑わしい。
実際に両局は、直前の番組から2~3%視聴率を落としていた。その時間、その他視聴率は4.7%あった。パレード以外の番組を見たいというニーズはあったはずである。

以上が「祝賀御列の儀」を中継した6局の顛末だ。

やはり全局がほぼ同じ映像の番組を続けても、テレビ全体あるいは一部のテレビ局にとって、効果的だったかは疑わしい。
もっと異なる中継をするか、別の道を模索するなど、もう一段の知恵を出すことで、テレビ全体の付加価値が上がることを期待したい。

「祝賀御列の儀」(2019年11月10日)。権田原付近にて、沿道の歓声に応える両陛下。赤坂御所はまもなくだ   撮影:森清
  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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