おせち料理から焼肉、スポーツジムまで…「ぼっちライフ」の極め方

‘30年から‘35年にかけて日本人の約半分の世帯が単身者となり、ますます「ぼっち産業」が隆盛に

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一人でいることは、自分を見つめ直すきっかけにもなる。ヒロシはソロキャンプにハマってから体調もよくなったという

芸人のヒロシ(47)は、一人でも人生を楽しむ「ぼっちライフ」のプロフェッショナルだ。

「元々キャンプが好きで、友達と一緒に楽しんでいました。それはそれで楽しかったのですが、待ち合わせに始まり、食事や焚(た)き火などでどうしても他人に合わせる必要が出てきます。それにストレスを感じるようになり、だったら一人で行けばいいじゃないか、と思って始めたのがソロキャンプです。すっかりハマってしまいました。自然の中に一人でいることで他人といるよりも余計に感覚が研ぎ澄まされるし、リラックスできる。ソロキャンプは、成熟した大人だからこそできる遊びと言えるでしょうね」

そんな「ぼっちライフ」の極意を綴った新著『ひとりで生きていく』が発売即重版となったヒロシは、もともと大勢でつるむことが苦手だった。

「焼き肉もほとんど一人で行きます。一人だとライスとカルビ2人前があれば十分なのに、大勢で行くと無駄なものまで注文するじゃないですか。食べる量よりも余計に注文して残してしまうことで、偉そうに言うと、フードロスにもつながっているわけですよね。その点、一人焼き肉なら、自分で食べられる量しか注文しないから、無駄がない。『ぼっちライフ』は環境にも優しいんです。

僕にとって大切なのはキャンプであり、焼き肉であって、大勢でつるむことが大事なわけじゃない。むしろ大勢になってしまうと本当に楽しみたいことが楽しめないうえに、ストレスになります。実は同じように考えている人は多いと思いますよ。最初は多少、抵抗があるかもしれませんが、実際にやってみるとそんな心配はまったくありません」

一人だけど孤独じゃない

いま、「ぼっちライフ」を狙ったビジネスが空前のブームを迎えている。東京・有楽町にあるプラネタリウム『コニカミノルタプラネタリアTOKYO』では、シングル向け『銀河シート』という、おひとり様向けの快適な座席が好評だ。同プラネタリウムでは、実に3割が単身での利用者だという。

背景にあるのは、単身世帯の増加はもちろん、SNSの普及もある。世代・トレンド評論家の牛窪恵氏が言う。

「未婚者の増加と配偶者の死亡で、シングル世帯は今後どんどん増えていきます。統計によれば、’30年から’35年にかけて、日本の全人口の半数が単身者になると言われています。『ぼっち産業』は無視できないマーケットになっているのです。

さらに趣味を一人で楽しんでいても、同時にスマホなどを使ってSNSに発信することで、他人とゆるくつながっていることができます。完全な孤独は嫌なものですが、一人で楽しんでいる最中にSNSでつぶやくことで、他人と趣味を共有できるようになったのです」

そうは言っても、一人でいる姿を他人に見せるのは恥ずかしい。そんな人のために、各社はさまざまなサービスを展開している。その最たるものが、本来はファミリー向けだったはずのファミレスで、一人用のボックス席が登場し、人気を博しているという事実だ。生活経済ジャーナリストの和泉昭子氏はこう話す。

「ファミレスでは、周りが家族連ればかりなのに一人で入るのは、恥ずかしさを伴いました。そこで企業側は工夫をして座席をパーテーションで区切って一人席を作り、お客さんの羞恥心を取り除いたのです。もはや、『おひとり様』は人生の一時期を過ごす『ライフステージ』ではなく、生き方を表す『ライフスタイル』となったのです」

実際、ファミレスのガストは、電源やフリーWi–Fiを完備した『お一人様用ボックス席』を導入し、売り上げが伸びたケースもあるという。

東急スポーツオアシス上大岡店では、個室でトレーニングができる『個ジム』を導入して話題となった。壁面にレッスン動画を投影し、一人でも周囲を気にせずトレーニングに励むことができる。

「スポーツジムでは、隣の人の存在が気になったり、逆に他人に自分が見られることへの恥ずかしさがあったりしました。個室ならこうしたことを避けることができます」(前出・牛窪氏)

小さくても機能は充実

「ぼっちライフ」のトレンドは、いち早く家電業界にも押し寄せた。家電コーディネーターの戸井田園子氏が解説する。

「これまで家電と言えば、家族のための電気製品でしたが、最近はパーソナルユースの家電が多くなりました。少人数に適したサイズ・機能で、こうした生活家電は『個電』と呼ばれています。

イチオシは、『ジェイム』という食器洗い乾燥機です。これまで食洗機といえば、大型で水道工事も必要でしたが、これは業界初のタンク式で、工事は不要。賃貸物件に暮らす人にも人気です。使用する水も1回約6Lで、手洗いに比べて約17Lも節水できると言われ、水道代の節約にもなります」

冬の風物詩だったこたつも、一人用になるとその姿を大きく変える。『着るお一人様用こたつ2』はその名のとおり、身につけて使用する。

「素晴らしいアイデア商品です。部屋全体を暖房で暖かくする必要がないので、電気代の節約にもなります。そのまま歩けるのが秀逸で、ズボラな生活をする人には欠かせません」(戸井田氏)

『着るこたつ』を発売するメーカー、サンコーは他にも一人用家電に特化した商品を多数取り揃えている。家電・ITジャーナリストの安蔵靖志氏が言う。

「サンコーの製品は遊び心が特徴で、たとえば『俺の自販機』(1万5800円)は、コンパクトな缶飲料専用の冷蔵庫なのですが、ボタンを押すと取り出し口から出てきます。『俺のバリスタ』(7980円)は一人用コーヒーメーカーで、豆を挽くところから抽出まで全自動で行い、本格的なコーヒーを楽しめます。

こうした一人向けの家電が注目されるようになったのは、’14年にイデアインターナショナルが発売した『ブルーノ コンパクトホットプレート』の大ヒットがきっかけでした。それまでの一人用家電は、安い代わりに機能も見た目もチープでしたが、コンパクトで機能的にも家族用と遜色ないものを各社が競って開発するようになったのです

安蔵氏が実際に愛用するのは、アイリスオーヤマの電気圧力鍋だ。火を使わない圧力調理で、カレーや豚の角煮をボタン一つで作ることができる。

おしゃれなデザインなので、そのまま食卓に持っていっても、チープさが出ないのもおすすめポイントです

家族と暮らしていて自分の空間がなく、自宅でも一人になりたいと切望する家庭持ちも多いだろう。そんな人は、『ぼっちてんと』はいかがだろうか。

「『ゲームの世界観に入り込んでプレイできる』とゲーマーの方に好評だったのですが、仕事や受験勉強など、集中できる環境を必要としている方がご購入されることも多いです。家族に自分の趣味を不用意に見られたくないというニーズもあるようです」(バウヒュッテ広報担当者)

人生100年時代、様々なグッズやサービスで「ぼっちライフ」を極めよう。

 

『FRIDAY』2019年12月6日号より

  • 撮影結束武郎

Photo Gallary4

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