来年は慶応大に進学 報徳学園・山田響が自慢のキックで花園に挑む

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
報徳学園を主将として率いるFB山田響。ラグビー部初の慶応大進学が決まっている。着用しているウインドブレーカーは昨年度の高校日本代表の遠征で支給されたもの

この年末年始にある全国大会のあとの進路は決まっている。

慶応義塾大学の総合政策学部。

山田響(ひびき)は報徳学園のラグビー部出身者で初の「慶応ボーイ」となる。

その創部は1952年(昭和27)。68年目における輝きをこの高3生はまとう。

「自分としては報徳の先輩がいないところに進みたい、という希望がありました。チャンスをつかむことができてよかったです」

AO入試での合格に声を弾ませた。志望理由書には自身がより向いているとされる7人制ラグビーの研究・発展を書き、複数の教授との面接をくぐり抜ける。山田は学校では進学コースに在籍。評定平均は満点の5に近い。3時間弱の練習が終わってからも、机に向かうことを忘れなかった。

進む道を切り開く強い意志は主将らしい。それはラグビーでも変わらない。

フルバックとして最後尾から相手の穴を見つけ、50メートル6秒1のスピードで走り込む。一瞬で守備者を置き去りにする。174センチ、75キロの体が大きく見える。

その競技実績は抜群だ。2年生の昨年10月、アルゼンチンであった第3回ユースオリンピックに参加する。6試合中5試合に出場する。3位の結果はこれまでの男子7人制ユースでの最上位になる。

さらに今年3月には高校日本代表にも選ばれ、ウェールズにも遠征した。26人のメンバー中、下級生は山田を含めて4人だけ。大阪桐蔭の江良颯(はやて)、奥井章仁、東海大福岡のポロメア・フィナウだった。

どちらのチームでも世代の日の丸を背負う。

「海外の選手は日本人に比べて当たりなんかが強いです。そんなことを経験させてもらえて、自分にとっては自信になりました。キックも通用することもわかりました」

長所のひとつであるキックは利き足の左で50メートルは飛ばせる。

山田の在籍する報徳学園は兵庫県の西宮市にある私立男子校だ。ラグビー部の全国大会出場は今大会も含めて45回。4強1回、8強5回の戦績が残る。そのジャージーはエンジと黒の段柄。早稲田カラーである。

部のOBには活躍の場をサッカー界に転じ、Jリーグのチェアマンをつとめた大東和美(現日本スポーツ振興センター理事長=早大卒)や昨年度、監督として母校の明大を22年ぶりに学生日本一にさせた田中澄憲(きよのり)らがいる。

春の選抜2回、夏の選手権1回の優勝を誇る野球部からは慶大への進学者はいた。報徳学園、慶大、中山製鋼所と珍しく3つのカテゴリーで監督をつとめた福島敦彦らがいる。

山田が春から籍を置くことになる慶大は日本ラグビーのルーツ校だ。「蹴球部」と呼ばれるラグビー部は最古の1899年(明治32)創部。55回の大学選手権で優勝3回を記録する。

西條裕朗は山田を手放しでほめる。

「ヒビキはよく合格してくれたと思います。これはウチのクラブにとっての財産。後輩たちの可能性を広げてくれました」

西條はラグビー部監督と地歴公民の教員を兼務する56歳。慶大と同じ東京六大学の法大に進み、母校に奉職した。現在は校内で指導的役割を担っている。

山田は2001年(平成13)5月2日生まれ。兵庫県の明石市出身だ。

ラグビー一家に育つ。消防士の父・賢(たけし)は明石清水から大教大で楕円球を追った。子供は男3人。長男・駆(かける)は関大の3年生スタンドオフ。山田は次男。小5の三男・暉(ひかる)は父が代表の明石ジュニアラグビークラブに在籍している。

山田は小1から弟と同じクラブで競技を始めた。父は中央では無名の県立校にいながら、高3時には高校日本代表候補に名前が挙がった。山田はその血を色濃く受け継いでいる。

報徳学園に進んだのは兄のあとを追ったことや全国大会の常連だったことが挙げられる。この冬、山田はその集大成を迎える。自分自身で成長は感じ取っている。

「去年までは先輩たちがスペースを作ってくれて、そこに走り込む形が多かったのですが、今年は自分から、走れるスペースを意図的に作るようにしています」

中央のスクラムなら、相手の手薄なサイドを突く。キックオフからはロックに任せず、自らがその快足を生かし、捕球者となる。局面を打破しようとする姿勢がより鮮明になる。

99回目を迎える高校の全国大会は12月27日に東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。組み合わせ抽選は12月7日にあり、報徳学園は1回戦で山形中央と対戦することになった(28日、第1グラウンド、11時15分開始)。3校のAシード、東西10校のBシードからは漏れたが、春の選抜8強の関西学院を県予選決勝では19-14と破っている。シード校並みの力は持っている。

山田は目標を口にする。

「まずはベストエイトの壁を破って、ベストフォーに行くことです。その上で全国優勝を狙います」

報徳学園はここ2年連続して8強に進出している。ただ、2年前は東海大仰星に20-50、昨年度は大阪桐蔭に17-38といずれも優勝校に敗れた。1年から公式戦に出場している山田は「三度目の正直」を実現させたい。

「マークされるのはわかっています。でもその上を超えていきたいです」

慶大進学を手に入れた今、すべてをラグビーに集中させ、文武両道の3年間を終えたい。

  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

Photo Gallary1

share icon記事をシェアする

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事