2日で16回搭乗! 飛行機にひたすら乗り続ける「修行僧」の世界 | FRIDAYデジタル

2日で16回搭乗! 飛行機にひたすら乗り続ける「修行僧」の世界

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航空会社、ホテル。修行僧にとって、12月は、1年間の実績で「ステイタス」が決まる “勝負の月”! 

“1泊2日で飛行機に16回搭乗”するツアーがある。JAL(日本航空)が公式に販売する『跳び飛びの旅 小型プロペラ機でホッピング』ツアーで、離島の島々を次々に飛んでいくことから“アイランドホッピング”とも呼ばれている。2日間ひたすら飛行機に乗り続けるこのツアーの参加者たち、目指すはJALの上級会員である「JGC」のステイタスだ。

2日で16回も飛行機に乗る人々が目指すJGCとは、いったい何か。また、大手ホテルチェーンでも同じようにステイタス取得を目指し、ひたすら宿泊回数を重ねる人々もいる。

JAL“飛行機修行”ではおなじみのプロペラ機「ATR42-600」。離島や近距離の路線で活躍
JAL“飛行機修行”ではおなじみのプロペラ機「ATR42-600」。離島や近距離の路線で活躍

1年のうちで「12月」は、航空会社やホテルでの1年間の実績でステイタスが決まる、いわば勝負の月。筆者も過去、12月にステイタス到達のためだけに飛んだ経験がある。そんな“修行僧”とも呼ばれる人々が欲するステイタスについて、最新“修行”事情を交えて紹介する。 

離島を飛行機でホッピング、本土では「但馬修行」が人気

前出のJAL公式サイトで販売する『跳び飛びの旅 小型プロペラ機でホッピング』は、鹿児島を拠点とするJALグループのJAC(日本エアコミューター)のプロペラ機に乗り、南の島々をひたすら飛びまくるツアーだ。多い時には1日10フライト、20~30分足らずの乗り継ぎ時間で次の目的地に向かう。短い飛行時間とはいえ心身ともにかなりハード。

鹿児島・奄美空港とJACのプロペラ機。修行で立ち寄る人も多い(2016年3月撮影)
鹿児島・奄美空港とJACのプロペラ機。修行で立ち寄る人も多い(2016年3月撮影)

このツアーの参加者は、離島のリゾートや観光が目的ではない。飛行機そのものに乗って「搭乗回数を稼ぐ」ことを目的とする。

ツアー以外では、JACの大阪(伊丹)=但馬間も修行僧の間では有名。1日2往復(4便)、35分のフライトでひたすらピストンする「但馬修行」という。特に毎年12月の土日は、見るからに“修行”と思われる人々に必ずと言ってよいほど遭遇する。

兵庫県・コウノトリ但馬空港。JALの“修行”でおなじみの場所
兵庫県・コウノトリ但馬空港。JALの“修行”でおなじみの場所

修行僧が目指している「JGC」とは?

JALでは、1月から12月にかけての搭乗回数や搭乗でのポイント(FLY ON ポイント、マイルとは別)に応じたステイタスが翌年提供される。上のクラスから、JMBダイヤモンド、JGCプレミア、JMBサファイア、JMBクリスタルの4段階があり、この中で修行僧が目指しているのが「JGC」(JALグローバルクラブ)の入会資格が得られるJMBサファイア。JMBサファイアのステイタスに到達するには、1月から12月までの搭乗回数50回または5万FLY ON ポイントが必要だ。

札幌・新千歳空港のJAL・JGC専用レーン。混雑時は一般のとてつもない長い列を横目に、ほぼ並ばずに済むのは大きい
札幌・新千歳空港のJAL・JGC専用レーン。混雑時は一般のとてつもない長い列を横目に、ほぼ並ばずに済むのは大きい

修行僧たちが、なぜこの「JGC」を目標にしているかというと、一度JGCに入会すると、あとは年会費を毎年支払えば、たとえ次年度以降が搭乗回数ゼロでも上級会員としての資格を維持できる。つまり、会費さえ払えば一生、空港の専用ラウンジや優先チェックイン・搭乗など数々の特典を受けることができるからだ。

芸能人も一般人も続々とハマる! 飛行機修行

そもそも、飛行機における“修行”とはなにか。

先に記した通り、1月から12月までの搭乗実績により得られる上級会員の資格(ステイタス)。「いかに安く、いかに効率よく搭乗回数(またはポイント)を稼ぐか」がステイタス到達の近道になる。そのために、週末になると、東京(羽田)=札幌(新千歳)をひたすら往復したり、先に記したツアーに参加したり、海外だとシンガポールまで行って着いてすぐに同じ飛行機で帰国する人も。

金銭はもとより心身ともに「ひたすら飛行機に乗る」ことを強いられるため、いつしか”修行“と呼ばれるようになった。

ATR42-600の機内。1日に何度も乗り降りを繰り返すのが“修行”では最優先で、現地の観光やグルメは二の次!
ATR42-600の機内。1日に何度も乗り降りを繰り返すのが“修行”では最優先で、現地の観光やグルメは二の次!

飛行機の“修行”が一気にメジャーとなったのは、マンボミュージシャンで公認サンタクロースでもあるパラダイス山元さんの著書『パラダイス山元の飛行機の乗り方』(2013年刊)が発売されたころ。2018年3月には、ジャニーズの風間俊介さんがステイタスを目指す様子がテレビで紹介された。

機内で配布されるキャンディー。ひたすら飛行機に乗る中で癒されるアイテムの1つ。機内で気圧調整(耳抜き)をする時にも効果がある
機内で配布されるキャンディー。ひたすら飛行機に乗る中で癒されるアイテムの1つ。機内で気圧調整(耳抜き)をする時にも効果がある

ちなみに筆者の場合、11月半ばで5万ポイントまであと1万ポイント弱ということに気づき、慌ててJALの航空券を検索。12月に大阪から東京に行く用事に合わせ、東京(羽田)からそのまま大阪に戻らず、沖縄(那覇)経由で大阪へ。しかも搭乗クラスは、国内線ファーストクラス(ファーストクラスは、獲得ポイントも高い)。1日に2回もファーストクラスに乗ったのは後にも先にもあの時だけで、結果、50,005ポイントという超ギリギリセーフでJMBサファイアに滑り込んだ。

ANAの「SFC修行」も人気。JALとの違いあれこれ

一方、ANAにもステイタスが存在する。ただ、JALと異なるのが、ステイタス到達の条件が、搭乗ポイント(プレミアムポイント)のみであること。

ANAのステイタスは「ダイヤモンド」「プラチナ」「ブロンズ」の3段階。ANAの修行では「SFC」(スーパーフライヤーズカード)の入会資格が得られるプラチナを目指すのが通例だ。そのため、SFC修行、プラチナ修行などと呼ばれる。

ANAの搭乗券と保安検査証。ステイタスの順で搭乗順がはっきりと“グループ”分けされている
ANAの搭乗券と保安検査証。ステイタスの順で搭乗順がはっきりと“グループ”分けされている

近年、JALよりANAのほうが、ステイタス到達が難しい点がある。というのは、JALカードのユーザーだと、1年の最初の搭乗時に“5,000 FLY ONポイント”が提供されるが、ANAにはそういったサービスがなく、ゼロからのスタートとなる。

JGC入会資格が得られるJMBサファイア到達が5万ポイントなので、もしポイントでステイタス獲得を目指すなら、残り4万5千ポイントを稼げばよい計算になる。5,000ポイントといえば、東京(羽田)=大阪(伊丹)の普通運賃や、ビジネスきっぷだと約2.5往復分に相当するので、修行僧にとっては大きな差になる。

優先搭乗、手荷物優遇、ラウンジ・・・上級会員のサービス

航空会社の上級会員になるのは、そんなに良いものなのか。

まず、出発空港で「ラウンジ」が利用できる。ANAでは「ANAスイートラウンジ」「ANAラウンジ」、JALでは「ダイヤモンドプレミアラウンジ」(国際線は「ファーストクラスラウンジ」)「サクララウンジ」だ。クレジットカードのゴールドカード保有者が利用できるラウンジとは異なり、ステイタスを持つ搭乗者のみ利用できる空間。国内線のラウンジではビールが飲み放題、国際線ではワインや軽食も提供される。

JAL国際線のサクララウンジで提供されるビーフカレーは、利用者に根強い人気を誇る。なにより牛肉の量が多い!
JAL国際線のサクララウンジで提供されるビーフカレーは、利用者に根強い人気を誇る。なにより牛肉の量が多い!

その他、充電できる電源、シャワーも無料で利用できる。海外の空港では、ヌードルバーやティーハウス(茶藝館)、ヘアカットやマッサージのサービス、スパまである豪華なラウンジも存在する。

特に、各国の大手航空会社が拠点とする空港にあるラウンジは“フラッグシップラウンジ”とも呼ばれ、近年、各社とも力を入れている。個人的なお気に入りは、香港国際空港のキャセイパシフィック航空のラウンジ、チャンギ空港のシンガポール航空のラウンジなど。

香港国際空港にあるキャセイパシフィック航空のビジネスラウンジ「The Pier」にはティーハウスがある。ティーマスターが茶葉から淹れる本格的なお茶はどれも絶品
香港国際空港にあるキャセイパシフィック航空のビジネスラウンジ「The Pier」にはティーハウスがある。ティーマスターが茶葉から淹れる本格的なお茶はどれも絶品

また、チェックイン時の優先カウンターの利用、優先搭乗、手荷物の優先受け取りや個数や重量の優遇といったサービスも魅力だ。満席便やアップグレードの空席待ちでは、ステイタスに応じて優先順位が決まるため、早く空港へ行って空席待ちをしていても、後からさらに上のステイタスの人が来ると順番が抜かされてしまう。

空席待ちはステイタスに応じた「種別」順。JALの場合、「種別S」はJMBダイヤモンドやJGCプレミア、「種別A」はJMBサファイアやJGC会員など
空席待ちはステイタスに応じた「種別」順。JALの場合、「種別S」はJMBダイヤモンドやJGCプレミア、「種別A」はJMBサファイアやJGC会員など

数ある特典の中で、個人的に最もありがたいのは「空席待ちでの順位」だ。また、電話で問い合わせた際、オペレーターに繋がるまでの待ち時間もステイタスによって違いがある。台風などでダイヤが乱れ電話が混んでいる時、一般の電話窓口が1時間待ちでも、ステイタス会員専用の窓口はたった5分でつながったこともある。空港や機内などで「待つ」というストレスが少ないのはかなり大きい。

ホテルでの年間宿泊回数に応じたステイタスもある

大手ホテルチェーンにも、航空会社のようなステイタスが存在する。こちらはホテル修行、また細かくは、マリオット修行、IHG修行、ヒルトン修行、ハイアット修行、アコー修行・・・などと呼ばれる。外資系ホテルチェーンが主流。

ホテルでの主なステイタス特典は、客室のアップグレードや朝食無料など。宿泊時のグレードがグッと上がるのは大きい
ホテルでの主なステイタス特典は、客室のアップグレードや朝食無料など。宿泊時のグレードがグッと上がるのは大きい

ホテルのステイタスは、1月から12月までの宿泊回数に応じて決まる。つまり、より多く宿泊することにより、上位ランクのステイタスが付与される。

マリオットの「MARRIOTT BONVOY」だと、年間25泊で「ゴールドエリート」、年間50泊で「プラチナエリート」などとなる。プラチナエリートでは、スイートを含む客室のアップグレード、朝食無料、ラウンジ利用、16時までのレイトチェックアウトなどの特典がある。

例えば、高級ホテルではけっこう高い朝食が(しかも同行者分も)無料になったりする。最も安価なスタンダード客室から眺めの良い高層階に無料でアップグレードされた時は、「ステイタスを持っていた良かった」と感じた。

「MARRIOTT BONVOY」のプラチナプレミアエリートは、基本1月から12月の宿泊回数が50泊以上で達成できる
「MARRIOTT BONVOY」のプラチナプレミアエリートは、基本1月から12月の宿泊回数が50泊以上で達成できる

ホテル修行では、規定よりも少ない宿泊回数でステイタスに到達できる「プラチナチャレンジ」などのキャンペーンを逃さず利用したり、単価が安いホテルで泊数を増やしステイタス獲得を目指すのが一般的。ほかに、上級ランクのクレジットカードを持つだけでホテルのステイタスが得られるサービスもある。例えば「アメックスプラチナ」カードだと、「MARRIOTT BONVOY」のゴールドエリート資格、ヒルトンでもゴールド会員のステイタスをカード取得と同時に得ることができる。

数々の特別なサービスを受けることができる航空会社やホテルのステイタス。残り1ヶ月、ステイタス到達まであと少しという方は、ぜひ駆け込み“修行”にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

■記事中の情報、データは2019年11月28日現在のものです。

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  • 文・写真Aki Shikama / シカマアキ

    旅行ジャーナリスト&フォトグラファー。飛行機・空港を中心に旅行関連の取材、執筆、撮影などを行う。国内全都道府県、海外約40ヶ国・地域を歴訪。ニコンカレッジ講師。元全国紙記者。

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