OL旋風を巻き起こした田中圭『おっさんずラブ』は令和の寅さん

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『おっさんずラブ』の第2シリーズもついに終幕を迎える。今年は田中にとって、飛躍の年となったのではないだろうか

昨年4月期に放送され‘18年新語・流行語大賞のトップ10入りを果たし、社会現象を巻き起こした深夜ドラマ『おっさんずラブ』。その第2弾「おっさんずラブ−in the sky−」(共にテレビ朝日系)が10月期に帰って来た。

「このドラマがきっかけとなって、深夜帯に『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)といったLGBTの世界を描いた連ドラが登場。またゴールデン帯のドラマ『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)では、BL的な要素を盛り込むなど、『おっさんずラブ』は昨今のドラマ界のトレンドを作ったといっても過言ではありません」(ワイドショー関係者)

しかしこのドラマ、決して最初から脚光を浴びたわけではない。

‘16年12月末、若手トライアル枠として設けられた「年の瀬 恋愛ドラマ」に単発物として産声を上げ、放送終了後、視聴者から「続きが観たい!!」といった熱いメッセージが殺到。その声に後押しされ、若手の登竜門と言われる「土曜ナイトドラマ」の枠で‘18年に連ドラがスタートしている。

「しかし連ドラの初回視聴率は2.9%と、超低空飛行。だが回を追うごとにSNSなどで反響を呼び、最終回は5.7%を記録。ですが全話の平均視聴率4%は、決して合格点とは言えません。しかしTwitterでトレンド世界1位にも輝くなど、視聴率では計り知れない熱烈なファンの支持を集め、”OL旋風”を巻き起こしました」(制作会社プロデューサー)

評価基準の多様性が生み出した、まさに奇跡の連鎖。このドラマを企画したのが、当時20代半ば、プロデューサー・デビユーしたばかりの貴島彩理氏である。

「貴島プロデューサーは、テレビ朝日入社後バラエティ畑にいましたが、機会あるごとに『ドラマを作りたい!』と猛烈にアピール。アシスタント時代を知る『ドクターX』の内山聖子エグゼクティブプロデューサーは『自分のアイディアや意見を遠慮なく言って来て、熱意がビンビン伝わって来た』『まるで若い頃の自分を見ているよう』と彼女について話しています」(前出・制作会社プロデューサー)

社会現象を巻き起こした『おっさんずラブ』の勢いは止まらず、今夏に公開された映画『劇場版 おっさんずラブ〜LOVE or DEAD〜』も興行収入25億円を超える大ヒット、ロングラン上映を記録。大ヒットに気を良くしたテレビ朝日は、渡りに船とばかりにシリーズ化に踏み切る。ところが、ここで大きな壁が立ちはだかる。

「第1シリーズと映画編で『春田創一(田中圭)×黒澤武蔵(吉田鋼太郎)×牧凌太(林遣都)』の三角関係には決着がついている。そんな中、続編はどういったカタチにするのか。ここが思案のしどころ。結果、主人公とヒロインの名前はそのままに、舞台を航空会社に移して続編制作に踏み切ることにしました」(番組関係者)

しかし前作で人気の高かった林遣都が出演しないことに、ショックを受けた”OL民”も続出。

「さらに座長として、このドラマを引っ張る田中圭も『(前作の)キャストが揃わないと意味がない』と難色を示していましたが、共演する吉田鋼太郎に『お前が”おっさんずラブ”を背負え』と言われ、座長として腹を括ったようです」(前出・ワイドショー関係者)

しかし、問題はそれだけではない。映画がロングラン上映されたことで、第2シリーズとの間隔が短くなり、新しい恋愛模様に違和感を覚えるファンもいた。さらに、前作では男女を超えた”普遍的な恋愛の切なさ”を正面から丁寧に描いてきたが、今作はコメディ色が強く、始まった当初は前作に比べて見劣りするといった声も聞かれた。

「しかし、新たにキャストに加わった副操縦士・成瀬(千葉雄大)、整備士・四宮(戸次重幸)との”四角関係”も、課題は残るものの概ね好評。回を追うごとにコンフィデンス誌のドラマ満足度調査『ドラマバリュー』でも高い評価を獲得している。最終回を前に、前シリーズの全話平均視聴率4.0%を超えるのは間違いなさそうです」(放送作家)

最終回を前に14日に放送された第7話には注目すべきシーンが登場する。

「春田(田中)を屋上に呼び出した黒澤(吉田)は、春田のことをまだ諦めていないと告白。『ファイナルアプローチOK?』『ノーと言われても許可願います』と詰め寄る黒澤に『ダメですって』と涙ながらに答える春田に、視聴者の涙腺も崩壊。単発から第1シリーズ、映画と“主人公&ヒロイン”としてコンビを組んできた2人にしかできない愛おしいシーンを観て、もしかしたら今作で吉田が『おっさんずラブ』を卒業してしまうのではないかと、思わず疑ってしまいました」(前出・放送作家)

このシーンを観て、映画の舞台挨拶時に吉田が「ひょっとしたら田中圭が”寅さん”の代わりになるのではないか」と口にしていたことを思い出した。”令和の時代”に、男女を超えた普遍的な恋愛の切なさを描く「おっさんずラブ」。いつも振られる寅さんとは反対に、いろんな人から惚れられる「令和の寅さん」を、いつまでも観てみたいと思っているのは私だけではあるまい。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新社)を上梓

  • 齋藤雅昭

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