ヤフーとLINEの経営統合 記者会見でわかった不透明な未来 | FRIDAYデジタル

ヤフーとLINEの経営統合 記者会見でわかった不透明な未来

めざすはGAFAに対抗するメガIT企業 実態は具体策なし

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新会社の共同経営者になる二人。川辺氏が緑色、出沢氏が赤色のネクタイを締め、互いのコーポレートカラーを交換して会見に臨んだ
新会社の共同経営者になる二人。川辺氏が緑色、出沢氏が赤色のネクタイを締め、互いのコーポレートカラーを交換して会見に臨んだ

具体策なき経営統合

期待は急速にしぼんだ。

「日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指していきたい」 

11月18日、Zホールディングス(旧ヤフー)社長の川辺健太郎氏とLINE社長の出沢剛氏は共同会見を行い、川辺氏は統合の意図をこのように語った。

日本のITガリバー企業『ヤフー』と国内最大のメッセンジャーアプリを運営する『LINE』が経営統合に向けた合意を発表し、日本中が期待に沸いた。ついに日本にも『GAFA』(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)に対抗するメガIT企業の誕生か――。

だが、マーケットはその言葉を信じなかった。13日に経営統合に向けた最終調整が報じられた翌日、前日比20%近くまで急騰したZホールディングスの株価は、会見翌日には最初の報道の前と同じ水準へと元通りになってしまったのだ。その理由をITジャーナリストの三上洋氏はこう分析する。

「会見で両社の統合が、現時点では『具体策なき統合』だとわかってしまった。記者が今後のビジョンについて再三質問しても、『具体的なプランは統合後に検討する』、『これから作り上げる新しいサービスでグローバル展開していく』と言うばかり。本当に何も考えていないのかと、会見を見てガッカリしましたね。 

ただ、GAFAや中国のBAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)と戦いたいとの目標を掲げるのは、ITビジネスに身を置く以上、不自然な表明ではありません。LINEのユーザーは国内8000万人、ヤフーも5000万人いて、日本の人口を考えると、これ以上ユーザーを増やすのは難しい。戦う相手をもうひとつ上のレベルに設定する必要があります。だから、ライバルとして、GAFAやBATを挙げている。

しかしながら、GAFAとは時価総額で30倍程度の開きがあり、まともに戦っても勝負になりません。だから川辺社長が『日本のためにできること』と強調するように、違う土俵で戦わなければいけない。しかし、それが何かと問われると、何も見えていないのが現状です」

ユーザー離れの危険性も

それでも両社が経営統合に駆り立てられたのはなぜか。背後に見え隠れするのが、経営統合後、両社の親会社となるソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長、孫正義氏の存在だ。SBGは’19年7-9月期で7001億円という巨額の赤字を叩き出し、孫氏は「真っ赤っ赤の大赤字。今回の決算の発表内容はボロボロでございます」と会見で語ったばかり。米国のシェアオフィス大手「ウィーワーク」への投資失敗が大きく響いた。

「孫氏の経営手法は限界を迎えつつあります。孫氏は、安定的な利益を出すのではなく、有望な企業を見抜いて投資し、派手な宣伝をして企業価値を高め、時価総額を増やすことで会社を大きくしてきました。今回の経営統合も大きな話題となりましたし、ウィー社で作った巨額赤字から目を逸らさせる意味でも、孫氏にとっては渡りに船だったでしょう」(経済ジャーナリスト・國貞文隆氏)

両社が統合して、大きく変わりそうなのは、双方が積極的に推し進めてきたスマホ決済だ。ヤフーのPayPayは2000万人、LINE Payは3690万人の登録ユーザーを抱える。

「今年は消費増税に伴ってキャッシュレス決済時のポイント還元政策が始まり、スマホ決済戦国時代の幕開けとなりましたが、今回の統合発表で、早々に幕引きになりそうです。先頭争いをしていた両社の統合で、試合は終わったと言っていいでしょう。しかし、こちらも今後どのような形で統合が進むのかは白紙です」(ITジャーナリスト・久原健司氏)

あまりに中身のうすい経営統合案にユーザーやマーケットがガッカリするのも当然だろう。結局のところ、利用者にとって何かメリットはあるのか。

「私もユーザーの恩恵は思い浮かばないんですよね。ヤフーショッピングの宣伝がLINE上に届くようになるとか、ネガティブな光景は思い浮かぶのですが。両社が開発したAIが判断する『あなたが欲しい商品』の情報がいっぱい届く。そうなってユーザーが離れていく可能性はあると思います」(前出・三上氏)

両社が完全に経営統合するのは早くて1年後。それまでに世間のガッカリを覆し、ビックリに変えることはできるのか。

ソフトバンクグループは15年ぶりに中間期決算で営業赤字に転落。孫氏は反省の弁を述べたものの、投資戦略は間違っていないと強弁
ソフトバンクグループは15年ぶりに中間期決算で営業赤字に転落。孫氏は反省の弁を述べたものの、投資戦略は間違っていないと強弁

『FRIDAY』2019年12月6日号より

  • 撮影蓮尾真司(1枚目写真)写真AFP/アフロ

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