15年で4人死亡の魔のエリア 「殺人踏切」はなぜ放置されるのか

死亡事故だけでなく、転倒による負傷事故も多発。立体交差化などの対策が取れない理由

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多発する事故を受け、東府中2号踏切周辺には京王電鉄と府中警察署が設置した注意喚起の看板が立ち並ぶ

「この踏切を渡るときはいつも緊張します。道が斜めに交差していて、非常に危険だからです。以前、自転車に乗りながら踏切を渡っていると、タイヤが線路の溝にはまって転んでしまいました。立ち上がる前に警報音が鳴って遮断機が下がり始めたので、電車が来たらどうしようとパニックになりました」(近隣の40代女性)

11月20日21時10分頃、京王線・東府中駅近くの「東府中2号踏切」で府中市内に住むAさん(83)が列車と衝突して死亡した。自転車を押して踏切を渡ろうとしたが転倒し、東府中駅を発車したばかりの快速列車にはねられた。現場には線路上の障害物をレーザーで感知する装置「3D式障害物検知装置」が設置されていたが、Aさんは踏切の敷地外に倒れたため作動しなかったという。

この踏切は2004年以降、4人も死亡している「殺人踏切」だ。線路と道路が約30度の角度で交差していて、踏切内の長さは約24mにも及ぶ。本誌記者が計測したところ、高齢の通行人だと踏切を渡り終えるまでに30秒ほどかかっており、反対側にたどり着く前に遮断機が下がり始めるケースも多発していた。

事故当日、Aさんが来店したという昼間も営業するカラオケスナックの店主がこう話す。

「Aさんはウチの店の常連で、踏切近くのアパートで生活保護を受けながら一人暮らしをしていました。あの日も飲み友達と一緒にやってきて、18時くらいまで飲んでいたんです。『今日は仲間の誕生会なんだ』と機嫌が良くて、『今日は本当に楽しいな』ってニコニコ笑っていましたよ。帰り際に、おにぎりを握ってみかん2個と一緒に持たせたんです。

でもその後、真っ直ぐに帰らなかったみたいで、そこからまた別の店にハシゴして、亡くなる直前の21時頃まで酔っぱらっていたと後から聞きました。線路には私が握ったおにぎりとみかんが落ちていたそうです……」

東府中2号踏切では死亡事故だけでなく、転倒などによる負傷事故もたびたび起こっている。住民からは踏切の立体交差化が求められているが、25年ほど前に地元商店街の一部から『日陰になる』と反対されて頓挫して以来、計画の目途はまったく立っていないという。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は話す。

「立体交差を作るためには、まずは地元の賛成がないとできませんし、そのための土地の確保や巨額の資金も必要となります。それができない場合は踏切を廃止するという解決方法もありますが、交通渋滞を引き起こしたり、歩行ルートが不便になったりする。また、道路法では原則として新たな踏切を作ることが認められていないので、別の場所に踏切を移すこともできません。危険でも現状のまま放置する選択にどうしてもなってしまうのです」

時代の変化から取り残された「殺人踏切」。さまざまな事情が絡みあっているとはいえ、このまま放置すれば再び犠牲者が出るだろう。

『FRIDAY』2019年12月27日号より

  • 撮影足立百合

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