強豪校が集結!三重・熊野で開かれる「日本最高峰の練習試合」

晩秋の三重・熊野で、超豪華な高校野球の練習試合が行われている。「くまのベースボールフェスタ・練習試合in熊野」がそれだ。そんな、すごい練習試合の様子をレポートする。

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今夏の甲子園でも登板した笠島尚樹(敦賀気比2年)

2004年に世界遺産に登録された熊野古道で有名な三重県熊野市。毎年11月下旬、この地を舞台に大々的な高校野球の練習試合が行われている。それが『くまのベースボールフェスタ・練習試合in熊野』だ。たかが高校野球の練習試合であればそこまで注目するようなものではないが、すごいのがその参加校の顔ぶれで、今年は以下の高校が全国から集まっている。

鶴岡東(山形)
関東第一(東京)
横浜隼人(神奈川)
長野日大(長野)
大府(愛知)
豊田大谷(愛知)
遊学館(石川)
敦賀気比(福井)
報徳学園(兵庫)
創志学園(岡山)

全ての高校が甲子園出場経験のある強豪で、鶴岡東、関東第一、敦賀気比は今年夏の甲子園にも出場している。また昨年は西純矢(創志学園→阪神1位)もこの練習試合で2試合に登板して好投を見せている。そして地元からは木本、近大高専、尾鷲、白山(いずれも三重)、近大新宮(和歌山)の5校が参加。今年は23日と24日の2日間に、5つの球場で計30試合が行われた。

2002年に「くまのスタジアム」がオープンしたことがきっかけで始まり、現在のような形になったのは2005年から。今年で15回目を迎えることになる。
運営を支える事務局の方の話では、始めた当時は積極的に色々な学校に声をかけていたとのこと。そのうち、参加した智弁和歌山の高嶋仁前監督や横浜の小倉清一郎元部長などがいたるところでこの話をし、口コミで噂が広がっていき、今では参加を数年間待っていてもらっている学校もあるとのことである。

参加校には、練習試合ができるシーズンの最終盤に高いレベルのチームと試合ができることと、年中みかんが収穫できるという温暖な気候ということが大きなメリットとなっているようだ。地元のチームにとっても全国の強豪と対戦できる絶好の機会であり、その効果もあってか近大高専は今年秋の三重県大会で優勝を果たし、県の21世紀枠候補にも推薦されている。また、会場には地元の子どもたちの姿もよく見かけたが、甲子園に出場するようなチームの選手を身近に感じられるということも、この地域の野球の活性化につながっていると言えるだろう。

ここからは今年参加したチームの中で目立った選手を紹介したいと思う。まず投手では笠島尚樹(敦賀気比2年)高田竜星(遊学館2年)の二人だ。笠島は今年の夏の甲子園でもエースとして登板しているが、際立っていたのはその安定感だ。2日目の近大高専戦では常にストライク先行で打者を追い込み、5回を投げて被安打3、無四死球、6奪三振と圧巻のピッチングを見せた。前日にも登板していることもありこの日の最速は139kmだったが、ストレートは数字以上に速く見え、変化球のコントロールも高レベル。順調にいけば来年のドラフト候補になることは間違いないだろう。

来年の飛躍が期待される高田竜星(遊学館2年)

高田は会場の都合で最後の2回しかそのピッチングを見ることができなかったが、秋季東北大会準優勝の鶴岡東を相手に完封勝利をマーク。試合終盤でもストレートは130km台後半をマークし、コントロールが荒れるということもなかった。笠島とともに北信越地区では今後騒がれる存在となりそうだ。

川口朝光(近大新宮2年)は球威がアップすれば楽しみな存在

ともに最速141kmをマークした加藤大(横浜隼人2年)三方陽登(創志学園2年)笠島の控え投手である松村力(敦賀気比2年)も好素材だったが、意外なところでは地元参加の川口朝光(近大新宮2年)が印象に残った。最速は134kmだったものの、下半身の強さが光るサイドスローでテンポの良さと制球力は高校生では上位に入る。ボールが高めに浮かず、創志学園打線を相手に内野ゴロを量産して、9回をわずか89球で完封して見せたのだ(試合は0対0の引き分け)。高校からすぐプロというタイプではないが、大学で球威が出てくれば将来的には十分プロ入りも目指せる投手である。

白石晃大(近大高専2年)。来春のセンバツ出場なるか

野手では、こちらも地元参加の白石晃大(近大高専2年・外野手)が強烈なインパクトを残した。178cm、81kgという立派な体格で力強さとスピードを兼ね備えた外野手で、無駄のない鋭いスイングは目を見張るものがある。初日の遊学館との試合ではいきなりセンターオーバーのスリーベースを放って先制のホームを踏み、2日目の敦賀気比戦では笠島から強烈なファースト強襲の内野安打を放って見せた。県外から参加した強豪チームの中軸と比べてもスイングスピード、脚力ともに上回っており、来年春のセンバツに選ばれるようなことがあれば、注目の一人となりそうだ。

背番号3ながら外野手と投手を兼任する土倉瑠衣斗(遊学館1年)

下級生では土倉瑠衣斗(遊学館1年・一塁手兼外野手兼投手)が目立った。背番号3をつけているがライトを守ることが多い右投右打の大型選手で、力みのない自然体の構えからの鋭いスイングが光る。まだ瞬発力やパワーは物足りないものの、何よりスイングの形が良いというのが長所だ。また2日目の報徳学園との試合では先発のマウンドに立ち、バランスの良いフォームから130km台前半のストレートをコーナーに投げ分けていた。投打両面で今後が楽しみな素材である。

かつては大谷翔平(エンゼルス)もこの練習試合に参加しており、高校野球関係者の間ではすっかりこの時期の風物詩となっている。今後も熊野から多くの選手がプロ野球、世界の舞台に羽ばたくことを期待したい。

 

  • 取材・文・撮影西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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