千葉女子大生放火殺人事件 殺害後もキャバクラで散財していた犯人

平成を振り返る ノンフィクションライター・小野一光「凶悪事件」の現場から 第37回

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2009年千葉県松戸市で発生した女子大生を殺害後、部屋に放火した殺人事件。犯行後には、女子大生名義のキャッシュカードから現金が引き出されていた。殺人事件を起こしながらその後もキャバクラなどで遊び、散財していた凶悪犯の素顔と行状にノンフィクションライター小野一光氏が迫る。

千葉県警が公開したA子さんのキャッシュカードで金を下ろす男。後に堅山が自分だと供述

2009年10月22日、千葉県松戸市にあるマンションの2階で火災が発生した。火元となった部屋には、住人の千葉大学4年生・A子さん(死亡時21)の遺体があり、司法解剖の結果、彼女の首や胸には刃物の刺し傷があることが判明し、首にはストッキングで絞められたような痕も発見された。

彼女の死について、殺人事件だと断定した千葉県警は、出火の前日の午後、A子さんのキャッシュカードを使って現金2万円を引き出した男の画像を11月2日に公開。奇しくもその日に千葉県内の民家に侵入し、在宅中の女性を包丁で脅して現金約18万円を奪った強盗および強姦未遂容疑で、11月17日に逮捕された竪山辰美(当時48)の存在が浮上する。竪山は自身が逮捕された事件についての取り調べのなかで、取調官の追及を受けて、A子さんのカードを使って現金を引き出したのは自分だと供述。当時、千葉県警担当記者は次のように説明している。

「竪山はATMでカネを引き出したことについてははっきりと認めています。しかし、A子さんの事件に話が及ぶと、『カードは拾った』や、『自分は(犯罪グループの現金引き出し役の)”出し子”』などと話し、殺害への関与については否定しています」

竪山は02年4月に神奈川県海老名市で、女性看護師(当時22)が住むアパートに侵入し、彼女の顔を殴打して現金とキャッシュカードを奪う、強盗傷害事件を起こしていた。その事件などで懲役7年の判決を受けて服役し、09年9月に出所したばかりだった。

出所後の竪山は、逮捕されるまで都内の1泊2800円のサウナに寝泊まりしていたことが確認されており、同店の店長は取材に対して以下のように答えている。

「リュックサック1つで9月の終わり頃から50日間ほど宿泊していました。『おはようございます、店長』と自分から挨拶してくる愛想のいい人でした。宿泊代も現金払いでしたし、とくにカネに困っているようには見えませんでした」

Aさんの事件が起きる前後、竪山は上野や日暮里などにある中国人クラブやキャバクラなどで豪遊を繰り返していた。上野の中国人クラブのホステスは振り返る。

「私がいたときはみんな竪山のことを『社長』と呼んでいました。これまで店に来たのは3回で、9月上旬と10月1日、それから10月11日です。支払いは現金で、最後に来たときはオープンからラストまでいました。シャンパンだけで5~6本入れてたので、お会計は19万円もしました。『女と別れて、自分に合う女を探している。男はハートが第一。ソープみたいな風俗は嫌いだから行かない。カネさえ払えば女なんていくらでも抱ける』と言ってたのを憶えています」

また、同店で10月11日に竪山と同伴出勤をした30代の中国人ホステスは言う。

「2回目の時(10月1日)の帰り際、『お前の電話番号教えろ』と言われ、私が教えると、自分の携帯電話を取り出し、番号を打ち込んでいました。そして11日(日曜日)の午後5時20分頃に、いきなり電話がかかってきたのです。『今日、店に行くからその前にご飯に行こう』という内容で、ママに尋ねると行きなさいというので、私が上野の松坂屋の前に着いたら携帯に電話することになりました。着いたのは6時40分頃。うちの店は日曜日、出勤時間が6時45分なんですが、同伴だったら8時までに行けばいいことを当時の私は知らなくて、焦っていました。それで『食事済ませてきた。早く店に行かないと』と言うと、竪山は『食事はいいけど、コーヒー1杯ぐらい飲もうよ』と言ってました。でも、『コーヒー飲まない。ママに怒られちゃうから、早く行こう』とせかすと、『なんだよ、食事はしないわ、コーヒーは飲まないわ、しょうがないなあ』と言いながらも、早足の私について店にやってきました」

同店のママは、店に来てからの竪山について、私の取材に語っている。

「竪山は『ママ、同伴だったらせめて食事かコーヒーくらいあるはずでしょ』と文句を言ってました。そこで私が『すみません。あの子は手伝いで来たばかりで、まだよくわかってないんです』と答え、食事をしていない竪山のために水餃子とアタリメを作って出しました。彼はレミー(マルタン=ブランデー)をボトルで注文してロックで飲み、女の子たちには1本1万5000円のシャンパンを頼んで、『飲んで、飲んで』とすすめていました。 シャンパンのきっかけは、やって来た3日間、毎回指名していた子が国(中国)に帰ることになると聞き、『ママ、シャンパン入れて』というものでした。指名していた子は3日間を通じて1人だけです。彼の服装はやってきた間、全部違いました。帽子もかぶっている日とそうじゃない日がありました。同伴した日は、そろそろ店が終わることを告げると、『おっ、わかった』と現金でおカネを支払い、『眠い、日暮里に帰る』と話していました」

また、その2日後の10月13日、竪山は日暮里のキャバクラで遊んでいる。同店の関係者は証言する。

「彼はオープンからラストまでずっといて、料金が9万4600円になったため、記憶に残っています。ニット帽を被っていて、外見は普通の服装で、とくに犯罪者風の凶悪な感じはありませんでした。店の外にいたうちのスタッフと一緒にやってきて、最初は『一緒に飲もう』と、そのスタッフも交えて飲んでいました。いろいろ飲み歩いているという話をしていて、上野の中国人パブで17万~18万円遣ったということを口にしてました。あと、上野近辺でよく飲んでいるということも。最初についたのは30歳でちょっとぽっちゃり型のYちゃんという子で、その子を指名して、Yちゃんはずっと竪山の席についていました。あと、途中で中肉中背の27歳の子も場内指名しています。彼は焼酎の水割りを飲んでいて、普通に楽しそうにしてました。さすがに長時間いるから、支払いは大丈夫だろうかと気になりましたが、お勘定の段階であっさりおカネを払ったので安心しました」

竪山が指名したYさんは10月末に別の店に移り、電話番号を聞いていた彼に連絡したところ、11月初旬に彼女がいる新しい店にも顔を出していたという。つまり、A子さん事件や当初の逮捕容疑となった、別の強盗および強姦未遂事件を起こした直後にも、遊び歩いていたことになる。

やがてA子さんに対する強盗殺人と現住建造物放火などの容疑で再逮捕され、続いて起訴された竪山に対して、裁判員裁判が開かれた千葉地裁は、11年6月に死刑判決を言い渡す。しかし、即日控訴した竪山に対し、13年10月に東京高裁は一審判決を破棄し、無期懲役の判決を下している。検察と弁護側の双方が上告するも、15年2月に最高裁は上告を棄却して、彼の無期懲役判決が確定した。

再逮捕のため佐倉署から松戸署に移送される堅山
  • 取材・文小野一光

    1966年生まれ。福岡県北九州市出身。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーライターに。アフガン内戦や東日本大震災、さまざまな事件現場で取材を行う。主な著書に『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』(文春文庫)、『全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと』(小学館)、『人殺しの論理 凶悪殺人犯へのインタビュー』 (幻冬舎新書)、『連続殺人犯』(文春文庫)ほか

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