<h3>北欧フィンランド発のコメディ映画は、単なる「おバカ映画」じゃなかった！</h3>
<p>サンタクロースとムーミンの国・<span class="strongInContent">フィンランド</span>。</p>
<p>オーロラにマリメッコ、挨拶は「モイモイ」……とほっこり可愛いこの国から、「フィンランドのコメディ映画史上最大規模の巨費を投入した大作」なる映画が届けられた。それが、「あらすじがぶっ飛んでる」と公開前から話題沸騰のヘヴィメタル映画<span class="strongInContent">『ヘヴィ・トリップ／俺たち崖っぷち北欧メタル！』</span>だ。</p>
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<figure id="attachment_87514" aria-describedby="caption-attachment-87514" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4eae074d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/ea41e5a045e9d84df55a2206ded4995d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87514" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
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<p>実はフィンランドは、人口比率で最も多くのメタルバンドが存在する”<span class="strongInContent">メタル超大国</span>”。『ヘヴィ・トリップ』公式ホームページによると、総人口約550万人に対し、約3000組のメタルバンドが活動しているという計算になるらしい。</p>
<p>映画好きをざわつかせたそのあらすじを抜粋すると……「<span class="strongInContent">&#8220;終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル“</span>というジャンルを標榜する、４人組ヘヴィ・メタルバンド」「バンド名は<span class="strongInContent">インペイルド・レクタム</span>（Impaled Rektum)※直訳すると『直腸陥没』」「精神科病院からドラマーを誘拐したのちノルウェーへと逃亡」――</p>
<p>これだけ見るととんでもない「おバカ映画」に思えるかもしれないが、本作は2018年に各国の映画祭で話題となり、アメリカの大手映画批評サイト・ロッテントマトでは満足度93％を維持し続けている驚異の高評価。ヘヴィメタルに明るくない人でも楽しめる、笑いと感動のメタル映画なのだ。</p>
<p>舞台はフィンランド北部、自然は美しいけどそれ以外特に何もない田舎の村。<br>
バンドのフロントマンなのに極度の上がり症ですぐゲロを吐く<span class="strongInContent">トゥロ</span>(Vo.)<br>
家業のトナカイ解体を手伝う早弾きの名人・<span class="strongInContent">ロットヴォネン</span>(Gt.)<br>
これまで２度も死を宣告されたのに何度も蘇ってきた不屈の男・<span class="strongInContent">ユンキ</span>(Dr.)<br>
バンドの頭脳的存在で一度聴いた曲は忘れない<span class="strongInContent">パシ</span>(B)<br>
４人はバンド結成から12年経つのに、オリジナル曲が作れず未だに人前でライブしたことのない<span class="strongInContent">”ライブ童貞”</span>だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「コピー曲じゃライブはできない、自分たちの曲を作るぞ！」</span>と意気込んで楽曲制作に励むものの、出てくるメロディはどれも有名バンドの曲に似たものばかり。ところが、ギターのロットヴォネンがやらかしたある出来事がきっかけで斬新なリフが生まれ、そこにボーカル・トゥロの社会派な歌詞（何を叫んでいるかはさっぱり解らないけど……）が見事に乗り、バンド史上初にして最強の名曲が誕生！ しかもひょんなことからノルウェーの巨大メタルフェスの主催者と出会い、バンド結成12年目にしてビッグチャンスが訪れるのだが――？</p>
<figure id="attachment_87523" aria-describedby="caption-attachment-87523" style="width: 1999px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="396c2b2c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/084d890743250906d88df7006c1da3a8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87523" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
<p>メタルバンドを取り上げた映画といえば、思い浮かぶのは<span class="strongInContent">『アンヴィル！ 夢を諦めきれない男たち』</span>(2009年)。「メタリカ（METALLICA）」「スレイヤー（SLAYER）」など多くのメタルバンドに影響を与えたにも関わらず、ブレイクすることなく忘れ去られてしまったカナダのバンド「アンヴィル」を追った、ドキュメンタリー映画の名作だ。夢を諦めないことの素晴らしさに心打たれる作品だが、「売れないまま消えるバンドだっている」という音楽業界の厳しさを映し出してもいた。</p>
<p>「<span class="strongInContent">チルドレン・オブ・ボドム（Children of Bodom）</span>」「<span class="strongInContent">ソナタ・アークティカ（Sonata Arctica）</span>」「<span class="strongInContent">ナイトウィッシュ（Nightwish）</span>」など世界的に有名なメタルバンドを数多く排出してきたフィンランドだが、世に出ることもなく、地元でくすぶったまま一生を終えるバンドマンだって星の数ほどいることだろう。</p>
<p>作中でのトゥロたち「インペイルド・レクタム」メンバーも、村人から見ればそんな有象無象でしかない。自分に自信がなくシャイなトゥロは、地元のヤンキーにサラサラロン毛をからかわれ、メタルバンド＝ヤク中という偏見を持つ警察官にいちゃもんをつけられ、いけすかない地元のロックスター・<span class="strongInContent">ヨウニ</span>にバカにされても、ろくに言い返すこともできない<span class="strongInContent">”負け犬”</span>だ。”終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”というヤバそうなジャンルを主張しているのに、メンバーは皆、暴力とは無縁の穏やかで生真面目な奴らというのもじわじわ笑えるポイントである。</p>
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<p>渾身の一曲を生み出し、ノルウェーの巨大フェスへ出演する足掛かりもでき、ついに始動したかのように見えた「インペイルド・レクタム」。しかしその先には、バンドの解散、更にはメンバーの死という哀しい出来事が待っていた。だが、本作がその真価を見せるのはここから。</p>
<p>ジャスティン・ビーバーをいじったり、観客にゲロをぶっかけたりといった笑いを交えつつも、これまで意外と丁寧に、そして誠実に「パッとしない田舎のメタルバンド」の姿を描いてきた物語は、ノルウェーを目指す<span class="strongInContent">新生「インペイルド・レクタム」</span>VS<span class="strongInContent">フィンランド警察</span>＆ノルウェーの国境を守る<span class="strongInContent">”デルタ部隊”</span>という、まさかの展開へと突入する。</p>
<p>逃亡劇あり、決死のダイブあり、なぜかバイキングとの遭遇あり、ロマンスあり……北欧の大自然を背景に、<span class="strongInContent">「フェスに出る！」</span>という強い意志でもってノルウェーへと突き進むメンバーたち。失敗を恐れ、いつもあと一歩を踏み出せなかったトゥロが、渾身の想いでひねりだすデスボイスは、思わず”メタル・ポーズ”をキメたくなるほど痛快だ。これは、周囲から尊重も理解も得られず、田舎でくすぶっていた崖っぷち青年たちが、恥も後悔もなく堂々と夢を掲げてみせる物語だったのだ。</p>
<figure id="attachment_87524" aria-describedby="caption-attachment-87524" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7c809d9a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/2f6ddff743deb8287f088b76bdb23c42.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87524" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
<p>世界中の映画祭で観客を沸かせたのも納得の本作。音楽を担当しているのは、フィンランドを代表するヘヴィ・メタルバンド<span class="strongInContent">「ストラトヴァリウス （Stratovarius）」</span>の<span class="strongInContent">ラウリ・ポラー</span>。劇中でのメタルチューンは流石に本格的だ。しかし冒頭でも述べた通り、ヘヴィメタルや北欧メタルバンド事情に詳しくなくてもまったく問題なく楽しめる。</p>
<p>ラスト、投げかけられる一言に思わずニヤリとし、「アイツら、やりやがった！」となんだか誇らしく爽快な気持ちで劇場を後にするはずだ。</p>
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<p>&nbsp;</p>
<p><a href="http://heavy-trip-movie.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">『ヘヴィ・トリップ／俺たち崖っぷち北欧メタル！』公式サイト</a></p>
<p>12月27日(金)よりシネマート新宿&amp;心斎橋ほかにてロードショー</p>
<h3>映画『ヘヴィ・トリップ／俺たち崖っぷち北欧メタル！』　フォトギャラリー</h3>
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<figure id="attachment_87525" aria-describedby="caption-attachment-87525" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="189b9208"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/045cc691dd445407a88c8a2fbea23a0e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87525" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_87521" aria-describedby="caption-attachment-87521" style="width: 2001px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6c8ad147"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/9d165d03b740166e77dd2b5e39415f99.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87521" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_87526" aria-describedby="caption-attachment-87526" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="195cb018"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/3f71b6ecea38ebbc25bf257817a284c9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87526" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_87528" aria-describedby="caption-attachment-87528" style="width: 4051px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f26a9a2b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2019/12/e8dc880197189bfe43feab17b04cc051.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-87528" class="wp-caption-text">映画『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』フライヤー　© Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018</figcaption></figure>
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石川県出身。雑誌やWEBを中心に漫画、アニメ、映画などのコラムを執筆中

大門磨央

12月27日(金)から劇場公開する『へヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル！』。ヘヴィメタル超大国・フィンランド発のコメディ映画だ。一見おバカ映画のように思えるが、笑って泣ける痛快な感動作だった！

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