ラグビーW杯で奮闘!田村優が語る日本人スタンドオフの厳しい現実

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トップリーグの開幕は20年1月12日。キヤノンは初戦で、神戸製鋼と対戦する

日本代表の価値が再確認させられた。ラグビーワールドカップ日本大会で赤と白のジャージィを着て初の8強入りを果たした田中史朗、田村優が11月25日、所属先のキヤノンが持つ都内のクラブハウスで会見。今後のナショナルチームへの関わりについて語った。

「スポーツをやるうえで代表は目指さないといけないですし、その気持ちがなくなればプレーヤーとしても落ちていく。代表を目指しながらプレーしたいです」

こう語ったのは田中。3大会連続でW杯に出たスクラムハーフだ。

2013年には日本人で初めてスーパーラグビー(国際リーグ)でプレーしたパイオニアは、34歳で迎えた日本大会では全5試合に途中出場。戦況に応じてリズムをコントロールした。

4年後のフランス大会時は38歳。運動量や身体のキレを求められるポジションにあって若手の台頭は著しく、「自分自身の年齢、下からもいい選手が出てくることはコントロールできない」と認めたが、自分の意志でナショナルチームから去るつもりはない。今後も代表入りへ挑む。

前年度までパナソニックでプレーしてきた通称「フミさん」は、陽気なチームマンとしての立場も自覚している。

「若い選手に声をかけていきたい。それはこのキヤノンでも一緒です。(移籍)1年目なので偉そうにはできないですけど、喋らない選手やチームから離れている選手に声をかけてひとつにまとめる。そういう役をしていきたいです」

パナソニックから今年キヤノンに移籍した田中史朗

一方で田村は、簡潔な意思表明は行わない。代表活動に携わるか否かに関する質問へは、速射砲のごとく「ノーコメントでお願いします。色々と書かれるのが嫌なので」と返す。

「僕が決められる範囲ではない。僕の、選択じゃない」

歴史的3勝を挙げた2015年のイングランド大会時は4戦中2戦でプレーするのみだったが、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制下では司令塔のスタンドオフに定着。30歳で迎えた日本大会でも5試合全戦に先発し、相手の特徴ごとに変わるゲームプランを遂行した。

準々決勝で南アフリカ代表に敗れた10月20日は「次へのバトン渡しは終了しました」としたが、これを「代表引退」と断定されるのは好まない。質問に応じる形で、多角度的な視点から自らのスタンスを説明した。

「まだ終わったばかりで先の4年ことは考えられないです。40歳まではラグビーをしたいので、ラグビー選手であること、毎年、毎年、ハイパフォーマンスを目指すのは間違いないです。けど、それがどこで、というのは自分でもわからないです。僕自身、そこまで約束もきっちりできるわけではないので。ただ代表となると、生半可な状態で行くものではないと思っている。本当に自分が100パーセントの状態で、かつ向こうから求められる状況じゃないと無理だと思うので。そこは、僕に決める権限はないです」

さらにこのように続けた。

「僕は2012年に代表に入って、その時は2019年のW杯が日本でやるのが決まっていたので、そこまではやると自分のなかで決めていて。落とされる可能性もありましたが、そこでも頑張って。そして自分で決めたターゲットの年を迎えて、始まりより終わりの方が――僕だけの力じゃないですけど――格段にいい状態のチームにできたという思いはある。去る時はいい状態で去るのがベストかなと思います」

そして、目下の目標について触れた。

「選手としての可能性…。それは無限じゃないですか。ラグビーはまだ続けますし、ここから3年ぐらいが個人的には絶好調な年になると思っているので。まだ僕がラグビー人生で手に入れてないものは日本一。そこは絶対に獲りたいです」

田村の言葉にある「始まりより終わりの方が格段にいい状態に…」と似た話は、イングランド大会日本代表の正スタンドオフだった小野晃征も口にしたことがある。日本ラグビー界で献身する思いを「チームのジャージィは、自分だけのものじゃない。ただ、そのジャージィの意味やプライドは、自分で変えられる。自分が入ってきた時よりいい状態にして、次につなげたいなと」と表現していたのだ。ラグビー王国で小野が幼少期を過ごしたニュージーランドに伝わる哲学らしい。

田村は淡々としかし力強く、スタンドオフというポジションの重要性と難しさを語った

フランス大会に向けた日本代表は、日本大会までの日本代表が築いた文化をより良い形にアップデートするのを使命のひとつとするだろう。

日本ラグビー協会は、ジョセフとの4年間の契約延長を発表。ボトムアップ型のチームを支えたトニー・ブラウンアタックコーチ、長谷川慎スクラムコーチらにも続投を要請している。

スーパーラグビーのハイランダーズでもジョセフやブラウンと戦ってきた田中は、指揮官の留任を「嬉しいですね」とし、歴史的背景を踏まえて展望する。

「彼(ジョセフ)は日本のことが好きですし、エディー(・ジョーンズ前ヘッドコーチ。イングランド大会までの4年間、指揮した)の土台に彼のエッセンスを加えて結果を残している。彼の考えを知っている選手が選ばれると思うので、『ONE TEAM(ジョセフ体制下のチームスローガン)』になるのはいままで以上に早い」

自身が初めてW杯ニュージーランド大会に出て未勝利だった2011年と比べ、いまの日本代表では「ひとりひとりのコミュニケーション能力が上がっています」とも発言。今後は日本人選手の英語学習がマストだとした。

「2011年は外国人選手と日本人選手が少し離れていて、エディージャパンになってリーチ(マイケル)、ヘンディー(ツイ ヘンドリック)、晃征が(両者の)間に入って少しずつ固まってきた。今回も、日本国籍を取った選手たちがお互いを寄せ合って『ONE TEAM』になれた。これからも、大学や高校から来日した外国出身選手が入ると、よりチームはまとまるのかなと。(日本人選手に求められるのは)英語です。日本のプロリーグ(2021年に設立予定)ができればいいですが、世界に出て、世界のラグビーを知って、(強豪国における)代表の大事さ、チーム愛も学んでもらう。そうすればもっともっと皆が日本代表を好きになって、日本のために頑張るんじゃないのかなと」

田村は「個人的にはオールブラックス(ジョセフの母国であるニュージーランドの代表チーム)でやる姿も見たかったですけど、(続投は)日本にとっては素晴らしいこと」とする一方、次世代のスタンドオフを育てる難しさについて言及。国内トップリーグでは海外出身のスタンドオフと契約するクラブが多く、若い日本人選手が試合経験を積みにくい点を指摘する。

「次の代表では外国人が10番(先発スタンドオフ)をやる可能性も高いと思います。なかなかいまの日本人の若い選手が、育っている感じはない。どのチームも外国人を起用している。埋もれちゃっている。かわいそうです」

次回ワールドカップへの挑戦について明言しなかった田村

田村は淡々と現状分析をするとともに、トップリーグにおけるスタンドオフについてさらに持論を展開した。

「どのチームも勝たなきゃいけないので、外国人を連れてきて…となると、大学生上がりの日本人は(ポジション争いで)太刀打ちできないことがあります。僕はたまたま(最初に入った)NECにスタンドオフがいなくて、1年目(2011年度)から辛抱強く使ってもらって、そこからジャパンに。本当にラッキーだった。僕がいまの大学生だったら、弱いチームを選びます。トップリーグの一番下。出られそうなチームを選んで経験を積むというのがアドバイスといいますか…。試合に出ていないと、どんな選手でも目はつけられないし、自分のターゲットをしっかり決めてやれば選ぶチームも変わってくる。

僕はそんなに強くないチームを選んできた(トップリーグではルーキーイヤーの4強入りが最高)。プレッシャーのかかる状況は、テストマッチが初めてではなかったです。トップリーグでも毎試合、自分の仕事ではないこともしながら自分のプレーをする状況でした。それは僕が望んでしたことです。そんななかでもこのチームからは勝つ喜びももらっているので、ここまで自分のイメージ通りというか、色んな人に助けてもらっていい環境にいます。ただ、日本人がトップリーグだけでレベルアップするのはなかなか大変じゃないですかね」

2人の所属するキヤノンは1月中旬からのトップリーグ開幕へ準備中。ナショナルチームの日本大会後初のテストマッチは、同リーグ終了後の7月だ。『ONE TEAM』を旗印に列島を盛り上げたジェイミージャパンは、どんな形で第2章をスタートさせるだろうか。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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