100人に1人が死亡!痛風薬「フェブリク」の恐ろしすぎる副作用 | FRIDAYデジタル

100人に1人が死亡!痛風薬「フェブリク」の恐ろしすぎる副作用

海外では限定的に投与される薬だが、日本では全く制限なし

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白子、あん肝などの食品に比べ、ビールに含まれるプリン体は少ないが、尿酸値は上昇。痛風の危険が倍増する
白子、あん肝などの食品に比べ、ビールに含まれるプリン体は少ないが、尿酸値は上昇。痛風の危険が倍増する

世界で456万人が服用

患者数約70万人、予備軍は約650万人を数え、痛風はもはや日本人の国民病と言っても過言ではない。尿酸値や、日々の食事に含まれるプリン体の数値を気にする読者諸氏も少なくないだろう。

ひとたび発症し、発作が起これば、「人生最悪」と評される痛みに襲われることから、痛風患者は真面目に薬を服用する傾向にある。痛風・高尿酸血症治療薬『フェブリク』(一般名『フェブキソスタット』)は、帝人グループの『帝人ファーマ』が自社開発した薬で、米国で’09年、日本で’11年に承認された。副作用の少ない新薬として爆発的に売れ、’15年度の推定服用者数は全世界で456万人。国内でもトップシェアを誇っている。

「これまで抗痛風薬といえば、『ザイロリック』などのアロプリノール製剤が広く服用されていました。ただ、アロプリノールは全身に紅斑(こうはん)、びらん、水疱などが多発する難病のスティーヴンス・ジョンソン症候群の原因薬物になっているという調査結果があった。また、腎機能障害のある人が服用すると重篤な副作用が出る頻度が高まるとされ、腎機能に応じた用量調節が必要となるなど、制限のある薬でした。その点、フェブリクは肝臓で代謝されるため、重度でなければ腎機能に障害を持つ患者さんでも服用が可能。しかも一日1回の服用で済むことから、多くの医師が処方しています」(狛江はく整形外科・白勝(はくかつ)院長)

ところが、この「身体に優しい」はずのフェブリクが、いま、「死を招く薬」として医療の世界で話題になっている。

実はフェブリクは開発段階で「心血管系疾患の発現割合が高くなる」ことを危惧されていた。「心血管系疾患」とは心血管出血、心筋梗塞、心不全そして脳卒中といった心臓や心臓血管による疾患を指す。

FDA(米食品医薬品局)は、フェブリクの製造販売後から心血管疾患のある痛風患者を対象としたCARES試験(心血管安全性試験)の実施を指示。その結果、アロプリノールに比べ、フェブリク服用者のほうが心疾患死のリスクが有意に高く、とくに突然の心臓死が多いことがわかった。

’19年2月、FDAはCARES試験の結果を受けてフェブリクの添付文書を改訂。服用による心血管死について注意喚起するとともに、フェブリクの使用を「アロプリノールによる治療で効果不十分だった者」または「アロプリノールの服用による副作用が非常に重い患者」に限定した。ところが――日本政府の出した答えは違った。厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課は’19年6月26日に開催された第4回安全対策調査会で「日本ではフェブリクの適用患者を限定する措置は必要ない」と判断したのである。

「安全対策調査会ではCARES試験、特定使用成績調査、PMDAからの副作用報告の結果から、死亡例とフェブリクとの因果関係はなかったと結論づけました。調査の結果を踏まえ、’19年7月に添付文書の改訂を行ったということ以外、お話しできることはありません」(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課)

製薬メーカーの帝人ファーマの見解も厚労省と同一であった。

死亡率が18倍に上昇

「特定使用成績調査」とは製薬メーカーなどが発売後に行う調査のひとつ。’12年4月から’18年6月までの間のフェブリクの使用例3245例のうち、脳血管死及び心血管死の発現例数は35例。単純計算で100人中1人が脳卒中もしくは心筋梗塞などで死亡したことを指す。

『PMDA』とは独立行政法人『医薬品医療機器総合機構』の略称で、PMDAに報告されたフェブリクの重篤副作用 555件のうち、心血管関連事象の報告は 70件。うち18件が後に死に至っていた。

それでも厚労省はフェブリクの添付文書で〈本剤を投与する場合には心血管疾患の増悪や新たな発現に注意すること〉と注意喚起するにとどめた。

フェブリクの開発に携わった公益財団法人『痛風・尿酸財団』理事長で医師の鎌谷直之氏はさらなるリスクを発見した。

「私の研究班がCARES試験のデータを再評価したところ、フェブリクの服用を中止すると、死亡率が上がることがわかったのです」

鎌谷氏によれば、フェブリクは尿酸産生を抑制するキサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬であり、XOR阻害薬の投与中は心臓の働きに欠かせない細胞内のアデノシン三リン酸(ATP)が増強され、心血管障害による死亡率は低下する。ところが、服用を中止すると、ATPが急速に低下するため、心筋の筋力などに障害が生じ、死亡率が増加すると推定されるという。

「実はフェブリクだけでなく、アロプリノールも服用中止後の死亡率が高くなっているのです」

鎌谷氏の調査では、フェブリク、アロプリノールともに服用を中止すると、1ヵ月以内の死亡率は18倍に上昇。2ヵ月では6~9倍、3ヵ月で3~8倍、4~6ヵ月でも3~5倍に死亡率がハネ上がることがわかったという。

「服用を中止したり、減薬したいと思っても、すぐにはできない。少しずつ段階的に減らしていくしかない。しかも、これらの死亡率の上昇は海外の試験データからわかったこと。国内でも早急に調査すべきだと思います」

飲み続けるも地獄、止めるのも地獄。痛風患者は発作以上に恐ろしいリスクに立ち向かうことになったのである。

約40年ぶりの高尿酸血症・痛風治療薬、しかも副作用が少ないとあって、『フェブリク』は国内外から注目を集めたのだが……
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一度、発症すると常に発作のリスクがつきまとう。患者はロキソニン等の鎮痛剤が手放せなくなる
一度、発症すると常に発作のリスクがつきまとう。患者はロキソニン等の鎮痛剤が手放せなくなる

『FRIDAY』2019年12月27日号より

  • 取材・文吉澤恵理(薬剤師・医療ジャーナリスト)写真朝日新聞社(3枚目)

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