寿命を延ばす2つの方法。「宇宙に行く」「ポリフェノールを摂る」 | FRIDAYデジタル

寿命を延ばす2つの方法。「宇宙に行く」「ポリフェノールを摂る」

一人は宇宙船で滞在、もう一人は地上勤務。一卵性双生児の兄弟に約1年間で起こった変化とは? 

一卵性双生児の兄弟のうち一人が宇宙飛行士として約1年間宇宙空間に派遣され、もう一人が地球上で生活した。この二人を比べた観察結果のなかで注目されたのが、加齢ともに短くなる染色体の一部“テロメア”が、宇宙での滞在によって長くなったということ。これは、細胞学的には“寿命が延びた”ということになるらしい。これと同じようなことが「ポリフェノール」を摂ることでもおこる。慶應義塾大学の井上浩義教授に聞いた。 

国際宇宙ステーションで1年間任務したスコット・ケリー氏(右)と、マーク・ケリー氏(左)
国際宇宙ステーションで1年間任務したスコット・ケリー氏(右)と、マーク・ケリー氏(左)

宇宙に滞在したら、“命のろうそく”と言われる「テロメア」が伸びた! 

2016年、340日のISS滞在を終えてスコット・ケリーさんが地球に戻ってきた。一卵性双生児のもう一人、マーク・ケリーさんはNASAで地上勤務だった。宇宙で過ごすと、体にどのような変化が起こるのか、同じ遺伝子をもつ2人を比べてみたところ、驚くべきことがわかった。宇宙から帰還したケリーさんの、“命のろうそく”“命の回数券”と呼ばれる「テロメア」が、伸びていたというのだ。

「テロメア」とは、染色体の末端についている保護キャップのようなもので、“命のろうそく”“命の回数券”と呼ばれるのは、細胞分裂のたびに数が減って短くなるためだ。生まれたときは1万5000ほどあるが、35歳で半減すると言われている。

「テロメアは、加齢とともに数が減るだけでなく、ストレスを受けたり、病気をすることで短くなることもわかっています。また、短くなるにつれてガンの発生率が上がっていくことから、ガンの研究者たちもテロメア研究に注目しています」(井上浩義氏 以下同) 

つまり、テロメアは、数が多く、長いほど、健康で若々しくいられるということだ。

「一般相対性理論では、重力の大きなものの近くにいるものほど時間は遅く進むことになっている。つまり、地球という大きな重力の近くにいる人より、宇宙ステーションという重力の非常に小さな状態にいる人は速く時間が進む(老化する)ことになる。けれど、実際にはそれとは反対のことが起きた。ただ、なぜそうなったのかは、まだわかっていないようです」

X状のDNAの先端部分が“命のろうそく”と呼ばれる「テロメア」
X状のDNAの先端部分が“命のろうそく”と呼ばれる「テロメア」
テロメア研究の第一人者・エリザベス・ブラックバーン博士は、2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞
テロメア研究の第一人者・エリザベス・ブラックバーン博士は、2009年にノーベル生理学・医学賞を受賞

ポリフェノールが「テロメア」の合成酵素テロメラーゼにいい環境を作る

だが、誰しもが宇宙へ行けるわけではない。しかも、スコット・ケリー氏の、伸びたテロメアは地球帰還後、わずか2日以目に縮み始め、半年後には、地上にいたマーク氏とほぼ同じ長さになってしまったのだとか。

「テロメアは、テロメラーゼという酵素の働きで、短くなるのを止めたり、遅らせたりできることがわかっています。そして、この酵素の働きを助ける環境を作れるのが“ポリフェノール”なんです」

テロメラーゼは活性酸素によって働きが阻害される。その活性酸素を取り除くのがポリフェノールなのだ。

「細胞に酸化ストレスをかけ、短くなったテロメアが、どのような成分によって復活するか、ありとあらゆる成分で実験したところ、ポリフェノールで効果が見られたんです」

ポリフェノールは植物などに存在する苦みや色素の成分で、紫外線から自らを守るために進化の過程で作り出したもの。自然界には8000種類もあると言われている。しかし、これらすべてのポリフェノールのなかで、テロメラーゼに効果があるものは限られているという。

その一つが「茶カテキン」。お茶やピーナッツの薄皮に含まれているポリフェノールだ。このほかに松脂に含まれている「フラバンジェノール」、ニンニクに含まれる「スチルベン」、鮭やカニに含まれる「アスタキサンチン」、トマトの「リコピン」、みかんの「クリプトキサンチン」なども、テロメア維持の効果があると考えられている。

緑茶の渋み成分が「茶カテキン」。日本人が長寿なのは、お茶のおかげ!?
緑茶の渋み成分が「茶カテキン」。日本人が長寿なのは、お茶のおかげ!?

「直接テロメラーゼに働きかける薬剤の研究も進められていますが、遺伝子を傷つけてしまう可能性もあるので、なかなか進んでいません。現状では、上記のポリフェノールを含む食品を積極的に摂ることが、“テロメア”維持には効果的なようです」

ストレスでも、短くなるというテロメア。30代、40代は仕事でもストレスを受けやすく、心身ともに疲弊しやすい時期だ。しかし、生活や環境が改善されれば、本来あるべきテロメアの長さに回復させることもできるという。

「もともと寿命が80歳の人を、90歳まで長生きさせることができるかどうかはわかりません。けれど、ストレスなどで70歳までしか生きられない状態になっている人を、本来の寿命の80歳まで生きられるように回復させることはできる。テロメアを良い状態で維持することで、天寿を全うすることができるのです」

現在、テロメアの状態を調べることで、健康状態や病気のリスクを診断しようという試みも進んでいる。今のところ、宇宙旅行に行けない人は、ポリフェノールをしっかり摂って、テロメアを大事にする必要がありそうだ。

井上浩義 慶應義塾大学医学部教授。医学博士、理学博士。日本抗加齢医学会理事、非営利活動法人放射線安全フォーラム理事、非営利活動法人日本抗加齢協会理事などを務める。著書に「カカオでからだの劣化はとまる」(世界文化社)、「知らないと危ない毒の話」(アーク出版)など多数。

  • 取材・文中川いづみ
  • 写真アフロ

Photo Gallery4

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事