山健組では60歳・組長自ら襲撃 暴力団ヒットマンが高齢化の理由 | FRIDAYデジタル

山健組では60歳・組長自ら襲撃 暴力団ヒットマンが高齢化の理由

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11月中旬、都内の寺にて。髙山清司若頭(中央)は、藤井英治若頭補佐・國粹会会長(右端)や高木康男若頭補佐・清水一家総長(左端から二人目)らと都内を回った
11月中旬、都内の寺にて。髙山清司若頭(中央)は、藤井英治若頭補佐・國粹会会長(右端)や高木康男若頭補佐・清水一家総長(左端から二人目)らと都内を回った

・山健組組長・中田浩司容疑者(60):8月に弘道会組員2人を狙撃

・弘道会傘下組員・丸山俊夫被告(68):10月に山健組系組員2人に発砲

・山口組系元組員・朝比奈久徳容疑者(52):11月に神戸山口組幹部を射殺

これらは最近起きた、暴力団による襲撃事件だ。容疑者の年齢を見ると、いずれも50歳以上の“高齢者”ばかり。ヒットマンといえば以前は「鉄砲玉」と呼ばれ、若衆が担うことが多かった。なぜ高齢化が進んでいるのか。長年暴力団を取材してきた、ジャーナリストの鈴木智彦氏が読み解く。

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――山口組と一和会の間で起きた山一抗争(’84~’89年)などを振り返ると、若いヒットマンが多かったですね。

「抗争相手の組員を殺害して、刑務所に入ることを暴力団の専門用語で『ジギリをかける』(自分を傷つける『自切り』からの転意)と言います。かつては20代の組員がジギリをかけ、刑期を終え出所し40代で幹部になるというのが出世コースでした。刑期は戦後間もない頃は7~8年、’80年代では15年~20年ほど。ヒットマンになって逮捕される見返りに、シャバ(刑務所の外の世界)に出れば憧れの幹部になれる魅力があったんです」

――若いヒットマンが減った理由はなんですか?

「刑期の影響が最も大きい。平成に入ると事件の厳罰化により、1人の殺害で無期懲役を科されるようになります。さらに暴力団排除条例などのため、たとえ出所できたとしても組自体が消滅している可能性も出てきた。そんな状況では若い組員が希望を持てず、危険をおかさなくなったのも当然でしょう」

――組は支援もできなくなった?

「はい。組は財政的な余裕がなくなり、ヒットマンに手厚いサポートをできなくなったんです。以前はヒットマンが刑務所に入っている間、組が彼の家族の生活費や弁護士費用などを負担していました。男の子がいる家には自転車を贈り、女の子にはオルガンをプレゼントするなど細かい気配りをしていた。また月に一度は、家族や組の幹部が面会に行っていました。しかし長期服役者の刑務所は旭川や熊本など遠方にあり、移動費用もバカにならず足が遠のき始めた。こうしたサポートがなくなれば、安心して服役などできません」

――今年8月の事件では、山健組の組長みずから襲撃しています。

「暴力団の論理ではありえません。個人的には信じられない。本当なら何かワケのある、個人的な復讐でしょう。組長の威信が低下したのかもしれない。建前上ヒットマンは志願して襲撃したことになっていますが、実際は組長の命令ですよ。これまでヒットマンは、警察の取り調べを受けても『自分の一存でやった』と答えていた。オヤジ(組長)と子分の間に、信頼関係があるから成り立つことです。もしヒットマンに『上の指示でやった』とうたわれた(自白された)ら、どうなると思います? 共謀共同正犯として組長も逮捕されますよ。現在は組長に親分としてのカリスマ性がなくなったのか、若い組員を心服させ信頼関係を築くことが難しくなった。組長も危なっかしくて、部下に襲撃を命じられないのでしょう」

――となると組長は自分で実行する以外、誰に任せればいいんですか?

「ワケありの組員です。身寄りもカネもない高齢者や、余命いくばくもない病気の組員などですよ。暴力団員は銀行口座を作れなければ、マンションの部屋も借りられません。中には無銭飲食などで、わざと逮捕される組員もいる。高齢暴力団員にとって、刑務所は最後のセーフティネットになっているんです」

――11月の事件では、自動小銃M16が使用され衝撃を受けました。

「世間の話題になり、インパクトを与えたかったのでしょう。実行犯の朝比奈容疑者は、六代目山口組幹部・安東美樹組長の流れをくむ組員です。安東組長は若い頃、襲撃にロケット砲などを使った武闘派。M16の使用は、安東組長のDNAだと思いますよ。暴力団はバズーカ砲だろうが機関銃だろうが、ほとんどの重火器を密輸できます。ただ破壊力の大きい武器は、まず使用しません。一般人を巻き添えにする可能性があるからです。暴力団同士の抗争に収まらず一般人に犠牲者が出たとなれば、警察が本腰で動き組自体が存続の危機にさらされますからね。そのため手榴弾など、破壊力の大きい武器は需要が低く意外に安い。5~6万円で手に入ると思います」

六代目山口組ナンバー2・髙山清司若頭の出所で、激化が予想される山口組抗争。高齢組員は、虎視眈々と対立組織幹部の命を狙っている。

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すずき・ともひこ ‘66年、北海道生まれ。日本大学芸術学部中退後、暴力団専門誌『実話時代』で活躍。『実話時代BULL』編集長を務めた後フリーに。主な著書に『ヤクザと原発』(文芸春秋)、『サカナとヤクザ』(小学館)、『昭和のヤバいヤクザ』(講談社+α文庫)、『教養としてのヤクザ』(小学館新書、溝口敦氏との共著)など。

  • 撮影結束武郎

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