「あおり運転」宮崎文夫が利用したマッチングアプリ衝撃の事件簿

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蛇行運転で後続車を止め、「降りてこいや、オラァ!」ドスの聞いた声で高圧的に車に近寄る男。そしてそれをどこか得意気な顔で撮影する女。今年の8月10日に茨城県守谷市の常磐自動車道で起きたあおり運転殴打事件の映像は、目を疑う異様さだった。

自宅近くの駐車場で身柄を捜査員に確保される宮崎容疑者。その際も身勝手な主張を大声で叫んだ 写真:アフロ

全国手配され、のちに傷害の容疑で逮捕された宮崎文夫は、その後の報道で奇行の数々が明るみとなり、“被害”女性も現れた。

この事件で「ガラケー女」として注目され、一緒に逮捕された女性とは恋愛・結婚相手をオンライン上で探す通称“マッチングアプリ”を通じて出会ったというが、同様のアプリで知り合ったこの女性は、宮崎容疑者に監禁されたというのだ。食事名目で呼び出され、食事の後「街を案内して」という宮崎容疑者の車に乗ったが最後……帰りたいと懇願しても恫喝され、開放されたのはなんと4日後のことだったという。

「マッチングアプリ」衝撃の事件簿

もしも、マッチングアプリで宮崎のような男と接点を持ってしまったらどうすればいいのか? 男女間の犯罪に詳しい弁護士と総合病院でカウンセラーも務める心理学者に話を聞いた。

「今やマッチングアプリを使っている人も増えていますし、監禁はれっきとした犯罪。警察もきちんと対応してくれるので安心してください」

そう話すのは、男女間のトラブルに強いS&M法律事務所の弁護士・小林芽未氏。マッチングアプリで出会った男女の監禁事件を目の当たりにしたこともあるという。

「初めて会った日に男性の家に行き、そのまま女性は全裸に首輪をつけられ監禁されたそうです。密室で起きた事件ではありましたが、女性の胸に刃物によるケガがあったことと、“恐怖で逃げられなかった”という女性の証言で監禁致傷罪に問われ、刑事裁判になりました。

ただ、2人ともSM嗜好であることがわかる会話をメールでしており、首輪も刃物もプレイの一環で、暴行・傷害に承諾したのではという見解も。また、女性は常に拘束されていたわけではなく、2人で外に食事に行くこともあったんです。外出した時に、逃げたり他者に助けを求めたりすることも出来たから監禁とはいえないのでは、というところが追及ポイントになりました」(S&M法律事務所・小林芽未弁護士 以下同)

この一例からもクローズドな空間かつ男女間で起きたことを、法に照らし合わせるのがいかに難しいかがわかるだろう。では宮崎容疑者に監禁された女性のケースはどうか。

「実際に脅されてはいないので、事件として成立するかどうか微妙なところです。でも物理的に身体を拘束されていなくても、恫喝などによる精神的拘束も監禁罪が成立します。そこで大切なのは、客観的証拠が残っていること。恫喝する音声などは証拠になりますよ」

素敵な異性に出会うはずのマッチングアプリで犯罪者に遭ってしまっては元も子もないが、せめて自衛手段は知っておきたい。

「とにかく客観的な証拠が重要。相手からもらった名刺、メールやLINEでのやりとりなど、証拠になり得るものは可能な限りすべて残しておいてください。あとは相手の携帯番号を聞いておくこと。弁護士は携帯番号から契約者の住所や氏名を照会することが可能なので、必ず役に立ちます」

43歳の宮崎容疑者が容易に相手を見つけることができたのは、マッチングアプリがあったからこそ。小林氏曰く「アプリに絡んだ男女間の事件は増えている」そうだが、それを裏付けるようなエピソードを紹介しよう。

「マッチングアプリで出会った弁護士の彼と付き合い始めて2年、ついに婚約しました。でも具体的に結婚後の生活を話す過程で、彼は私に何ひとつ譲る気がないことが判明。婚約といっても指輪ももらっていないし、親にも挨拶していないし、話し合いもできない状態だったので、『こんな状態では結婚できない、別れよう』と言うと、そこで初めて弁解メールが大量に届きました。

返信しないでいたら、今度は試すかのように“あ”だけのメールが毎日何十件も。それも無視していたら電車の計画運休が発表されるほどの大型台風の日、私が確実に家にいると見込んで彼が尋ねてきたんです。その計画性と執着心に背筋が凍りました。その後もメールが止まないので弁護士に相談しようと思っているんですが、彼も弁護士なのでどういう反応が返ってくるのか……事実をねじ曲げてでも法的に反撃されそうで怖いです」(20代女性)

「アプリで出会った会社経営者と付き合っていました。最初からアニキ気質でお節介だなと思っていましたが、些細なことから電話で口喧嘩に。『今から行くから待ってろ!』と電話が切れてしばらくすると……私が住むマンションの前で車のクラクションを鳴らしながら私の名前を叫んだり、怒鳴り散らしたりする声が聞こえてきました。

あまりの恐怖に警察を呼んで保護してもらいましたが、代わりに電話に出てくれた警察の人にも悪びれもせず怒鳴っていて。反社会勢力との繋がりがあると言っていたこともあり、しばらく実家に身を寄せていました。今でも街で似た人を見かけると、動悸が止まりません」(30代女性)

いずれも弁護士に会社経営者、女性に困るとは到底思えないハイスペックな男性である。例に漏れず、宮崎容疑者も関西の有名私大を卒業し、上場企業に務めていたエリート。実家も裕福で、何ひとつ不自由しなかったであろう彼は、なぜここまで堕ちてしまったのか。

「学力が高く仕事ができることと、心理学で“非認知能力”という共感性の高さや感情をセルフコントロールする力は基本的には相関するんですね。でも中にはそうではない人もいて、ハイスペックな集団の中で落ちこぼれてしまう。そうすると自分で自分を認めるしかないので、自己顕示欲が不適応な形で強くなっていく傾向にあるんです」

そう語るのは、総合病院などで臨床心理士として心理カウンセラーを務め、大学でも教鞭を執る藤井靖氏。宮崎容疑者やエピソードに登場したエリート男性たちにこそ、マッチングアプリが都合良く働くと話す。

落ちこぼれエリートの“狩場”になりやすいマッチングアプリ

「一部の情報だけで“この人はこういう人なんだ”という思い込みのもとに出会うツールであるマッチングアプリは、人の出会い方としてかなり特異なんです。それにプロフィールや投稿は格好の自己表現・自己顕示の場所だし、危険な部分が見えにくい。そして社会的にハイスペックであることが、ストロングポイントになる。

しかもアプリ上にいる女性は出会いを求めている……それらが組み合わさることによって、落ちこぼれであった彼らも成功体験を重ねられるので、狩場として最適だったのでしょう」(臨床心理士、心理カウンセラー・藤井靖氏 以下同)

このまま放置すれば、被害女性は増える一方だ。そこでアプリやSNS上で危険な男性を見極める方法を教えてもらった。

1 投稿数が異常に多い

2 自撮りや高級品を大量に並べた写真を投稿する

3 名言や格言、著名人の言葉を引用する

「1は自己顕示欲から、2は収入の高さが重要であるという価値観を持っているから、そして3は“虎の威を借る狐”のように自分にはない人の権威を利用したいから。2は『大量』というところがポイントで、そういう写真を見つけたら要注意です」

投稿している写真で見分けられれば良いが、実際にマッチングした後に気づくケースも多いだろう。その場合の対処法を、メールのやりとり、出会い、交際と順を追って聞いた。

【メールのやりとりで気づいたら……】

・「こんにちは」などの挨拶を必ず入れる

・常に敬語を使う

・長々とやりとりしない

「こういうタイプはどんどんコミュニケーションの枠を崩して、主導権を握りたがります。ちょっとしたことでキレることもあるので、一定の距離感を保ちつつ、フェードアウトするのが良いでしょう」

【実際に会ってから気づいたら……】

・違和感を感じる相手の価値観を受け入れない

・冷静に対処する

・価値観が異なることを態度で示す

「宮崎容疑者がタクシー運転手を監禁して逮捕されたことも報道されましたが、もし同乗していた場合、相手に同調する言動はNGです。一般的に人は一緒にいる人と仲良くなりたい“親和欲求”が無意識にあるものですが、毅然とした態度を貫いてください。言葉で相手を批判すると攻撃対象になる可能性もあるので、あくまで態度で!」

【交際してから気づいたら……】

・いきなり相手との連絡手段を断たない

・味方が多いことを示す

・いざとなったら権威がある人の力を借りる

「女性は嫌いになるとブツンと切りたくなってしまう人が多いですが、個人情報を知られている場合は怖いのでやめましょう。助けてくれる他の人の存在を匂わせて、相手に『自分ではコントロールできない』と感じさせると、スッと引いてくれると思います。それでもダメなら弁護士など権威のある人を出すと、自分より優秀だったり、よりハイスペックな人には弱いので諦めるはずです」

一方で、こういう男性に惹かれてしまう女性側にも問題があるという。

「受け身で自分に自信がなく、過去に恋愛で失敗してきた人が、こういう男性に惹かれる傾向にあります。『この人はすごく頼りがいがあって、お金もあって、自分を幸せにしてくれる王子様なんだ』と思い込みたい気持ちが、目を曇らせてしまうんです。

一概には言えませんし、当事者を責めることは言いたくありませんが、相手に違和感を感じたときにきちんと時間をかけ、相手を見極める関係づくりを面倒に思わなければ、エピソードに登場した女性たちも怖い思いをしなくて済んだかも知れません。

ぜひまだ関係が浅いうちに、ニュースや日常のできごとを『あなたはどう思う?』と投げかけてみてください。サイコパス気質のある人からは、必ず『ん?』と思う回答が返ってきます。普通であればそこで気がつくはず。

また、いい関係を早く築きたいという思いが強すぎると、相手の言動を『これは2人(私)のためにやってくれているんだ』と読み違えがちです。でも『自分の利益や満足感が常に最優先』という、サイコパス気質の人の行動原理を知って、違和感を持った自分ときちんと向き合ってください。普段から『この人の言うことなら大抵受け入れられる』と思えるような、仲の良い友人の意見を聞いてみるのも良いでしょう」

実際にマッチングアプリをやったことがある人からすれば、前述のような投稿写真を見かけたことは一度や二度ではないだろう。それだけ「サイコパス以上、犯罪者未満」の男性が世に蔓延っているということ。もちろん女性のサイコパスもいる。新しい男女の出会いの場であり、魑魅魍魎が蠢くマッチングアプリ。使うならまずは自分が強く、賢くなることが先決なのかも知れない。

  • 取材・文周防美佳写真日刊スポーツ/アフロ

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