泥臭さを追求したゴルフで覚醒! 石川遼はやっぱり「持ってる男」
ツアー最終戦で逆転優勝し、五輪代表の望みを繋いだ石川。“運”や“流れ”が味方するか
227ヤードの長いパー3。言わずと知れた東京よみうりカントリークラブの名物、18番ホールだ。ここで行われた「ゴルフ日本シリーズJTカップ」のプレーオフ3ホール目、4番アイアンを手にした石川遼(28)が打ち放ったボールは、ピンに向かって真っ直ぐ弧を描いた――。
ピン手前2.5mにつけ、なんなくバーディ。5位タイでスタートした石川が、ツアー最終戦で逆転優勝を果たした。ゴルフジャーナリストの武藤一彦氏が語る。
「プレッシャーがかかる中で、ロングアイアンで精度の高いショットを打てることは、力をつけている証(あか)しです。一方で、この大会での石川はティショットをスプーンで打ったり、安全策をとる場面が目立ちました。私が『正確性を求める新しいゴルフだね』と言ったら、石川は『違うんです、泥臭さを追求しているんです』と答えた。その考え方がいまのゴルフに色濃く反映されています」
石川は11月前半に2試合連続で予選落ちするなど、またスランプに陥ったかと思われた。だが、この最終戦では最終日に単独首位を走っていた今平周吾が18番ホールでダブルボギーを叩いて崩れると、見事に優勝をかっさらった。
「『運』や『流れ』を逃さないところが、石川の凄いところです」(武藤氏)
ツアー5勝のプロゴルファーで、解説者の羽川豊氏もこう言う。
「大会4日間を通じて、遼には粘り強さとしぶとさがあった。自分のいまのゴルフを分析したうえで、焦らず我慢して上位についていき、チャンスをうかがう。そんな試合運びができていた。だから、ツキを呼び込むことができたのでしょう」
大会後、石川は「東京五輪出場に首の皮一枚つながった」と語っている。
五輪出場枠は二つ。世界ランキング21位の松山英樹は当確だろう。残り一つを同32位の今平と同82位の石川が争うことになる。そのために石川は来年6月まで海外を含めた「出場するすべての大会で優勝を目指す」と公言している。
「日本の暑さに慣れているうえ、五輪開催コースの霞ヶ関カンツリー倶楽部で、石川たちは何度もプレーを経験している。金メダルも十分に狙えると思います。彼らはそれをわかったうえで、日本代表を狙っているんですよ」(武藤氏)
持っている男、石川遼なら五輪で結果を出してくれるに違いない……そんな雰囲気が漂ってきた。

『FRIDAY』2019年12月27日号より
写真:AFLO(1枚目写真)