子供の貧困招く養育費不払いの驚くべき実態と「脱・泣き寝入り」策

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厚生労働省が発表している「全国ひとり親世帯等調査結果」最新版(平成28年)では、「養育費不払い」の実態が浮き彫りとなっている。そもそも取り決めを行なっていないケースが母子家庭では約6割、父子家庭では約8割にものぼっているという事実に驚く。そして取り決めを行なっていても、そのうちの母子家庭約8割、父子家庭9割以上が、養育費を受け取れていないというのだ(参考:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000188168.pdf)。

離婚時に取り決めを行なっていても、そのうちの母子家庭約8割、父子家庭9割以上が、養育費を受け取れていないという 写真:アフロ

離婚問題を専門とする、わたしのみらい法律事務所・渡邊未来子弁護士に訊くと、多くのひとり親世帯が、養育費不払いに悩んでいるという実態を明かしてくれた。

「養育費の取り決め自体をしていないケースには、『どうしても早く関係を解消したい』というものを筆頭に、様々な背景が見られます。また実際に取り決めがあっても支払われていない例も多く、実感としては7割超えか8割ぐらい、支払い義務のある方が養育費を支払っていないという印象。

また、ひとり親世帯の当事者が『養育費不払い』のニュースを聞いたことがあるケースだと、自分がそうなったときに“払われないことが多いから……”と諦めてしまうという悪循環になることがありますね。

『離婚時に、養育費の取り決めを行うという意識自体がまだ進んでいないのでは?』ということで、ようやく法務省でも、離婚する際の養育費と子どもとの面会交流などについての書面の雛形などを用意するようになりましたが、それもここ最近のことです」(わたしのみらい法律事務所・渡邊未来子弁護士)

実際に支払わない側にも様々な事情はあるが、意図的に支払わないケースにおいては、支払う相手に不満を持っていることも多いようだ。

「元パートナーに対する、夫婦だった時の気持ちや結婚当時のお金の使い方への不満などを理由にあげる方もいます。あと、子どもとのコンタクトが少ないと親としての実感が生まれにくいという背景も。法律では養育費と『面会交流の頻度』は別の問題ですが、気持ちとしては密接に関わってくるのです。

いろいろな事情があるとは思いますが、可能な範囲での面会交流の意味は大きい。離婚をしても子どもの親は2人という事実に変わりはないので、お1人に万が一のことあった時、もう一方の支援を受けられなくなる状況は非常にリスクが高いことだと思っています」(渡邊弁護士)

こうした実態に自治体も動き始めている。その筆頭である兵庫県明石市は、2014年4月から「明石市こども養育支援ネットワーク」の運用を開始し、相談体制の充実化、参考書式の配布、関係機関との連携、という3つの観点から支援を実施、2016年9月からは面会交流のサポートを始めた。

その流れで、2018年11月からは「養育費立替パイロット事業試行実施」を開始。これは民間の保証会社と連携し、不払いとなっている養育費を補填したり、督促を行うというものだ。子どもの養育支援に精力的に取り組む背景について、明石市の担当者はこう語る。

「昨今『子どもの貧困』の原因のひとつである養育費不払いが大きな問題となっています。本当はもらえるはずのお金が実際にはもらえていない家庭があるという実態があり、なおかつ、そこに対応する裁判の制度などもあまり進展していないという現状も。

本来払う約束をしている、もしくは裁判所がそういう判断をしているにもかかわらず支払わないでいる状態がそのままになっているというのは、海外の例と比べてもちょっと異常な状態ではないかというのが問題意識としてありました。かといって養育している親御さんだけの問題にしてしまうのも難しいところがあります。そこを市でフォローしていく必要があるのではないかと判断したのです」

明石市の「養育費立替パイロット事業」の申し込みは現在すでに締め切られているが、18枠がすべて埋まり、13件についてはすでに保証会社との契約締結に至っているという。

また、養育費の不払いを解消しようとする動きは他の自治体にも広がり始めている。今年4月には大阪市で、ひとり親家庭の父または母が、民間の保証会社と養育費保証契約を締結する際の本人負担費用(保証料)を補助するという取り組みを開始。10月には滋賀県湖南市で、養育費保証の契約をするために保証会社へ支払う初回保証料相当額ならびに養育費を取り決める公正証書などの作成に係る諸費用を助成する取り組みを始めている。

これらの取り組みの中で、欠かせないが「保証会社」の存在だ。

養育費が不払いとなった場合、これまでは子を養育する側の親自らが、元パートナー側に働きかけを行わなければならなかった。だが保証会社が現れたことで、その現状は大きく変わろうとしている。

明石市を始め、大阪市や湖南市が連携する総合保証サービス会社「イントラスト」は、昨年2月から養育費保証の展開を始めた。

「明石市の方は自治体へお問い合わせいただき、大阪市と湖南市の方は弊社が直接対応する流れになっています。養育費保証は、未払い養育費の立替えと、立替え金の回収業務を行います」(イントラスト・広報担当)

もちろん、自治体を介して保証会社と契約を締結する以外に、個人で直接、保証会社を利用することもできる。養育費の支払い状況や元パートナーとの関係に応じて、複数のプランが用意されている。

「現在、プランは3つご用意しております。ひとつは元パートナーの方と弊社で、保証委託契約を結べる方向けのプランです。弊社から元パートナーの方に口座振替を行い、そのまま弊社から受け取る方に送金するという流れなので、未払いが発生しても元パートナーの方や弊社に連絡をする必要がなく、ストレスなしに養育費を受け取っていただけけます。

もうひとつは、元パートナーに連絡をしたくないなどの理由から、元パートナーと弊社で保証委託契約を結べない方向けのプランです。こちらは未払いが発生した場合、弊社に未払いが発生しましたというご連絡をメールでいただく必要があります。それを受けて弊社が立替えてお支払いし、立替えた養育費は弊社が回収いたします。

すでに未払いが発生している方向けのプランもあります。過去の未払い分については保証の対象外となりますが、これから発生するかもしれない未払い養育費は保証することができるので、あきらめないでご相談いただきたいです」(同・広報担当)

自分の居所を知られずに養育費の受け取りができるため、安心も得られる。契約には与信審査があるので、元パートナーの連絡先や勤務先などがわかるうちに申し込みをしたほうがよさそうだ。

「未払いの際に、保証会社という第三者が間に入ることで、お支払いが正常化したというケースはありました。それだけでも効果はあるのかなということを感じております」(同・広報担当)

と養育費保証プランに手応えを感じているようだ。同社には、他の自治体からも養育費保証についての問い合わせが寄せられているという。

子どもを持つ夫婦が離婚をする際、養育費についてあらかじめ取り決めをしておくことはとても重要だ。また離婚後に取り決め通りに養育費を支払うことも、同じくとても重要だ。その認識を強化するだけでも、子どもの貧困は減少するはずだ。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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