明治の連覇か、早稲田、天理の逆襲か ラグビー大学選手権が熱い!

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早稲田大スタンドオフの岸岡智樹は、東海大大阪仰星高校出身。SNSでもラグビーに関する情報を発信している(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

第56回全国大学ラグビー選手権大会は2019年11月24日に各地で始まり、12月15日からは関東、関西の上位校が相次ぎ登場する。決勝は2020年1月11日に新装された東京の国立競技場で開催されるとあり、参加選手のモチベーションは特に高い。

国立競技場で大学選手権が行われるのは同会場が解体される前の2013年度以来。昨年度までの4シーズンは、約2万5000人収容という秩父宮ラグビー場でおこなわれていた。今年はその決勝が、約6万席の会場で開かれるのだ。

ワールドカップ(W杯)日本大会を機にラグビーへの注目度が増すなか、早大4年の岸岡智樹は前向きに話す。

「W杯の準決勝(神奈川・横浜国際総合競技場)を現地で見させていただきました。何万人も集まる試合会場で、こういうところに立てたらいいなというイメージを抱いた。学生ながらそういう舞台に立つチャンスがあることに、素直に嬉しいと思いました」

岸岡をスタンドオフに据える早大では、20年にサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦)へ加わる齋藤直人主将がスクラムハーフを務める。司令塔の岸岡は、ボールを持たない時には50メートル走6秒台前半というスピードを一気に落として両軍のポジショニングなどの情報をサーチ。数手先を見越し、適宜プレーを選択する。かたやパスの供給源となる齋藤は、常に接点の真後ろへ入って簡潔にさばく。キックも鋭い。

持久力と技術の合わせ技で選手権の優勝回数を史上最多の15から16に伸ばそうとしている早大だが、加盟する関東大学対抗戦Aでは今季2位に終わった。12月1日に秩父宮であった明大との全勝対決を36―7で落としたからだ。

昨季22年ぶり13度目の大学日本一に輝いた明大では、2年前にヘッドコーチで入閣した田中澄憲監督は勤勉さを尊ぶ。

特に田中監督体制2年目となる今季は、武井日向主将がチームを引き締める。「洗濯は部屋ごと」「廊下に私物を出さない」など細かい寮の生活面を見直しながら、練習では走り込みの際に定めた線まで全力で走るなど、横着する隙間を作らない。試合では昨年からの強みだったタフさや起き上がりの速さに加え、ターンオーバー成功後の素早い攻撃も披露する。歴史的に全国の強豪高校から多くのタレントを集めてきた名門が、そのタレントをさらに鍛える好循環にいる。今度の選手権でも優勝候補の最右翼。少なくないオールドファンは、トーナメント表上それぞれ逆の山に入る明大、早大との決勝を期待している。

早稲田戦でもトライを決めたプロップ安昌豪(アンチャンホ)の活躍が期待される(写真:築田純/アフロスポーツ)

ただ、早大の山には、関西大学Aリーグを4連覇した天理大が加わる。

昨季全国準優勝した際と同じく、小柄な戦士がタックルで鈍い音を鳴らす。突破役の留学生は、下働きにも精を出す。特にサンウルブズ入りを決めているアウトサイドセンターのシオサイア・フィフィタは身長187センチ、体重103キロという堂々たる体躯でスピードがある。小松節夫監督は8月下旬の時点でこう話していた。

「昨季の選手権決勝が終わった直後であれば、『もう差はない。あとはちょっとしたメンタルと経験だけ』という風でしたが、今年の夏合宿が終わった地点ではだいぶ差があると感じました」

関東上位勢との距離感を、どこまで縮められているだろうか。

明大、早大、天理大、さらに関東大学リーグ戦1部で1位だった東海大が登場するのは、21日の準々決勝(秩父宮、大阪・花園ラグビー場)から。さかのぼって15日の3回戦では、一昨季まで選手権V9の帝京大が関東大学リーグ戦3位の流経大と激突(埼玉・熊谷ラグビー場)。ここを勝ち上がれば、昨季の準決勝(秩父宮)で敗れた天理大と花園で再戦する。

今季の帝京大では、1996年就任の岩出雅之監督が「連覇をするなかで(現在の上級生の)育て方を間違った」と反省。今季センターからフランカーに転向した本郷泰司主将と同席の記者会見でも、いつも手厳しい。

「上級生が、(力のある下級生に)遊ばせる力(組織面での穴をカバーしながら一貫性のあるパフォーマンスを重ねる力のことか)がない。12~13人でゲームができるようなたくましさが上級生にあれば」

加盟する対抗戦では秩父宮で早大、明大、さらに選手権出場を逃した慶大にも敗れた。とりわけ11月30日の慶大戦との最終戦では、ミスで自滅した。

ただ、遡って24日には、優勝した明大に17―40と大敗しながらぶつかり合いでは相手を押し返すシーンを連発。頂上決戦へ挑む最低条件は整えつつあった。慶大戦後の指揮官は、本郷主将の「厳しいゲームを勝ち切れなかった」という旨の発言に「(実際は)厳しいゲームじゃなかったですけど、厳しいゲームにしちゃった。そこがずれています」と反応した。

「そういうことが感覚的にも発言にも出ないように、僕が厳しくします。それが、今年の選手に対する一番の愛情かなと」

難関校の試験の出題傾向を絞り込む名教師のように、現有戦力がてっぺんに立つための追い込み学習に注力する。

「精一杯、本気の練習を積み重ねていきたい」

不気味なのは前述の東海大も同じだ。秩父宮で30日にあった大東大とのリーグ戦最終戦では、主力を怪我で欠いて27―18と辛勝。木村季由監督は「今年のチームはある程度役者が揃わないと…」と漏らしていた。

しかし裏を返せば、こうも捉えられる。グラウンド内外での目配り、気配りのできるスタンドオフの眞野泰地主将ら主軸が揃えば、数年来鍛えてきたフィジカリティも駆使して初優勝を狙える…。京産大か日大を準々決勝で下せば、1月2日の準決勝で明大に挑める。

眞野とは中学時代からの同級生であるプロップの中野幹副将は、故障で松葉杖をついていた東海大仰星高校2年時に木村監督へ「僕を採ってください」と直訴してスポーツ推薦を勝ち取った熱血漢。学生生活最後の戦いに向け、目に涙を浮かべて決意を語る。

「正直な話、現段階(11月末)だったら明大、早大のようにスキルフルな選手は(そう多くは)いないかもしれない。ただ、そこに対して逃げたりはしないですし、そこを超えていこうと思ってやっている。そのためには何をするか。まとまる。全員でアタックして、全員でディフェンスする」

W杯での日本代表8強入りに伴うブームの余波をどこまで受けるかは未知数だが、出場選手の多くはあの非日常的な日々に刺激を受けたのは間違いない。

明大の3年生ロックの箸本龍雅は、同期のスタンドオフ山沢京平とともに日本代表対スコットランド代表戦を横浜で生観戦。2023年のフランス大会出場への決意を新たにした。

思えば4年前のイングランド大会で日本代表が3勝した際も、当時の大学選手権を連覇していた帝京大の姫野和樹はこう漏らしていた。

「やはり僕は日本代表になりたいと目標がクリアになった」

年始まで続く大学選手権もまた、未来の日本代表の1次オーディションとなりうる。王座の行方を含め、見どころは多い。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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