25年ぶりの全勝対決 12・1ラグビー早明戦キーマンが語る勝機

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関東大学ラグビー対抗戦Aでここまで無敗の早稲田大学(早大)、明治大学(明大)が、12月1日、東京・秩父宮ラグビー場で直接対決する。伝統の早明戦が全勝同士でおこなわれるのは、1994年度以来のことだ。当時は明大の田中澄憲監督が1年生部員だったと考えれば、隔世の感がある。

チケットはすでに完売。2019年度の早明戦は、いまのところワールドカップ日本大会以降で最も注目される国内公式戦と言えるだろう。

早稲田の司令塔岸岡は、ラグビーについての研究を日々SNSやnoteを通じて発信している

大一番を控える早大の司令塔、岸岡智樹はこう語った。

「(周りは)25年ぶりの全勝対決と言ってくださっていますけど、それはいい意味で考えていないというか。ただ、今年の明大と今年の早大が戦うだけだと、僕自身は思っています。先輩の築いた歴史にたまたま25年ぶりというタイトルがつく。そこに関しては、気負いなくやれるかなという感じです」

岸岡は、1年時からスタンドオフでレギュラーをつとめる4年生。50メートルを6秒台前半で走るスピードを活かし、今季ここまで9トライを挙げている。何よりボールをもらう前に彼我の情報を収集し、適宜パス、キックを散らす。

試合5日前に上井草であった練習後は、「うん」「…なるほど」と、聞き手の意図を察しつつ、大一番への意気込みを語っていた。

かたや明大の武井日向主将は翌朝、八幡山でのトレーニング後に決意を語った。スクラム最前列中央のフッカーにあっては身長170センチと小柄ながら、むしろその低さを活かして相手の下半身へタックルを連発する。プレースタイルと同様、誠実な口ぶりで岸岡と似た見解を示す。

「25年ぶりという機会は選手全員がチームとしてポジティブに、楽しみに捉えています。(特別な状況については)そんなには意識していないというか、(目指すは)早明戦という1戦に勝つことだけです」

では両軍は、ライバルを倒すべく何に注力するのだろうか。

まず明大に対し、早大の岸岡はこう言う。

「いまの明大の強さの根源はフォワードのセットプレーにある」

昨季の大学選手権を制した明大は、就任2年目の田中監督のもと試合形式のトレーニングで運動量とフィジカリティを磨いてきた。キック捕球後の局面では、スタンドオフの山沢京平とフルバックの雲山弘貴が長短のキックの蹴り返しとカウンターアタックを織り交ぜる。攻守逆転後の素早い展開では、コンビネーションの深みもにじませる。

だが、岸岡は、この万能型チームが持ついくつかの脅威のうち「セットプレー」、特にスクラムに焦点を絞る。フォワードが8対8で組み合うこのプレーを減らすことで、明大の通常運行を阻む考えだ。

なおのこと最小化したいのは、自陣での相手ボールスクラムの機会。そのため「エリアマネジメントもかなり大切だと個人的に思っている」と岸岡は続ける。

自陣を脱出する時は、山沢や雲山らのカウンターを防ぐべく大きくタッチラインの外へ蹴る。グラウンド中盤からさらにエリアを奪う場合は、相手を背走させるロングキック、味方の再獲得を促すハイパントを蹴り分ける。このように明大を自陣に閉じ込めた先で、味方の強みを発揮したいと岸岡は言う。

「簡単に言うと、自分たちは走って勝たないといけない。ボールを継続する時も、もしボールを手放すような時も、より多くの運動量を持っておこなう。さらには、1対1(ランナーとタックラーのぶつかり合い)で勝たなくてはいけない」

司令塔の言葉通り、早大のモットーは「運動量」。相良南海夫監督体制2年目の今季は、春先の走り込みの量を従来よりも増加。一昨季まで2シーズン戦った山下大悟前監督時代のリクルーティング、肉体強化の成果をベースとしつつ、持久力を付与する。

明大が誇るナンバーエイトで4年の坂和樹、ロックで3年の箸本龍雅といったランナーが攻防線上へ駆け込んでくるのに対し、ロータックルの光るフランカーで4年の幸重天、ジャッカルの得意なプロップで2年の小林賢太らが対抗。地上で寝そべる時間を最小化し、分厚い壁を敷きたい。

攻めても黒子役のロックで3年の下川甲嗣が、「試合中にロックがハードワークするかどうかでスコアが変わってくる。他大学のロックよりは走りたい」。そして攻撃陣形を作る際に軸となるのは、パスを供給する司令塔団だ。

岸岡と1年時からコンビを組む齋藤直人は、2020年にはサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するプロチーム)へ加わるスクラムハーフ。球を拾ってから投げるまでの速さ、パスとキックの正確性が光る。ラックの真後ろから走り込み、戦況を見定めてテンポを調整できるのも強みだ。

明治の主将、武井日向は、日本代表の田村優と同じく国学院栃木高校から明治大学という経歴

齋藤と岸岡の働きを見据え、武井は「我慢し続ける」と言う。

「ひとつひとつのタックルを80分間、全うし続ける。(接点から)いいボールを供給させない。齋藤、岸岡がやりづらい環境を作っていけたら。試合の入りから隙を与えないこと。それが向こうにとっても嫌だと思うので、『何回アタックしても隙がない(と思われる)』ようなディフェンスをする」

防御網を敷く際は、選手間の「早めのコミュニケーションが大事」と最後尾の雲山。早明戦では個人対個人のバトルだけでなく、組織対組織の駆け引きも披露しそうだ。

トライ王争いで岸岡、明大4年でウイングの山﨑洋之とともに1位タイの雲山はさらに続ける。

「相手はこちらのディフェンスに対してひとつひとつ、アタックの仕方、(各選手の)立ち位置を変えてくる。『このアタックに対しては、このディフェンスね』と、早めに対応してディフェンスができれば」

注目の一戦。校歌斉唱時、岸岡はファンの様子を見て心を落ち着ける。

「ゆとりを作らないと緊張で押しつぶされそうになる時もあるので、整列の時はスタンド全体を見渡すようにはしています。試合と違うことを考えることで、緊張はほぐれるのかなと」

一方で武井は、観客が沸き上がる大舞台に出るほどチームの進化を感じられるという。

「熱い試合も冷静に戦えている。ひとつひとつのプレーの質であったり、練習でやってきたことを試合で出せていたり、という部分がよくなってきている。これは去年にはなかった、チームでも成長した部分です」

心技体のすべてを充実させつつある両校。引き締まったゲームをしそうだ。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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