芦屋のセレブは浮気公認!? 女性漫画家が描く”上流階級”の真実

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カフェバイト禁止、自転車NG、知られざる名家の人々の暮らしとは――?

1988年のデビュー以来、恋や仕事に悩みながらも前向きに進んでいく女性の物語を描いてきた漫画家・こやまゆかり氏。

2011年にドラマ化された『バラ色の聖戦』では、モデルの世界に足を踏み入れる主婦の挑戦を描き、漫画配信サイト「BookLiveコミック」の2019年上半期女性部門1位を獲得するなど、連載終了から2年経つ今でも支持を得ている。

昭和・平成・令和と時代が移り変わるなか、変わらず女性読者の心を掴み続けてきたこやま氏が、最新作のテーマに選んだのは”やんごとなき”上流階級の世界

関西屈指の高級住宅街・兵庫県芦屋市に住む人々の仰天エピソードや、知られざるその暮らしや価値観。物語として描くにあたり、出会った人々や、抱いた想いなどを本人が語る。

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『やんごとなき一族』1巻書影

――最新作の『やんごとなき一族』は芦屋の名家が舞台ですが、上流階級の人々を描こうと思ったきっかけは?

前作『バラ色の聖戦』の連載が終了した後、ひょんなことからそういう、いわゆる上流階級の方と出会う機会がありました。その方のお誘いで、作中でも描いた花見会のような場に参加させていただいたのですが……「きらびやかですごかった」と担当さんに話したら「次回作はセレブの話にしませんか?」と。

それで、ツテのツテを頼りに、芦屋の名家の方々を取材させていただきました。名乗らなかったら(名家の人間だとは)気付かれないんじゃ、と思ってしまうくらい非常に気さくな方々で。でも、何百年も歴史がある名家を守ってきた一族なんです。

取材してみて解ったのですが、名家と呼ばれる方の日常というのは、一般的に想像する「セレブっぽさ」みたいなものからは意外とかけ離れていて。パーティや買い物に日夜明け暮れているわけではなく、文化財の保護に努めたり、社会貢献や慈善事業に力を入れたりと、派手な生活はされてないんです。ただ、家の中には重要文化財クラスの美術品が当たり前に存在しているし、高級外車とレクサスが駐車場にズラリと並んでいるんですけど。

そんな実状を知らず、上流階級の生活に憧れる人もいると思うんですが、「じゃあ実際に自分がこの一員になったらどうなのか? 何が起こるのか?」というのを描いてみたくて。そこで、庶民の家庭で育った佐都(さと)が、結婚して芦屋の名家・深山(みやま)家に加わるという物語にしました。

400年以上続く芦屋の名家・深山家。次男の健太は、大衆食堂「まんぷく屋」を営む佐都に惹かれ、家族の反対を押し切り結婚する。母と亡き父との想い出が詰まった桜の着物をまとい、勇気を出して「花見会」に参加する佐都だったが、その着物が波乱を呼ぶことに……

――作中で描かれる上流階級の世界は、どのくらい実話に基づいているのですか?

芦屋の上流階級の方の暮らしや、しきたりなどは実話ですね。家の敷地内に観音堂があったり、お嫁さんが毎朝欠かさずお仏壇を掃除したり、「この家の人間が自転車なんかに乗っていたらビックリされる」って止められたり……本当にああいう世界です。でも、キャラクターたちの人格は「漫画的なファンタジー」の部分、創造の産物ですよ(笑)。

前述の名家の方々以外にも、茶道や華道の家元さんや上流階級向けの料理教室など、「いつ漫画を描くんだ?」と自分で途方に暮れるほどあちこち取材しています。そのなかで得たエピソードを、そのまま活かしている部分も多いです。

例えば……全ての家庭がそうではないと思うんですが、「夫の浮気を許してこその正妻」という価値観がこの時代にもかかわらず存在していて。花嫁修業をしている名家のお嬢さんたちに「そういうのってどう思う?」と聞いてみたら、「う~ん、浮気とか愛人とかもちろん嫌だけど、仕方ないかな。結婚は家同士がするものだから、簡単に離婚とかできないし。バーキン10個くらい買わせて許してあげるかな」って。

――作中での聖花さん(※深山家長女)の反応そのままですね

そうですね。浮気について深山家の女性たちが語る場面や、末っ子の有沙ちゃんがカフェのバイトを「深山の人間が給仕なんてとんでもない」って反対される話なんかはまさに、取材で聞いたことを反映させています。「いつの時代よ」って反発しながらも、「そういう家だから仕方ない」って割り切るところなんかも。

しきたりや伝統というものに素直に感動したり、「面白いな」と感じる自分がいる一方で、「個人の幸せとはなんだろう」と複雑に思う自分もいて。「家」を守ることの大切さは理解できるんですが、これだけ時代が変化してきているなか、変えるべきところは変えていかないといけないのでは、とも思うんです。

だから作中では、「古かろうと新しかろうと、良いものは良いし、悪いものは悪い」と佐都と健太夫婦がしっかり見極め、深山家の変革のために努力していく姿を描き切りたいと考えています。ただ、この二人だけが幸せになって終わり、というふうにはしたくないです。登場人物全員が、本人の納得のいく形で幸せを掴めるようにと、そこを目指しています。

「跡継ぎは長男でなく、次男の健太に」という養父の思惑に翻弄される長男・明人の妻、美保子。家同士の取り決めで政略結婚し、浮気だらけの夫への不満を募らせている三男・大介の妻リツコ。「幸せな家族」とはほど遠い深山家の人々を、佐都と健太はどう変えていくのか――?

――旦那の浮気や離婚、女性同士の確執といった昼ドラのような展開がありつつも、こやまさんの漫画がスカッとしていて、読むと元気が出てくるのはそういった部分にあるのかもしれませんね

自分でも、ちょっと過酷な目にあわせすぎだろうとは思いますけどね(笑)! 基本的には、様々な困難にぶつかりながら生きる女性たちを、応援する物語を描きたいといつも思っています。私自身も女性で、漫画家であると同時に母親でもありますし、デビュー当時はOLでしたから。

――会社に勤めながら連載をしていたんですか?

そうです。昼は会社で仕事をして、夜に原稿を描いて、という生活を2,3年続けていました。結婚を機に退職してからは、漫画家と主婦の二足のわらじです。子供が産まれてからは、子育てをしながら描いてきました。今改めて思うと、常に「〇〇しながら漫画を描く」という同時進行でやってきた気がします。

――そんなこやまさん自身の経験が、作品の中に落とし込まれているのでしょうか

そうですね。特にOLだった頃の経験は、自分にとっては大きな財産です。あの頃思っていたことや、感じたこと、体験したことというのはその後の人生の中で役立っているし、今でも自分の描くものに影響を与えていると思います。

主婦の方だろうと、独身でバリバリ働いている方だろうと、どんな人にだって日常の中でいろんな悩みがあると思うんです。仕事で嫌なことがあったり、子育てで思わず「キーーーッ!」ってなってしまう瞬間があったり。そんな毎日のなかで、読んだらパワーがもらえて、「私も頑張ってみようかな」と思えるような漫画をこれからも描いていきたいです。

 

『やんごとなき一族』では、一見脇役に見えるキャラにもスポットが当たり、世代も立場も異なる女性たちの複雑な内面が描かれる。これまで30年近く、一貫して女性目線の物語を描き続けてきたこやま氏だからこそ紡げる物語だろう。

 

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  • 取材・文大門磨央

    石川県出身。雑誌やWEBを中心に漫画、アニメ、映画などのコラムを執筆中

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