パキスタンはeスポーツ世界最強? 日本人ゲーマーを蹴散らす秘密
優勝者は語った。「パキスタンには、オレより強い選手がまだ沢山いる」と――。
突如現れた最強軍団
「日本のプロゲーマーたちの間でも、パキスタンで『鉄拳7』が流行していることは、最近までほとんど知られていませんでした」(eスポーツライターのスサキリョウタ氏)
近年、世界中で大きな盛り上がりを見せるeスポーツに、地殻変動が起こっている。今年2月、格闘ゲームの世界大会「EVO Japan 2019」の『鉄拳7』部門で、無名のパキスタン人、アルスラン・アッシュ選手(24)が〝番狂わせ〟の優勝を果たしたのだ。
彗星のごとく現れたアルスラン選手は大会での優勝後、こう言い放った。「パキスタンには、オレより強い選手がまだまだ沢山いる」と――。
少年漫画のような熱い展開に、eスポーツ界は騒然。その後も、別のパキスタン人選手が次々と『鉄拳7』の世界大会で優勝するなど、快進撃は続いている。
パキスタンのネット環境は行き届いておらず、先進国並みのインフラは整備されていない。にもかかわらず、なぜ彼らはこんなに強いのか。日本屈指の実力を持つ『THY/Team 遊ING』所属のプロゲーマー、チクリン選手は話す。
「むしろ、ネットにつながっていないことがアドバンテージかもしれません。最近、日本人プロゲーマーは家庭用ゲーム機を使ったオンライン環境で練習することが多い。しかし、ネットだと対戦した人と意見交換せずに終わってしまいがちなので、上達には限界があります。パキスタン勢は現地のゲーミングカフェに集まって対戦しているので、お互いに試行錯誤しながら強くなっていくのです」
チクリン選手は「EVO Japan 2019」でアルスラン選手に敗れた後、パキスタンで武者修行をしたという。
「アルスラン選手の言っていたことは本当でした。パキスタンでは彼と同レベルのプレーヤーが10人近くいたんですが、対戦してもほとんど勝てなかったんです。しかし、彼らはこんなにも強いのに、ゲームで生活することはできていない。一方で自分は彼らより弱いのにプロとして生活ができている。この現状に申し訳なさと恥ずかしさを感じているので、次の大会では『世界一』を目指して全力で頑張りたいと思っています」(チクリン選手)
12月7〜8日には、『鉄拳7』ワールドツアーの決勝大会が行われる。パキスタン勢の必勝〝コンボ〟はしばらく続きそうだ。

『FRIDAY』2019年12月20日号より
写真:EVO Japan 2020実行委員会(1枚目) 朝日新聞社