「北に生きるネコ」駆ける、踏ん張る、丸くなる。カメラが捉えた!
寒くないかー、エサは足りてるかー?
凍てつくような北海道の港町。吹雪に踏ん張り、魚にかぶりつき、時にカラスに突かれつつも
生き生きと暮らす野良猫たちのノンフィクション!

「北海道で生まれ育った私も、雪のなか屋外で生きる猫を見るのは初めてでした。ときにマイナス10度にもなる厳しい環境の中で、懸命に生き抜く彼らの姿を撮影しているうちに、自分も頑張らないとと励まされています」
こう話すのは、写真家の土肥美帆氏。自身の大病をきっかけに’06年から感動したものを記録したいとカメラを持つようになった。自宅で猫を飼い始めたのをきっかけに、家でも外でも気がつけば猫を撮影しているという。
「最初に写真の猫たちと出会ったのは’14年の夏でした。野良猫を撮影しようと実家にほど近い漁港に行ってみたんです。そこで日向ぼっこしている猫たちに出会い、ふと冬を越せるのだろうか? と、心配になったんです」
その冬、漁港を再訪すると冬毛でまるまるとした猫たちが雪上を駆け回っていた。以来、北の猫に魅了された彼女は冬が来るたびに猫たちを訪ねている。
「猫を撮影するためにこの漁港で、日が暮れるまでずーっと外にいます。冷えてしまってカチカチになったおにぎりを外で食べて、ポットにはお茶ではなくてお湯をいれて、水が凍って飲めない猫にも分けて。吹雪くこともあるので、晴れている時は太陽の有り難みをしみじみと感じます。猫と一緒に日向ぼっこしていると彼らの気持ちに寄り添っている感覚になります。そうして猫が私を意識しなくなった時、シャッターチャンスが訪れるんです」











●写真集『北に生きる猫』(河出書房新社)より
土肥美帆(どい みほ)
北海道生まれ。滋賀県在住。北海道の漁港にすむ野良猫たちの姿を収めた写真で、’16年、日本写真家協会主催2016JPS展文部科学大臣賞。
’17年、第65回ニッコールフォトコンテスト大賞(モノクロームの部)を受賞。ほか数々の賞を受賞している
『FRIDAY』2019年12月27日号より